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星奈セレナ

小説2部発表

星奈セレナの小説・書籍全集

四十九冊の本、ただ一つの清算

四十九冊の本、ただ一つの清算

恋愛
5.0
私の夫、彰人にはあるパターンがあった。 彼が浮気し、私がそれに気づくと、私の本棚には希少な古書が一冊増える。 四十九回の裏切りと、四十九回の高価な謝罪の品。 それは取引だった。美しい物と引き換えに、私は沈黙を守る。 だが、四十九回目が限界だった。 彼は、死にゆく父の手を握って交わした約束を破り、父の授賞式をすっぽかした。 高校時代の恋人、樹里のためにマンションを買うためだった。 その嘘はあまりにもあっけらかんとしていて、不倫そのものよりも私の心を粉々に砕いた。 そして彼は、彼女を私の母の追悼庭園に連れて行った。 母のベンチの隣に、彼女が飼っていた死んだ猫の記念碑を建てようとするのを、彼はただそばに立って見ていた。 私が二人を問い詰めたとき、彼は臆面もなく私に思いやりを求めてきた。 「少しは思いやりを持とう」と彼は言った。 母の記憶を冒涜する女への思いやり。 私が経験した流産という、神聖な悲しみを、汚らわしい秘密のように彼が漏らした女への思いやり。 その時、私は悟った。 これは単に心が傷ついたという話ではない。 これは、私が彼と共に築き上げた嘘を、解体する物語なのだと。 その夜、彼が眠っている間に、私は彼のスマートフォンに盗聴アプリを仕込んだ。 私は選挙プランナーだ。これより少ない情報で、いくつものキャリアを潰してきた。 五十冊目の本は、彼の謝罪にはならない。 私の、最後の声明になるのだ。