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世の中には不可思議な、科学では到底説明出来ないような現象が度々起きる。
それは、人に対しても動物に対してもである。
この昨今、大半の事象は科学で証明される時代になりつつある。心霊現象の金字塔でもあった火の玉も科学で証明されている。
だが、未だ不可解な事象も、証明されていない。例えば、この少年のような事例である。
半田雅人は21歳。この時、雅人含め数人の友人が集まり、怪談のネタをそれぞれ話しまくった。
「俺なんてよ、あの○○通りの傍の小道を何回も通っちゃってよ・・・」
「僕は入院した時に、夜トイレ行ったら鏡に白い靄が映ってたよ!!」
だが、雅人からして、この周りの連れの経験談は在り来たり過ぎて大した事ないと思っていた。あくまでも、同室している連れはどれもみな、目で見たものばかりである。この雅人が経験した事は、肌で体感した恐怖である。
6年前の初夏
日差しが無く、空が暗くなり出す、かなり蒸しっとした6月。この時期になると余り催しが行われなくなる。ただ昔の水無月、所謂旧暦の6月は、全く雨が降らない時期であった。
西暦を採用した事により環境が逆転した6月。かなり陰気な季節にも成り得る時期でもある。
この時の雅人は15歳。陸上部に所属していた彼は、当然6月中の放課後は暇を持て余していた。とは言っても陶然部活はあり、放課後になると校舎の廊下で助走の練習をしたりしていた。
この頃になると男女の性の障壁とわだかまりがなくなり始め、ここから恋愛に発展するケースは珍しくはない。
この雅人も例外ではなかった。
部活仲間の女子以外にクラスの女子にも気兼ねなく話しかけるようになった。そしてこの日も練習が始まった。
相変わらずのしとしと雨で、空の曇り具合を見るととても止みそうにない。かなり濃い灰色をしている。ただその曇り具合が作り出したのか、校舎の中はとてつもなく暗かった。本来なら夕刻であるが、ほぼ夜中さながらの暗さである。
廊下と教室から灯が煌々と照っているが、その灯が弱すぎるのか、光の届かない階段と閉められた教室が一層暗く際立って不気味さを増していた。
だが雅人ら陸上部の面々はこの暗闇には慣れていた。日没寸前の校舎はかなり暗いというのはお約束である。怪談話でも暗い校舎は一種のジャンルになっている。かと言って見慣れた暗闇に微かな不安を抱くわけではない。皆も無意識にそう思っていた。
雅人自身もそう思っていた。この日までは・・・。
「ハンちゃん。もうえっか」
部長川井京次が言った。そう言われ雅人は部員を見渡すと、皆は疲れてはいなかったものの早く帰りたいと言う、訴え一色の顔をしていた。
「そりゃそうだろ。お前ボーっとしてる間にもう6時半じゃねえか」
雅人は冗談交じりに諭した。
いくら8月に大会を控えていると言っても今からじゃ早すぎだ、と雅人が思考した判断だった。
「俺、ぼーっとしてた?」
川井は如何にも半信半疑の振りをした顔を繕った。これに男子部員らが失笑し、女子部員らは少しバツの悪い顔をした。
「か、解散解散!!明日は・・・、練習いっか」
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