狂犬令嬢の極上ざまぁ

狂犬令嬢の極上ざまぁ

Rabbit4

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藤原涼音。彼女は国家が極秘裏に育て上げた至宝であり、組織内の誰もが羨む天才少女。圧倒的な戦闘能力を誇り、誰にも縛られない気高き魂の持ち主だ。 だが、その華やかな経歴の裏には、誰にも言えない孤独があった。幼くして両親を亡くし、たった一人の双子の妹と二人、身を寄せ合って生きてきた過去が――。 七年の時を経て、ついに国家から自由を許された涼音は、胸を弾ませて故郷へと帰還する。 しかし、そこで目にしたのは地獄だった。亡き両親の豪邸を乗っ取り、贅沢三昧の叔母。そして、犬小屋で寝起きし、家畜同然の扱いを受ける妹の姿――。涼音の怒りが爆発し、食卓をひっくり返す! 叔母からの脅迫? 即座に冷徹な手段で提携を断ち切り、叔母の会社を瞬時に破滅へと追い込む! 学園での陰湿なイジメ? 妹になりすまして潜入し、目には目を、暴力には暴力を。加害者が地に伏して命乞いする様を、全ネット中継で晒し上げる! 「身分が低い」と嘲笑される? 涼音は淡々と言い放つ。「ええ、私はただの一般人よ」 その直後、名門旧家が公表する。「彼女こそが、我が家の正当な後継者だ!」 さらに国家科学研究所までもが宣言する。「我々こそが、彼女の最強の後ろ盾である」と! …… 北村凌也。謎に包まれた名家の当主であり、決して表舞台に姿を現さない男。 性格は冷酷無比。血の海に佇み煙草を燻らせていた、瞬きもせず人を殺めた……そんな恐ろしい噂が絶えない。 だがある日、目撃される。彼が涼音を壁際に追い詰め、その暗い瞳にどこか切ない色を宿して迫る姿が。「涼音、邪魔者は始末した。……そろそろ、俺の相手をしてくれてもいいだろう?」 「私たち、ただの協力関係でしょ?」呆気にとられる涼音。 だが北村は深く息を吸い込むと、その唇を奪い、囁いた。「……これでも、まだ他人行儀か?」

第1章犬小屋で震える哀れな妹

「長年、本当にお疲れ様でした。 ボス、ご帰国おめでとうございます」

祝賀会の席で、上質なオーダーメイドのスーツに身を包んだ青年が、名残惜しそうに藤原涼音を見つめていた。

彼女の整った顔立ちには、いかなる感情も浮かんでいない。冷ややかに澄んだ切れ長の瞳は、ただ目の前の青年を映すのみ。紡がれた声もまた、硝子の欠片のように冷たかった。「ええ。先に行くわ」

「ボス、お送りしますよ」三浦優一が間髪入れずに申し出た。

涼音は拒まなかった。

車に乗り込むと、三浦が口を開く。「ボス、今回はいつ頃、会社に復帰されますか? おかげさまで業績は絶好調ですよ」

二人はとあるプロジェクトで出会った。わずか19歳の藤原涼音がどれほど恐るべき実力を秘めているか、共に戦場を駆け抜けた三浦が一番よく知っている。だからこそ彼女を誘い、共同で会社を興したのだ。今やその会社は、業界の頂点に君臨している。

涼音は淡々と唇を開いた。「考えがまとまったら連絡するわ。今はただ、家に帰りたいの」

「はいはい、妹さんに会いたいんですよね。ご安心ください、きっとお元気にされてますよ。 ここ数年、良い案件はすべて叔父様に回しておきましたから」三浦は、どこか褒めてほしそうな顔でそう言った。

涼音と妹は6歳の時に両親を亡くし、その後、叔母一家が越してきて姉妹の面倒を見ることになった。

涼音は静かに頷く。「……感謝するわ」

細い指先が、胸元の桜のペンダントに触れる。慣れた手つきで留め金を外し、そっと開くと、中には色褪せた二人の写真が収められていた。

彼女と、妹。

写っている涼音は無表情だが、隣の妹は満面の笑みを浮かべている。 その屈託のない笑顔を見つめるうち、涼音の氷のように張り詰めた表情が、ほんのわずかに緩んだ。自覚のないまま、口元に淡い微笑が浮かぶ。

両親が逝ってから、姉妹は互いだけを頼りに生きてきた。妹は小さな太陽のように、いつも周りを明るく照らす存在だった。

12歳の時、涼音は国にその才能を見出され、極秘プロジェクトから離れられない日々が始まった。あれから7年ーープロジェクトを完遂した今、ようやく家に帰り、妹に会える。

国から支給された給与は、そのほとんどを妹に送金してきた。妹は今頃、何不自由ない暮らしをしているはずだ。

涼音の口元に浮かんだ微かな笑みを見て、三浦は思わず息を呑んだ。

(あの氷の美貌が、笑っているーー? マジかよ。俺もその妹さんに一度会ってみてえな)

車は閑静な住宅街の入り口に停まった。

どの家にも手入れの行き届いた庭があり、見るからに高級住宅地だ。

ここは涼音の両親が遺した家で、現在は叔母一家と妹が暮らしている。

登録のない車両は入れない規則のため、涼音は警備員を煩わせることなく車を降り、住宅街へと足を踏み入れた。

自宅の玄関からは暖かな光が溢れ、楽しげな笑い声が夜の静寂に響き渡っている。

ーーどうやら妹は、元気に暮らしているようだ。

涼音は安堵の笑みを浮かべたまま、庭の門をくぐった。

庭の隅に、犬小屋がある。

その傍らに、うずくまる人影があるのを涼音は鋭く捉えた。

家の明かりが届かない薄暗がりで顔ははっきりと見えないが、椀のようなものから何かを口に運んでいるのが見える。

なぜ、こんな場所に人が?

涼音は眉をひそめ、静かに歩み寄った。

その人影はビクリと肩を震わせ、怯えた小動物のように素早く犬小屋の中へと身を隠す。

訝しむ涼音の耳に、次の瞬間ーー中から、か細く震える声が届いた。「もう、ぶたないで……っ。わ、私、ちゃんとしますから……もっと気をつけるから……」

この声はーー妹!

涼音は瞬時に目を見張り、怒りと衝撃に息を呑んだ。そして躊躇なく、小屋の中にいたその人を引きずり出した。間近で見れば、乏しい光の中でも、その顔ははっきりと判ったーー目に焼きつくほどに。

彼女の妹、藤原杏奈ーー!

「あ……」杏奈もまた、目の前の相手に見覚えがあるかのように、呆然と涼音を見つめている。信じられない、とでも言うように。

「杏奈……あなたなの?」涼音の言葉は、一語一語が刃となって自らの胸を抉る。杏奈がこくりと頷いた、その瞬間ーー

涼音の全身から放たれたのは、世界そのものを凍てつかせるような絶対零度の殺気だった。その瞳に宿った破壊衝動は、街一つを容易に瓦礫へと変えてしまいそうなほど、昏く燃えている。

「お姉……ちゃん……?」杏奈は信じられないといった様子で、震える唇を動かした。

「お姉ちゃん……帰って……きたの……?」

まるで夢でも見ているかのような虚ろな様子に、涼音は我に返り、心配そうにその額に触れたーー熱い。指先に伝わる異常な熱さに驚いたのも束の間、杏奈は糸が切れたように涼音の腕の中で意識を失った。

額は焼けるように熱いのに、身体は氷のように冷たい。

涼音の心も、それにつられるように急速に冷えていく。

その時、屋敷のドアが乱暴に開け放たれた。

「藤原杏奈! このグズ! 何分かかってんのよ、まだ食い終わらないの!? さっさと来て皿洗いしなさい!」 現れた叔母が、甲高い声で罵り立てている。

涼音はゆっくりと振り返り、その女を見据えた。

数年ぶりに見る叔母は、かつてのやつれた面影もなく、高価そうなコートを羽織り、翡翠の装飾品で身を飾り、まるで貴婦人のような佇まいだった。

恵美は、涼音の目に宿る凄まじい殺気に怯み、言葉を失う。「あ、あんた……涼音? い、いつ帰ってきたのよ……」

「お前たち……この子に、何をした」 一歩、また一歩と近づいてくる涼音は、死神そのものだった。

恵美は無意識に後ずさる。その目に宿る昏い光に、本能的な恐怖を感じたのだ。だが、すぐに気を取り直す。ーー目の前にいるのは、まだ十代のガキじゃないのよ!

恵美は嘲るように笑った。「あの子が皿を割ったから、躾けてやっただけよ。あんたがいない間、うちがどれだけ苦労したと思ってんの? それでも住む場所も食事もちゃんと与えてやったわ。兄さんの娘じゃなきゃ、とっくに追い出してるわよ」

ーー次の瞬間。恵美の喉が、氷のように冷たい指に鷲掴みにされた。目の前に突きつけられた、感情の凍りついた美貌。息が、できない。「ぐ……っ、は、放しなさいよ……っ」

涼音の表情は凍てつき、その瞳は塵でも見るかのようだった。「ここは私の家よ。私の妹に皿洗いをさせて、犬小屋で寝かせる……?いい度胸ね!」

屋内から漏れる明かりが、杏奈が食べていたものを照らし出す。ーー正体不明の、どろりとした塊。豚の餌と見紛うばかりの代物。

腕の中の妹は紙のように軽く、その顔はやつれ果て、血の気も失せている。

涼音の心は、鈍い刃でじわじわと抉られるように、血を流していた。

掌中の珠のように慈しんできた妹がーーこんな仕打ちを受けていたとは。

「高橋恵美……! この家に住む時、妹の面倒は必ず見ると約束したはずだ」 涼音の瞳に、明確な殺意が灯った。

呼び捨てにされたことに恵美は憤慨したが、その殺気を前に全身が竦み上がる。

涼音は幼い頃から、どこか常人離れした冷酷さを纏っていた。だからこそ、彼女がいた数年間、恵美も迂闊なことはできず、かろうじて叔母の仮面を被っていたのだ。

ーーまさか涼音が、突然いなくなるとは思わなかったわ。

家に残されたのが気弱な杏奈一人になったのをいいことに、恵美は次第にこの家を我が物顔で使い、杏奈を追い詰めていった。

まさか、涼音が帰ってくる日が来るなんてーー夢にも思わなかった!

「ちゃんと面倒は見てたわよ! 悪いことしたから罰を与えて、何が悪いっていうのーーぐぅっ!」 言い終わらぬうちに、恵美の喉が再び締め上げられた。完全に呼吸を奪われ、死神がすぐそこで手招きしているかのような錯覚に陥る。

「涼音……!?」騒ぎに気づき、屋敷の中から従妹たちが様子を見に出てきた。

涼音の目に映るのはーー広々とした豪華な内装、テーブルに並んだご馳走、そして高価な服に身を包んだ叔父と従妹たち。

その一方で、彼女の妹は犬小屋で寝かされ、豚の餌を食べさせられていた。涼音の目尻が、再び紅く染まった。

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