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愛を知らない操り人形と、嘘つきな神様。

愛を知らない操り人形と、嘘つきな神様。

咲花絵ユーキ

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――人生なんてクソだ。神様なんていない。世界は残酷だ。ずっと、そう思っていた。お前に出会うまでは。  闇金から金を借りている父から虐待を受けている井島海里(いじまかいり)は、人生に絶望していた。  ある日、海里は虐待されているところを高校の同級生の阿古羅零次(あこられいじ)に助けられる。  彼は、海里に『自分を大切にしろ』と喝を入れたり、『親から守る』といってくれたりと、やたら親切にしてくれた。人間不信をこじらせていた海里はそんな彼を不信に思っていたが、その一方で、彼の親切心を嬉しくも感じていた。そのため二人は徐々に仲良くなっていき、海里は彼のおかげで、少しだけ生きるのを楽しいと思うようになった。  だが、海里は零次に虐待がバレたのがきっかけで父から酷い暴行を受けて更なる絶望を味わい、江ノ島で身投げをしようとしてしまう。零次はそれを止めて、海里に一人暮らしの自分と同居をするようにいった。戸惑いながらもそれに応じた海里は、零次と暮らす中で、人生をとても楽しいものだと思うようになった。  だが、同居をしてから一ヶ月半がたったある日、突然零次が海里の前から姿を消してしまい――!?

チャプター 1 一章 絶望の淵に立たされていた人形は、自分だけの優しい神様に出会った。1

放課後。

「……父さん」  

家の前に着くと、そこには父さんがいた。

「……お帰り、海里」

そういうと、父さんは俺の右腕を片手で思いっきり掴んだ。

「いっ!?」

父さんの五ミリくらい伸びている爪が皮膚に食い込んで、皮がむけて、血が出た。

「静かにしろ」

「いった!!」

両足を踏まれ、もう片方の手で、所々が剥げた紺色の髪の一部を引っ張られる。

「口を閉じろ」

「わっ、わかった」

父さんは俺が頷いたのを確認すると、足を踏むのをやめて、家の門を開けて、俺の腕を引いて、門の中に入った。 父さんはそのまま俺を家の裏手にあるガレージのところへ連れて行った。

ガレージはシャッターが閉まっていて、その横にある人が通れそうなドアが、換気のために開いていた。

風で入ったのか、ドアのそばには、落ち葉がたくさん落ちていた。

父さんはそのドアの目の前に俺を連れて来ると、俺の背中を勢いよく蹴ってから、手を離した。  俺はつまずいて、ガレージの床に倒れた。

――ガチャ。ガチャガチャ。

ドアの鍵を閉めるような音がした。  

俺は嫌な予感がして、慌てて身体を起き上がらせ、後ろに振り向いた。 ガレージのドアが閉まっている。  俺はドアノブを回して、ドアを開けようとした。だが、全く開かなかった。

――嘘だろ。  俺、閉じ込められたのか?

ポケットに入れていたスマフォが、突然音を立てる。 《気が向いたら開けてやる。それまで耐えろ》  スマフォを起動すると、父さんからそうラインがきていた。

「は? 今開けろよ!」  

俺はドアを叩いて、叫んだ。  

父さんがまた、ラインを送ってくる。

《却下だ。それ以上叫んだら、朝まで閉じ込めるぞ。大人しくしろ》  

俺は床に尻餅をついた。  

……最悪だ。また閉じ込められた。

俺は|井島海里《いじまかいり》。高校一年生だ。 俺は父親に虐待されている。 五年前、父さんは交通事故を起こして、百万以上の損害賠償金を払うために闇金融から多額の金を借りた。 父さんが俺に虐待を始めたのは、その事故があってから一か月もしない頃だった。 目的はただのストレスの発散。 父さんは会うたびに金を返せと怒鳴ってくる闇金の男たちのせいでたまる鬱憤を、俺を殴って晴らそうとした。 ――要は俺は八つ当たりをされたんだ。 でもそれは、別に凄いきついものじゃなかった。物を投げられたり蹴られたりするだけで、結構耐えられるのものだった。一年半ほど前まで。

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