旧鼠の星new
たまりの上に音を立てて落ちた。空気中を白い霧が揺蕩っており、ユス
造がその機能を損なうことはなく、定期的な電子信号が行き交
の毛を頼りにして、先ほどまで進んでいた道を引き返していた。幾度も遺跡の内部の探索を繰り返していたが、
されていた。部屋の内部は濃度の濃い湿気で満たされており、それが解放され
の少女が中に入っていた物と同種のものである。しかし、
る装置で扉を開く操作方法を覚えていたユスチィスであったが、逆に扉を閉める手段は、未だに解明できてい
に荒らしている――ユスチィスはそんな気もしたが、食料すらも確
いた。ユスチィスは一瞬ドキリとしたが、頼もしい兄を演じる
下が一続きとなっている純白の衣を羽織っていた。下半分は
に置かれていたものであり、外の過酷な環境を出歩くに
はあまりないが、ユスチィスには、ひらひらとした白一色
。もう動いても
女のことをパンナカァラと呼んでい
言葉を理解しているわけではなかったが、細い二本の
撫でた。ユスチィスはくすぐったかったが、真っ直ぐに
が彼女のスキンシップなのだと思った。何か、壊れやすいものを丁寧に扱っているような
ない言葉であり、何事かと思う間もなく、突然抱き着かれた。ユス
かな頬を、一筋の水滴が流れ落ちた。ユスチィスは
ィスから手を放し、床にうずくま
風邪、引い
れており、床に座った少女の衣服は
ここにいるわけ
。その環境に適応している旧鼠でさえ、防護服もなしに長時間日光にさらされていると、皮膚が変質し、病気
、今の彼女を助けるものもあるかもしれない――そう考えたユスチ
れた成果は無いに等しく、むし
を収めた棺型の物体は存在していた。だが
うの昔に凍りついて縮小したミイラと化しており、またあるものは最近解凍
残な姿を目にしたユスチィスは、心を爪で深くえぐ
っちだったんだよ
れない――ユスチィスにはそんな気がしていた。あの大蛇が彼女
ていても、飢えに苦しむのは明白であった。パンナカァラも
出向かなければならない―
を掴まれた。見ると、いつの間に近づいたのか、パン
かなきゃ……きみ
ンナカァラ。彼女は何
相手の言いたいこ
でいるのは嫌だって……
るわけではないが、パンナカァラ
でここに残していく
てを目にするだろう。ユスチィスとしては、変わり
しでかすかもわからない。苦渋の決断であったが、ユスチ
した。パンナカァラは抵抗するそぶりを見せず、ユスチィスに身
、回廊を進む。事前に見つけていた、先ほど探索し
初めてである。ユスチィスは彼女の一挙
から遠ざかっていくのが実感できた。やがて、まだ開
法は同じみた
を覚える、ユスチィス。だが、手掛かりのない今
中央部分を、両手で押す。扉の機能がユスチィスの存在を感知
中央にある棺型の物体に歩み寄る。この物体の中身も調べてみるつ
にとって、辛い光景を見ること
めている。ユスチィスの迷いは大きくなり、本当にこの棺の蓋
体の側面に取り付けられている小さな蓋を開け、中の装置に触
ァラ。固唾をのんで見守る
廊へと飛び出していく。ユスチィスが咄嗟に棺の内部を見ると、案の定、
た。冷たい回廊の奥へと遠ざかっていく、パンナカァラの後ろ
カァラ、
度も彼女に呼びか
を滑らせ、転倒する。ユスチィスは慌てて彼女に駆け寄
大蛇の発する音である。ユスチィスはパンナカァラを
。大蛇が備えている二本の長い触角が回廊の中空を踊り、ユスチィ
女に、見
味するところは、
見せたくはな
だろう
スチィスは本能的な恐怖をぬぐい切れず、パン
蛇の方へと近づいていく。ユスチィスは止めるべき
グゥ
響きの言葉。一瞬、大蛇の動きに変化
ロ……な
問を遮るように、
シの…
き、大蛇は動揺している
外見は、先史文明人に畏怖の念を植え付けると言って。その大
れている。……おそらくだが。ワタシが、この遺跡を
の遺跡を、管理
我々に、与えられた使
蛇と向かい合っている。暗い回廊の壁を断続的に奔
ワタシを、恐
が呻くよう
本能が、忌避するよう、
ている…
は、その言葉の
シが、誘導する。彼女
くなる。その後、金属と金属を打ち合わ
う。ユスチィスはパンナカァラの
たが、ダグゥロの言っている通りならば、同族の亡骸を見た
ったが、途中で枝分かれする道が増えてきた。二人は
けざまに、回廊の側面にある一室を仕切っている扉の
れ、という
は低い音を響かせながら、横にゆ
まで見てきたものと
ていて、内部を真紅に染めていた。突き当りには銀色の椅子が置か
の大きさのガラス状の筒が金属板に立てかけられる形で並んでおり、それぞれ
を振りほどいた。ユスチィスが気圧されているうちに、パ
ナカァ
黙って椅子に腰を下ろした。ユスチィスは言い
ら振り下ろされ、ユスチィスを押し返
て、見
の方の壁に大きな丸い穴が開いており、そこか
、で
き延びるため
スは、大蛇に正面から逆らっても敵わない。ユスチィス
端には白い針が備えられていた。パンナカァラは自分の白
全身が麻痺したように動けなくなってしまう。ユスチィ
くりと押し込まれていく。中の液体
、適応するための、儀式。肉体改造だ
言葉に、ユスチィス
い。だが、この姿も太古の時代を生きた先
き延びることのできない、先史文明人。長い
に手を出そうとしたユスチィスであったが
られたが、生き残る工夫をこらしたにも関わらずに死に絶えた他の先史文明人の骸を思い出す
見つめる。それは誰かにすが
ンナカァラ。ぼく
、パンナカァラはか細
女は自分の存在に勇気づけられてい