この腕の中に、彼はいない
“友人から「村に下ろされた獣人を迎えに行け」と連絡が来た. 最後の一頭の豚を屠ってから向かうと,残っていたのは,誰にも引き取られなかった一匹の子ぶた. 全身傷だらけで,怯えた目でこちらを見つめている. 「君も行き場がないのか?じゃあ,うちに来るか.」 そう言って胸が締めつけられるような想いに駆られながら,子ぶたを抱き上げ,屠畜場へと歩き出した. ところが,胸元が急に生ぬるく濡れた感触がして,気がつけば,自分の半身が水の中に沈んでいた. ――そうだった.あの子はもう,街の獣人たちに喰い殺されていたのだった.”