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Elder Last Emblem

捨てられ花嫁、隣の席で運命が動き出す

捨てられ花嫁、隣の席で運命が動き出す

高橋 結衣
婚礼の席、新郎は星川理緒を置き去りにし、本命を追って去ってしまった。 その隣の会場では、花嫁が新郎が車椅子に乗っていることを理由に結婚を拒み、姿を見せなかった。 車椅子に座るその新郎を見て、星川理緒は苦笑する。 ──同じ境遇なら、いっそ一緒になってもいいのでは? 周囲からの嘲笑を背に、星川理緒は彼のもとへと歩み寄る。 「あなたは花嫁がいない。私は花婿がいない。だったら、私たちが結婚するっていうのはどうかしら?」 星川理緒は、彼が哀れな人だと思い込み、「この人を絶対に幸せにしてみせる」と心に誓った。 …… 結婚前の一之瀬悠介「彼女が俺と結婚するのは、金が目当てに決まってる。用が済んだら離婚するつもりだ。」 結婚後の一之瀬悠介「妻が毎日離婚したがってる……俺はしたくない。どうすればいいんだ?」
都市 CEO多重身分電撃結婚契約結婚甘美
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遮るものがない一面のガラス窓。

透き通った空、日差しが窓に降り注ぎ、はっきりと浮かぶ青々と美しい…富士山。

ここは、富士山世界遺産センター。窓ガラス越しにシャッターを切る。

すると、光の加減でうっすらとスマホを持つ僕が映り込んだ。

 僕の名前は去来川唯生(さきかわゆいき)。

今日は、会社の社員旅行。コロナ渦もあり近場で日帰り。

雄大な富士山を臨む河口湖で景色を楽しみ、鳴沢氷穴では、ひんやりとした洞窟内に無数にできた氷柱が並ぶ神秘的な自然の世界を堪能した。感染者数は落ち着いてきたが、コロナが完全に消えていないこの時世もあり、皆、マスクをし、例年より静かであった。それでもそれなりに社員旅行を満喫していた。昼飯は山梨名物ほうとうを食べた。

そして、最後に立ち寄ったのが、富士山世界遺産センターだった。

 旅行から帰ると、写真をいくつかピックした。河口湖と富士の圧巻の景色や魅惑的に輝く氷穴の氷柱、それにお昼のほうとう。ふと世界遺産センターで写した写真に手が止まった。若干、僕がガラス窓に映っている。

僕は、以前から趣味でSNSに写真をアップしていた。写真映えするスポットを積極的に探して写真を撮ってるわけではないが、なにとなく日常で気に入ったものを写真に写し投稿していた。僕のモットーは人が映り込んでプライバシーや肖像権の侵害にならないこと。必ず人が写らないように気を付けてシャッターを切っていた。

(これはやめようか。)自分の顔だし、顔自体もスマホで隠れていたけど、なんとも人間臭さが残る。そう思い僕が今までアップしてきた写真を改めて見直した。富士山や四季折々の花々、夕焼けや朝焼け、雨露のしたたる景色や歴史文化財の写真、美味しかった食べ物たちが並ぶ。今度は逆に、人が全く写っていない写真の数々がなんだかやけに不自然に感じた。SNSの名前も、“四季折々(しきせつせつ)”という個人名が想像つかない名前で、このSNSの主はどのような容相の何者なのか分からない。まるで小型のドローンカメラが自動的に写真を拾ってきたようで人の息を感じる要素が少し足りなく感じた。

(たまには、顔が隠れた姿がほんの少し写っててもいいのかな。)だけども、やっぱりなんだか不釣り合いだった。なるべく心が動いたとっておきの景色を収めてきたのに、こんな不格好で何の絵にもならないような男が、またこんな安価なスマホを掲げてるところなんて見たら、今までの写真を汚してしまう。それは一目瞭然なのに、もう少しだけこのSNSの写真に息を吹き込みたい気がし、揺らいでいた。

 僕はスマホに内蔵されている過去の写真をくるくるとスクロールして眺めていた。SNSに投稿していない写真がたくさん撮りためられていた。ふと、一枚の写真で指が止まる。

車の窓越しから撮影したひまわり畑の写真…。

(一昨年の夏、か…。)

脳裏に満面の笑みで微笑む“彼女”の顔が浮かぶ。否、付き合ってはいない。彼女は、一昨年の新年に催された同窓会で、久々に会った元クラスメートの八弥子(ややこ)。

同窓会の日、宴会がはじまってから皆大分飲み食いし、にぎやかになった頃に、隅の方で親友の和也と二人だけで喧騒をさけるように静かに語らっていた僕の隣の席に八弥子はやってきたのだ。突如、僕の手前のテーブルにカランと空のグラス置き、

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