名門大学のキャンパス食堂にて。
エプロンを身に付け、ゴム手袋をはめたリン・ファンは、食卓の残飯を片付けていた。
彼は食卓にあったプラスチックの弁当箱を手に取り、傍らのキャリーバッグに入れた。
「あと十数個の弁当箱を詰めれば満杯になり、また20元で売れる。
これで明日はご飯が食べられる、いいなぁ。
」と独り言を言いながら、もう少しでいっぱいになるバッグに目をやり、リン・ファンの顔には興奮が溢れていた。
少し離れた所で、周源は眉をひそめて、向かいに座っている李坤を見やり、「坤哥、この人誰なの?なんでこんなに貧しくしてるの?」と訊ねた。
李坤は経済学部で有名な裕福な家庭の出身で、家の資産はすでに1,000億円を超えていると言われている。
「貧しい?彼は俺たちの学部の花、王楼を支えているんだよ。
毎月彼女に3,000元もの生活費を渡してるんだ。 」
李坤は、まるで鳥の巣のような髪を撫でつけながら、リン・ファンを見て酸っぽく言った。
周源は驚いた顔でリン・ファンを見、「まさか、王楼が彼を好きになるわけないよね?」とつぶやいた。
李坤は冷たく鼻を鳴らし、「周源、お前は知らないのか?彼は媚びる奴みたいなもんさ。 」と軽蔑した表情で言い、周囲の好奇の目を引き寄せながらいたずらっぽく笑った。 「見てろよ。
」と言って立ち上がった。 その後、わざと食べ残したご飯を床にばら撒き、リン・ファンを呼びつけた。
「リン・ファン!ここを掃除しに来い。 」
リン・ファンはすぐに駆け寄り、地面にしゃがみ込んでご飯の片付けを始めた。
だが、その時、頭の上に冷たい感触を感じた。
李坤が飲み物をリン・ファンの頭に浴びせたのだ。
立ち上がり双拳を握り締めたリン・ファンは、怒りと青筋で溢れ出さんばかりの勢いで李坤を睨みつけた。
しかし、李坤は動じず、逆にリン・ファンの頬を軽く叩き嘲笑し「どうした?俺を殴りたいのか?」と言った。
リン・ファンは思わず拳を振り上げかけたが、すぐに思い直した。