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Elder Last Emblem

フラれた翌日に結婚したら、億万長者の妻になってました

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緋色 カケル
失恋の翌日、勢いで見知らぬ男と結婚した七瀬結衣。 どうせすぐ破産すると言う彼を支えるつもりだったが——なぜか彼は異常に頼れる。 ピンチのたびに現れては完璧に解決。どう見ても“運だけ”じゃない! 実はその正体、世界一の大富豪・朝倉誠司。 「これが君の“運の良さ”だよ」 ——波乱のスタートだった“契約結婚”は、いつしか本物の愛へと変わっていく。
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「この結婚式、本当に賑やかね。 聞いた?長谷川さんの幼なじみが、ホテルの屋上で自殺騒ぎを起こしてるんだって!」

ドアの外から聞こえてくるひそひそ話に、橘明音の胸に酸っぱいものがこみ上げてきた。

桜井静香が自殺騒ぎを起こすのは、これで九十九回目だ。

もう慣れたつもりでいた。

だが、今日は違った。

今日は、彼女と長谷川冬樹の結婚式なのだ。

静香がこんな騒ぎを起こせば、自分がまた一歩引かなければならないことは分かっていた。

彼女と冬樹が交際して五年、静香も五年騒ぎ続けてきた。

そのたびに、冬樹はいつも真っ先に彼女をなだめに行った。

明音は、この恋愛において、自分こそが人目を忍ぶ愛人なのではないかとさえ感じていた。

だが、冬樹が前回、自分を置いて静香のもとへ行ったとき、彼は彼女に約束した――あれが最後だと。

彼の「最後」を信じたからこそ、今日の結婚式があるのだ。

「死にたいなら死なせておけ!俺に電話してきてどうするんだ?」

明音ははっと顔を上げた。バルコニーのドアが完全に閉まっていなかったらしく、冬樹の低く冷たい声が部屋の中まで響いてきた――

「飛び降り? あいつにそんな度胸はない! 今まで何回自殺騒ぎを起こした? 一度でも血を見たことがあるか?」

最後に、冬樹が声を潜めて何かを指示する声が聞こえたが、あまりにも小さく、明音には聞き取れなかった。

冬樹が電話を切り、振り返ったとき、ちょうど明音と目が合った。

明音は心臓が激しく高鳴るのを感じた――彼が今回、静香のもとへ行かなかった……

つまり、彼は自分を騙していなかった?

本当に最後だったのだろうか?

「そんなに見てどうした? もうすぐ式が始まるぞ。 準備はいいか?」 冬樹の顔に表情はなかった。

それでも、明音はとても嬉しかった。

冬樹が生まれつき感情に乏しく、多くの場合、他人に共感できない人間であることは知っている。

だが、青春時代に抱いた淡い恋心から、今や真実の愛を捧げるまでに至り、自分はようやく報われたのだと感じていた。

自分は冬樹にとって、特別な存在であるはずだ。

でなければ、どうして彼は自分との結婚を承諾しただろうか?

明音は花が咲くような笑顔で彼の腕に絡みつき、目尻も口元も笑みに満ちていた。 「冬樹、私たち、ついに結婚するのね……」

冬樹は相変わらず無表情だった。 「ああ、分かっている」

控え室のドアが開いた――

「それでは、新郎新婦のご入場です」 司会者の朗々とした声が、瞬く間に会場全体を掌握した。

明音は幸福に満ちた顔で冬樹の腕に絡みつき、壇上へと歩き出した。

「お二人に、盛大な拍手を……」

司会者が言葉を言い終える前に、冬樹の携帯電話が突然鳴り響いた。

司会者の顔に気まずさがよぎり、会場からはどっと笑いが起こった。

明音の顔から笑みが消えた。 この着信音は、彼女にとって悪夢のようなものだ。 これは、静香専用の着信音だった。

冬樹は胸の内ポケットから携帯電話を取り出し、電話に出た。 『もしもし、またどうした?』

司会者は慌てて事態を収拾しようと、再び雰囲気を盛り上げようと試みた―― 長年司会者を務めてきた彼も、こんな事態は初めてだったに違いない。

だが、彼が口を開くよりも早く。

『すぐに行く』

冬樹はそう言い捨てると、大股で壇上を降りていった。

一瞬にして、会場全体が騒然となった。

「行かないで……」明音はウェディングドレスの裾をたくし上げ、彼を追いかけた。 その顔はほとんど懇願に満ちていた。 「最後だって言ったじゃない」

冬樹は眉をわずかにひそめ、冷徹に利害を天秤にかけているようだった。

数秒後、彼は冷静に彼女に説明した。 「静香が本当に飛び降りた。 俺が行って様子を見てくる。 君はゲストをなだめていてくれ。すぐ戻る」

「冬樹!」明音は彼の腕を掴んで離さなかった。 「もしあなたが行くなら、私、結婚しないから!」

冬樹は彼女の手を振りほどいた。 「後悔するなよ」

明音は心が粉々に砕け散るのを感じ、涙がはらりとこぼれ落ちた。

冬樹は彼女の涙を見て、心臓がわずかに揺れたが、彼女が自分に妥協したのだと理解した。

いつものように。

彼女は自分を諦めきれないのだ。

彼は、明音がどれほど自分を好きかを知っていた。 箱入り娘のお嬢様でありながら、実家と縁を切ってまで、宮都で自分と共に苦労を重ねてきた。

何が起ころうと、彼女はいつも自分の後ろに立っていてくれた。

彼女の最大の願いは、自分と結婚することだった。

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