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Time Travelling My Love from the Royal Family

私の正体を知らないのは、愚かな元夫だけ

私の正体を知らないのは、愚かな元夫だけ

月影 陽子
【離婚からの逆転劇+正体隠し+スカッと制裁+激甘ロマンス】 3年間の結婚生活、彼女は誠心誠意尽くした。だが、手にしたのは冷たい離婚協議書一枚だけだった! 元夫の「忘れられない女」が騒ぎ立て、渡辺家の意地悪な姑が嫌がらせをし、義妹は喚き散らして罵倒する? クズ男と泥棒猫にコーヒーをぶっかけ、録音データで性悪な義妹の顔に泥を塗り、渡辺家の偽善的な仮面を一蹴する! 人前では大人しく面白みのない星野梓が、実はその牙を隠した絶世の妖精だったとは、誰が想像できただろうか。 彼女は渡辺グループの上場を左右するビジネス界の鬼才であるだけでなく、医学界の神秘に包まれた「鬼医」でもあったのだ! 元夫が号泣し、跪いて復縁を懇願? もう遅い。 絶大な権勢を誇る首都圏の御曹司が、とっくの昔に星野梓をその胸に抱き寄せていた。 「彼女は、俺だけのものだ」
都市 離婚どんでん返し身代わり新妻ラブリターン女王様の逆襲
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 妻と子供だけは助けて欲しい。

 首元に剣を突き付けられてなお、敵国の王はそう言った。

 敗戦国の王がその代償に妻や娘を要求されることはよくある話だ。そうすることで、国は生きながらえるのだから。

 だから、王がその命を賭してまで親族を見逃してくれと言ったその言葉の意味が一瞬理解出来なかった。

 言葉を咀嚼して。

 そういえば、ああ。王には息子がいたと思い出す。

 なるほど、それならこの国はまだ生きる。

 剣を振りかざすと、王は抵抗の意思は見せず真っすぐに私を見つめていた。

 どうしてかは分からないが、その翡翠色の目はどこか私を見据えているように感じて、気持ちが悪い。

 首を刎ねる。

 抵抗はない。

 頭部はりんごのように転げ落ちて、その体は力なく崩れ落ちた。

 転がった頭へ目を向けると、その双眸はぴったりと私の瞳を見つめていた。

 じっと、私を見ている。

 これまで切り捨ててきた者達の目からはそんなこと、微塵も感じなかったのに。

 それなのに、この王は死してなお私をその瞳に捕らえている。

 気持ち悪い。

 じっと私のことを見据えている王の首も、そして見つめられていると感じている私自身も。

 不明瞭な事は不快だ。

 どう対応すべきなのか、分からないから。

 なので、この感情はいったん忘れよう。今は、この王の首を以て戦争を終わらせることのほうが重要である。

 そうだ。

 それに比べたら、私の感情など些細な事だ。

 そう脳内で完結させて、王の髪の毛を掴み持ち上げる。

 戦争はその瞬間に終わりを告げた。

 戦場にいた人間全員が、構えていた武器を下ろす。

 味方は歓声を、敵は悲嘆の声を。

 私は、特に何も思わなかった。

 戦いが終わった。

 ただ、それだけだと。

 

 ……。

「簡潔な報告だ、エメ・アヴィアージュ。それで、何か弁明はあるか」

「ありません」

 弁明という言葉の意味を咀嚼しながら、なぜ管制室に呼ばれるに至ったのかを顧みる。

 数年に渡り続いた隣国との戦争は、敵国の王が討ち取られたことにより終息を迎えた。元はといえば領土の問題、ちょうど間に位置する一つの町がどちらの国に属するのか、町長の話にも耳を貸さずに始めた事。そもそもこちらの国の領土ではあったのだが、維持や資金援助など一切の関与をせずに放置していたところ、隣国がその援助を始めたことで事態は複雑に絡まり合ってしまった。

 ただ、奪い合っていたもの故か、戦後賠償と原因である町をそのままこちらの国が管轄するに留めた。我が国の不行き届きが原因で始まった戦争だ、そのまま国を侵略してはあまりにも格好が付かない。心の狭い、獣のごとき国として知れ渡ってしまうだろう。

 これ以上は干渉しないという話で、表面上は和解したらしい。らしい、というのは、いち兵士である私に細かい事情など知る由もないからだ。表面上というのも、果たして本当に相互和解に至ったのかどうか。まあ、それこそただの兵士の私には関係のない話だが。

それよりも問題は、いまこの状況だ。突然管制室に呼び出されたかと思えば、王の首を刎ねた事の次第を説明しろと上官に言われて今に至る。敵国の王を討伐したのだ。それなのに、一体何の問題があるというのだろう。私はこの国の兵士として、戦争を終わらせるべく戦っただけなのに。

「アヴィアージュ。お前は優秀な兵士だったが、このような形になってしまい残念だ」

 胸を反るようにして椅子の背に身体を預け、尊大に足を組んでいる。士官の証である緑の制服を着て、きっと、本当にそうは思っていないのだろう。とりわけ尊敬もしていない上官にどう思われようが、私にとってはどうでもいいことだ。

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