アルファの偽りの番、オメガの静かなる戦い
“私は最下層のオメガ.けれど,月の女神様自らが,私こそがアルファであるカイネ様の「運命の番」だと告げた. 一年もの間,私たちの愛はおとぎ話そのものだと信じきっていた. そしてこの八ヶ月間,私のお腹の中には,彼の息子であり,世継ぎとなる子が宿っていると,そう思っていた. あの日,あの羊皮紙を見つけるまでは. 私と出会う一年も前に,彼は自ら世継ぎを成せぬ身体になるための,血の儀式を執り行っていた. すべては,別の女のために. 私が宝物のように大切にしていた恋物語は,すべてが嘘だった. 彼と彼の戦士たちは,私のお腹の子の父親が誰なのか,賭けの対象にしていた. 彼らは,凍えるような寒い夜には,私を慰みものにして笑っていた. 彼は私に薬を盛り,彼の真実の愛する人,セイラに,楽しみのために私の膨らんだお腹を蹴らせた. そして,意識を失った私の体を,褒美として部下たちに与えた. 私の運命の恋,約束されたはずの未来. それは,彼らが楽しむためだけに弄んだ,吐き気のするような,歪んだゲームに過ぎなかった. 踏みにじられ,心も体もズタズタに引き裂かれ,横たわる私の心は,ただ壊れただけではなかった. 砕け散り,氷のように凍てついた. だから私は,禁忌の薬草を飲み干した.私の中に宿る命を,この手で終わらせるために. これは,絶望からくる行動ではない. 私の戦争の,始まりの合図だった.”