追い出された果てに、億の愛が始まる
ごろ会社で役員会議の
目が合ったその瞬間、あの冷ややかで氷のような視
だった。強すぎて、まともに目
プの総裁であり、傘下の企業は千社以上。 しかも、顔立ちも完璧で独身。 海音市の名家の令嬢た
だ喜びすら感じていた ――“時田肇が、私に触れた…!”と
ちに冷え切っていくのを見た瞬間、
田肇ほどの男が、この高級レストランに現れるのは不思議ではない。だが、問
あるの? だから“ヒー
も 答えは
そっと引き、か細い声で訴えた。 「と
が、決して冷酷な人間ではない。 時田グループは毎年数億円規模の慈善事業を展開しており、本人も世界的な慈善親善大
私たち、ただこの方とちょっとふざけてただけなんです。 彼女、自分で払えないような高級店に
なかった。 万が一、今回の件の黒幕が自分だと時田肇に知られたら―
ットから真っ白なハンカチを取り出すと、指の一本一本を丁寧に拭き始め
見た目からして全部安物の服で、たぶん全身合わせても何千円もしないような格好なんです。そんな人がこんな高級レストランに来るなんて、普通じゃないですよね? しかも彼女
に善意だったんです。だって彼女、お金がないならここで働いて返すしかなくなるでしょ? でも、彼女にできる
められていた。 「なるほど、二人とも“私のため”に言ってくれたって
「ち、違うの! そんなつもりじゃなくて…… 私たち、ただ、もしこの子が望むなら、喜んで費用を負担するって話だったの!
はしなかった。 だが彼の目には、恩田寧寧がこの場で一切取り乱していないことがはっきりと映っていた。 たとえ服装は地味であ
タッフは、時田肇が現れた瞬間から、これはまずいと思い、人混みの後ろ
「私はまだ“帰る”とも、“会計する”とも言ってないけど?どうしてあ
手を振り始めた。 彼女はただの一介のスタッフ。こんな大物たちに囲まれては、と
た。 「わ、私じゃないんです! あの恩田お嬢
あのスタッフを何度も呪った。なんで余計なことを! 仕方なく、彼
フが私を陥れようとしてるんです、 私はそん
を差し出した。そこには、恩田菜々とのチャット履歴がしっかりと表示されている。 「ほら、
容を読み取った。 そして、表情を変えずに静かに尋ねた。 「菜々、彼女は
り、必死で言葉を探した。 「ち、違う! でたらめ言わな
決して、時田肇のもとへと歩み寄った。 「間違い
た。 「時田社長、私はただの雇われの身です。 100回生ま
その内容を一言も漏らさず確認した。 ――粹屋のスタッフが、たった20万円のために、客
。それを見届けた彼の目は、いっそう冷えた。指先はほとんど迷い
タッフに送金した履歴を表示させた。 その画面を、静かに恩田菜々の目の前に突き出す
を拭ったハンカチを無言でゴミ箱に投げ捨て、再び冷たい