男子が好きな女子と女子が好きな女子が恋におちる百合純愛。
令和2年4月中旬陽春の頃。某大学の校舎の二階から一階に続く階段の踊り場で、小柄で黒髪ストレートロングの一見大人しそうな一年生ーー山田優璃(こはら・ゆうり)は、一人の同じ女子大生に一目惚れしてしまった。
優璃が恋におちた相手は残念ながら同じ大学で出会った彼氏が既に居る同期の間宮妃乃理(まみや・きのり)だ。
一方で妃乃理は、優璃のことをただの同期というだけの関係性だと思っている。
「あの、間宮さん!」
奥手な優璃はそれでも声をかけてみた。
「はい。何でしょう?」
「その・・・・・・、好きです。付き合ってください!」
「ごめんね、あたし、彼氏いるから」
じゃあ、と、妃乃理は1階へ降りていった。
しかし、優璃はそれでもこの恋を諦めない。
この日から優璃の恋は燃えていく。
それから2年後。妃乃理も優理も三年生になった。
優璃はこの二年間、料理サークルに入って料理の腕を磨き、妃乃理の為に弁当を作って渡したり、バレンタインデーには毎年手作りのハート型の本命チョコを作って渡したりして努力しては告白を繰り返してきた。
優しい性格の妃乃理は弁当もチョコも、優璃が作ったものはどれも完食しては感想を述べた。実は妃乃理は入学前の三月から一人暮らしを始めていて、毎日食費に困っていたので優璃からの弁当は節約につながっていた。
一方で優璃は妃乃理の感想をもとに何度も作っていくうちに、弁当もチョコも美味さが増していった。
「諦めないねぇ、優璃」
「妃乃理さんを好きな気持ちは変わりませんから!」
と、ここで妃乃理は衝撃的な発言をする。
「実は、彼氏と喧嘩して今は別れたばかりなんだよね」
優璃に、ようやく春が来た瞬間だった。
「あの、妃乃理さん、わたしと付き合っていただけませんか?」
「良いよ。でも、条件付きだけど」
初めて告白が成功し、努力の甲斐があった一言だった。
「優璃は何処住みなの?」
「ボロいアパートに住んでいます」
「うちに越しておいでよ。うちのアパートは新築で綺麗だよ」
「良いんですか?! ありがとうございます! 住みます!」
数日後、優璃と妃乃理の同居生活が始まる。