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啼かない金糸雀(カナリア)

チャプター 5 啼かない金糸雀⑤ ー囚われた過去①ー

文字数:2652    |    更新日時: 09/10/2021

言い間違いでもないことを証明するために、俺は真剣な眼差しで母親を見つめる。

こと冗談でも聞けないわ。もっと他に良いお嬢さんがい

いいんだ。報告のつもりだから、

後にしようとすると、今度は俺の背中に向か

、私たちは学校で散々責められて、最後は辞めなきゃいけなくなって…蓮が女性不信にまでなって誰とも付き合えなくなって、時々うなされてるのをお母さんたちが知らないとでも思ったの? この家に生花がないのだって、香りがするものが何

が勢いに任せて言い放った言葉をすぐに後悔したような表情を見せたが、それ以上何も言えなくなって口を噤んで静かに泣いていた。そんな母親の姿を見ながら立ち尽くしてい

スで目立たない生徒だった。赴任したばかりの彼女は、よく笑う感情豊かな女性で、すぐに男子学生の間で人気になった。いつも学生の中心に居る彼女を見つめながら、

戸惑うような視線を向けられて、自分がしでかしたことを思い切り恥じた。慌てた俺は「ごめん!」とだけ言い放って、屋上から階段を駆け下りた。駆け下りていく間中耳元で、自分のものではないみたいに煩く心臓の音が鳴り響いていたし、顔は本当に火が噴き出るんじゃないかと思うくらいに熱かった。帰宅後も明日どんな顔をして会えばいいのだろうかと大いに悩んで、眠れない夜を過ごした。しかし翌朝学校へ出れば、彼女は体調不良で欠勤していた。肩透かしを食

生が見てあげるから…って動けないよね

抜けていった。予想外に近くに居る彼女の体温と、俺の肩と頭にそっと触れる手の温かみを感じてくらくらした。頭の痛みに耐えつ

ただの変態だ。くらくらはぐるぐるに変わって、頭の中ではどうすればいいかよりも、訴えられて退学するかもしれない…という危機感に支配されていた。それでも彼女の香りは相変わらずしていて、俺は今度こそ自制心を取り戻そうと、頭を振って勢いよく身

彼女の腕も、頭を包み込む首から肩も、密着している彼女の体のあちこちの、どこもかしこもが柔らかい。このまま包まれてい

の、やましい気持ちがなかったとは言えないけど、そういうつもりは全然、い

る俺は、必死にあれこれと言葉を繋いだ。すると俺の

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1 チャプター 1 啼かない金糸雀①ー衝撃的な出会いー2 チャプター 2 啼かない金糸雀②ー心を閉ざした少女ー3 チャプター 3 啼かない金糸雀③ ー秘密ー4 チャプター 4 啼かない金糸雀④ ー明かされた真実ー5 チャプター 5 啼かない金糸雀⑤ ー囚われた過去①ー6 チャプター 6 啼かない金糸雀⑥ ー囚われた過去②ー7 チャプター 7 啼かない金糸雀⑦ ー向き合う覚悟ー8 チャプター 8 啼かない金糸雀⑧ ー決意ー9 チャプター 9 啼かない金糸雀⑨ ー彼女の願いー10 チャプター 10 啼かない金糸雀⑩ ー自分を護る術(すべ)ー11 チャプター 11 啼かない金糸雀⑪ ー彼女の涙ー12 チャプター 12 啼かない金糸雀⑫ ー哀しい微笑みー13 チャプター 13 啼かない金糸雀⑬ ー欲望ー14 チャプター 14 啼かない金糸雀⑭ ー幸せな痛みー15 チャプター 15 啼かない金糸雀⑮ ー小さな勇気ー16 チャプター 16 啼かない金糸雀⑯ ー彼女の微笑みが消えた日ー17 チャプター 17 啼かない金糸雀⑰ ー諦めない心ー18 チャプター 18 啼かない金糸雀⑱ ー決別宣言と決意表明ー19 チャプター 19 啼かない金糸雀⑲ ー呪われた家ー20 チャプター 20 啼かない金糸雀⑳ ー再会ー21 チャプター 21 啼かない金糸雀㉑ ー真実ー22 チャプター 22 啼かない金糸雀㉒ ー暗闇と光ー23 チャプター 23 啼かない金糸雀㉓ ー告白ー24 チャプター 24 啼かない金糸雀㉔ ー選択ー25 チャプター 25 啼かない金糸雀㉕ ー当り前じゃない日常ー26 チャプター 26 啼かない金糸雀㉖ ー彼女の意思ー27 チャプター 27 啼かない金糸雀㉗ ー対面ー28 チャプター 28 啼かない金糸雀㉘ ー過去と未来ー29 チャプター 29 啼かない金糸雀㉙ ー未来へー30 チャプター 30 啼かない金糸雀㉚ ー嫉妬ー31 チャプター 31 啼かない金糸雀㉛ ー待ちわびた言葉ー32 チャプター 32 啼かない金糸雀㉜ ー悲痛ー33 チャプター 33 啼かない金糸雀㉝ ー深愛ー34 チャプター 34 啼かない金糸雀㉞ ー突然の訪問者ー35 チャプター 35 啼かない金糸雀㉟ ー彼女が心を許した存在ー