恩人の仮面が剥がれた日、俺は親愛(アイ)を知った
作者咲花絵ユーキ
ジャンルその他
恩人の仮面が剥がれた日、俺は親愛(アイ)を知った
夜の十時ごろ。
――神様がいるなら、俺を救って欲しい。
家の前にいた俺はそんなことを想った。
「……ただいま」
そういって、俺は家のドアを開けた。
「疫病神のお帰りね」
玄関の前の廊下にいた姉ちゃんが、そんなことを言ってくる。
「……姉ちゃん」
姉ちゃんの名前は山吹飾音(やまぶきかざね)。 姉ちゃんは切れ長の瞳をしていて、身長が女なのに百七十まであって、百七十二の俺と二センチしか変わらない。
俺は|山吹蓮夜(やまぶきれんや)。高校一年生だ。
姉ちゃんは四年前から俺のことを〝疫病神〟と呼んでいる。
四年前、姉ちゃんは交通事故に遭いそうになった俺を庇って、大けがを負った。その時の後遺症で姉ちゃんは左腕を麻痺している。
姉ちゃんはダンサーになるのが夢だった。それなのに俺を庇ったせいで姉ちゃんは踊れなくなって、ダンサーになるのを諦めるハメになった。 姉ちゃんは事故に遭わなけれは、音大のダンスコースに推薦入学するはずだった。それなのに、俺のせいで推薦を諦めるハメになって、夢も叶えられなくなった。
――姉ちゃんの夢を壊した俺は疫病神以外のなにものでもない。