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Yokubo no Yamini Furisosogu eien no Shunkan

婚約破棄された没落令嬢、氷の帝王たる冷酷総帥に甘く溺愛される

婚約破棄された没落令嬢、氷の帝王たる冷酷総帥に甘く溺愛される

キャンディ渚
パリのアパートで論文の進捗を確認していた私のスマホに、義妹の玲奈から一枚の写真が送られてきた。 そこには、ホテルのベッドで裸で絡み合う、私の婚約者と玲奈の姿が鮮明に写っていた。 カメラに向けられた玲奈の瞳には、私を見下すような挑発的な笑みが浮かんでいる。 「西園寺家を救ってやった恩を忘れるな」 長年、婚約者の佐藤家から投げつけられてきた侮蔑の言葉が脳内で不快に反響する。 没落した西園寺家にとって、私はただの都合のいい政略結婚の駒でしかなかった。 彼らの敷いたレールの上で、従順で物分かりのいい娘という仮面を被り続ける人生。 体内で燻っていた諦めや無力感は急速に燃え尽き、後には氷のように冷たい怒りだけが残った。 私は来月帰国する予定だったフライトをキャンセルし、最も早い東京行きのチケットを迷わず予約した。 そして、部屋の隅に大切に保管していた高価な婚約記念のドレスを、ゴミ箱に無造作に投げ捨てる。 ただ婚約を破棄するだけじゃない。最高の舞台で、佐藤家を完全に破滅させてやる。
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リン・ジェはいつものように書店の古びた木製のドアを押し開けた。

すると、ドアの端にある銅製のベルが鈍い音を立て、ドアのフレームから流れ落ちた大量の水が、埃と混ざり合ってドアの嵌めガラスを伝い、跡を残した。

空は暗かった。

外ではパチパチと音を立てながら雨が道路に打ち付けられ、周りは深い霧に覆われていた。

書店の前には、靴底を覆うぐらいの水たまりができていた。

「すごい雨だな」

とリンは濡られたシャツとズボンに眉をしかめながら困った顔をした。

「気象情報です。昨夜から続くこの豪雨は約1週間続く見込みです。気象庁は、豪雨黄色警報を発表し、これからは赤警報に引き上げる可能性もあると...」

隣のお店からテレビの音が聞こえてきたが、すぐに雨の音にかき消された。

この天気では、客も来ないだろう。

「仕方ないな」

リンはドアの後ろから三脚と木の板を取り出し、ドアの前に簡易的なスロープを作った。

そしてドアに掛かっている看板を「営業中」へとひっくり返した。

こんな天気で書店に来る客は滅多にいないだろう。

もしかしたら、閉店まで一人も来ないかもしれない。

営業するよりも、家に帰って寝る方が賢明だろうが、

「でも、もしかしたら傘を忘れて、雨宿りに来る人がいるかも」とリンは考えた。

そして貸出本棚から本を一冊取り、明かりをつけると、カウンターにタオルを一枚掛け、暖かいお茶を二杯淹れた。

全てを終えると、椅子に腰かけ、

前回読みかけたページを開いて、淹れたお茶を一杯、机の向こう側に置いた。まるで初めて会う友人を招待しているかのように。

ここには本と温かいお茶があるのだ。

行先のない人の心と体を温めるのには十分だろう。

リンはお茶を一口飲んで微笑んだ。

そう、彼はとても親切でロマンチックな人なのだ。取り立てて目立った才能などはなかったが、客には人生相談に乗るお人よしとして知られ、ここに来る人達の心をいやしていた。

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