その令嬢、多才につき。

のことで怒らないで。

。もうすぐ着くはず。月神、変装とかしなくていいの？ 万が一、紀伊家

で悔やんでいた。幸いにも水野海月が彼女を責めなかったからよか

平

含んだ。「人にものを頼むのなら、頼む側としての態度があ

てあげる。名前は紀伊大輔。2年前に軍を退役して、電光石火の早業で紀伊家の当主の座を継いだの。月神はあ

輔と交流があった者はほとんどおらず、親や年長者

いに耽る。

輔

電話を切った彼女は、海月にスマホをひらひらと見

いわ

った。そこにはカラオケルームやマッサージでリラック

を下ろした途端、ドアが

まれ、氷のような空気を

田舞

と見えないが、長身で、全身から殺気にも

じさん、

るでもなく、

しており、彼女が他の家に

変えずに、部屋の

を身につけ、髪はすべてアップにして

ィラインが露わになっていた。彼女はうつむいて酒を飲んでおり、背中に流れる髪が数筋、胸

待つよう手で合図すると、大股で二

は君だな。ゴッドハ

を見つめる。「本当に彼女の情報を掴ん

の言葉には温度がなく、冷たい

から何度も死線を乗り越えてきたのだ。彼女は低く笑い声を漏らした。

いな性分らしく、極めて直

いく

そちらの女性に、そこまで詳

た。「ゴッドハン

線を送るが、彼女が口を開かない

た。「紀伊さん、自己紹介させても

、噂のゴッドハンド嬢だというのか？ （奇跡の医者とはこの女だっ

となって海月に突き刺さる。部屋は静まり

ゴッドハ

破り、疑わし

真正

照らされた彼女は、まるで闇夜の女

て口説き落とすおつもりか

に、大輔は一瞬、

ンド嬢だと言うなら、治療

についてきた世間知らずの友人だろうと、さして注意を払ってい

たちが見せる画一的なものとは違

に孤独に咲く雪蓮のように、孤高で気高い。あるいは、水面に

動だにしなかった。「それだけ？

抑え、「どうし

ばして彼の頬に触れ、顎のラインに沿ってゆっ

ん、彼女

舞は目を丸くした。（

、その一撃はあ

の紀伊大

家の中で最も若い。軍隊にいた頃から身持ちが固く、家に戻っ

、元軍人らしい精悍な雰囲気を持ち

田舞でさえ、大輔の前ではおとなしく

見る目

もあろう方が、

ように言った。「あなたの身元はまだ確かではない。それなのに

。彼女は首を傾げ、真剣な口調で繰り

もう握っていられないと感じた。彼は顔をそむ

ハンド嬢です。正真正銘です。 月神、私が紀伊おじさん

何かを考えるように言っ

「ゴッドハンド嬢、条件があるなら何

に応じてあげる。条件は――あ