ンクカウンターは見る影もなく歪んでいる。 惨憺たる有様の庭
は、物音に気づいて庭の方へ顔を向ける。 ソファの背にゆったりと身を預け、気だるげに、どん
目を引くための陳腐な茶番だろうと、内心で冷ややかに吐き捨て、こ
仲は険悪そのもの。 先日、佐本家の長女が婚約当日に不貞を働き、東海林家が乗り込んできて婚約破棄を突きつけた。
彼女のドレスはシャンパンを浴びて無残に汚れ、襟元には何かの汚れが大きく付着している。
早く、庭に倒れた女が必死に何かを伝えよ
きりと認めた瞬間、その冷徹な双眸に、今まで見せたことのない複雑な色が揺らめいた。 血の気
の子、隣の女に突き飛ばされたんじゃないか?」 彼は楽しげに、さらに追い打ちをかける。
さる。 ふと、芳成の脳裏にあの朝の光景がよぎった。 彼女もまた、言
どうにか立ち上がった。 そして、手話で佐
掴む力はびくともしない。 無駄だと悟ると、
で来ていた。 清祢も体面など構っていら
る権門であり、その力はあらゆる分野に及んでいる。 芳成の父は、北都市最大のベンチャーキャピタルである
、加賀見家が手に入
大西忠邦の母に蝶よ花よと育てられたが、その根底にある劣等感と卑劣さは拭えない。 自分が佐本家の両親に可愛がられるよう仕向けた
を打ち負かし、彼女を孤立無援
のを黙認していた。 だが、佐本ももは誰よりも知っている。 父、佐本知也は
靖隆の誕生パーティーの招待状を手に入れたことか。 上流階級に食い込むためであり、加
すれば、自分だけが無
まったのだ。 内心、清祢が口を利けないことを好都合だと思っていた。
わがままはよしてちょうだい」 佐本ももは偽善的な笑みを浮かべて清祢に
落ち着きなく視線を泳がせる佐本ももを射抜くように
り上がってくるのを感じ、思わず口元を押さえた。 海鮮の生臭さが引き金となり、生理的な吐き気がこ
が、その囁きは、静まり返った庭の隅々にまで届いた。 清祢の心臓が、氷水に浸されたかの
れて婚約を破棄された挙句、妊娠した――そ
に向ける視線は、答え合わせを終えたか
、無数の針となって全身に突き刺さるようで、顔を上げることなど到底できなかった。 沈黙に慣れきった
は執事を手招きする。 「彼女を、俺の部屋へ。 着替えさせろ」 視線を元凶の
くもない」 東海林賢行は面白そうにソファから跳ね起き、大
の外を覗き込み、口の利けない女の顔
、友人を一瞥もせずに、不機嫌を隠
めやらぬ様子で、窓に張り付いて執事が女を連れて行くのを見送っていた。 もう一人の女はそこまで幸
を捧げているのは、ひとえに孫
に囁かれていた。 名家の御曹司であれば、夜の街に繰り出し、モデルやタレントを何人か囲うのが常だ。
を否定することも、誰も面と向かって真偽を確かめる勇気もない。 そ
彼女は二階へと連れられていく娘の姿を、意味深長な目で見つめて
しているのが真実ならば、
けた祈りが、ついに天
*
/0/22595/coverbig.jpg?v=f5c6a1795dbdc4799cdf268d70d68afe&imageMogr2/format/webp)