学校のドアを開けたら、目の前は異世界だった!当然行くあてもなければ、文字も読めない。半ば絶望していたところに、なんとハーフエルフのお姉さんがたすけてくれた。話を聞くと、数年前に人類という種族はみな消えてしまったらしい。人類が消えた謎を突き止め、元の世界の家に帰る!
『おぉ、知恵の神よ。どうか我らのもとに現れ、お助けください。』
八意天《やごころそら》は、いつもどうり学校から帰ろうとしていた。
髪は紺色のショートで、容姿、体型ともに普通。自宅から歩きで30分ほどの高校に通っている二年生男子。自分から他人に話すことはなく、学力は高い。夢はないし特にこれといった才能もなく、打たれ弱い。しいて言うなら周りには隠してるけどかなりのオタク。よく言えば多趣味、そんな感じだ。
今日は、日直だったため教室に鍵をかけ、その鍵を職員室に届けに行く。
コンコン
「失礼します」
「あぁ、八意。......鍵預かっとくぞ」
担任の西山先生だ。生徒思いで優しいんだけど面構えが怖い。
「ありがとうございます」
「そうだ、お前卒業したら何するんだ?」
「普通ですけど」
「普通でもやりたい仕事とかあるだろ?......ほれ」
机の引き出しから進路のプリントを渡される。
「書き直してこい」
「はい。......失礼しました。」
プリントをしまい職員室を出て昇降口に向かう。
運動部の声や楽器の音が聞こえてくる。部活に入っている人たちはみんなもう進路は決まっているのだろうか。
そんなことを考えつつ、昇降口のドアを開け外に出ると、
「あれ?」
見たこともない景色に変わっていた。
中世風の街に奥に見えるは大きな城。そこはとても賑わっていて今いるのは広場のように見える。
......いや見たことはあるんだ、同じような景色を。でもそれはアニメやラノベの世界であって現実じゃあない。
何かの間違いだろうと後ろを振り向くが学校なんてものはなく、大きな噴水が建っていた。
「まてまてまて、何かの間違いだ。そんな......うそだろ?」
いやいやと首を振ってみたり、目を擦ってみたりするが何も変わらない。
「マジの異世界召喚ってやつですか?だったら召喚者はどこにいんだよ。......いや全部夢か?」
答えの帰ってこない質問を出し続け、
「よし、落ち着こう。落ち着くんだ。......すぅー、はぁー」
大きく深呼吸をすると、
「......よし、状況の整理だ」
1つ、昇降口を開けたら変なとこに飛ばされた。
2つ、周りを見ると耳の長い人しかいない。
空にはたくさんの惑星?がある。近かったり、遠かったり。
3つ、バッグの中には、筆箱、ノート、ファイル、学生帳、スマホ、財布、
あと空の弁当だ。
4つ、もちろんスマホはつながらない。
「最悪だ。でも、もっと情報が欲しい。周りを探索しよう。」
「なるほど、建物のつくりは中世風だな。買い物をしている人を見る限り、俺の持っているお金じゃ何も買えないだろうな」
探索を初めて、数分店が多く並んでいるところを歩いてる。たくさん看板があるがそれもなんて書いてあるのかわからない。
ぐぅ~
「......」
腹減った。
元の世界だともう晩御飯になっているんだろうか。
「あ」
八百屋だろうか、野菜や果物をたくさん売っている。中でも大きく真っ赤なリンゴが目に入った。
「うまそぉー」
ほしいけどお金ないし、お店の人怖そうだし......
「はぁ、あきらめよう」
その後それらしい成果は得られず、日も落ちて気づいたら最初の場所に戻ってきていた。
「疲れたし、座ろう」
噴水に付いてるベンチに座る。
さっきより人通りも減っていて......というよりは目の前をさっきはかなりの数だったが、今は2,3人くらいといったろころだ。
「これからどうしよう」
目元には涙が溜まっている。
「こんなところで死にたくない......」
そのまま静かに泣いた。
しばらくして気分がだいぶ落ち着いてくると、辺りはすっかり暗くなっていた。
もう寝よう。
ぺたんとベンチに寝転がる。
起きたら夢であったことを信じて、そうでなかったら住み込みで働かせてもらえる場所を探そう。
「......うぅ、寒い」
そう言って別に暖かくもないバッグを抱き枕のように抱きしめる。
「帰りたい、家に帰りたい」
また涙があふれ出てくる。
腹は減っているし、泊まる場所もない。他人と話せないから助けてもらえないし、なにもわからない。噴水の水も掛かってくる。最悪すぎる異世界召喚だ。
「なんで、俺がこんな目に......」
疲れているので眠りたいのに、涙が止まらなくて訳が分からなくなってくる。
「ねぇ、キミ」
「へ?」
涙で前が見えなくなっているが人が立って居るのがわかる。声を聴くからに女性だろう。
幻覚が出るところまで来ちゃったか。
「ここで何しているの?」
ほかにも、どこに住んでいるの?年は?など色々聞かれたが幻覚に何言ってもしょうがないし答えるほどの元気もない。なのに、どうしてか
「お腹すいた」
そう言って意識が暗闇の中に沈んでいった。