私の吐息を奪って
作者雪田 結梨
ジャンル恋愛
私の吐息を奪って
「こんにちは、エメット。 デビーだ」
これを聞いたエメットは、助手席に座っていたオルガをちらりと見た。 彼は咳払いをし、「こんにちは、フオ奥様 」と答えた。
案の定、この挨拶はすぐにオルガの気を引いた。
「あの、もうすぐチャールズと離婚するから、
その呼び方はやめてちょうだい」とデビーは答えた。
「ええと、それについて… 離婚はまだ決まっていないので、礼儀上、奥様として呼ぶべきです 」とエメットが言った。
デビーが「いいわ」と答えるまで、一瞬沈黙が流れた。 「ちょっと聞きしたいことがあるんだけど、 チャールズは 私の友達に怒っていないか? また私たちを追い払うような命令はあったのか?」
エメットは少し考えてから答えた。「いいえ。 フオ旦那様は オルガ・ミ様を家に送るように頼んだだけです」 そして、デビーを調査すること。
普通、フオ旦那様は誰かを憎んでいたら、 すぐにその人を追い払うように頼むだろう。 しかし、デビーに関しては、ただ調査するだけではすむのか?
もしかして、フオ旦那様は奥様に魅力され、 好きになったか?
結局のところ、すべての男性は美しい女性に抗うことはできないのだ。 奥様はメイクをしなくても綺麗だったし、 フオ様が好きになるのも当然だった。エメットはそう考えていた。
エメットの答えを聞いたデビーは、少し安心した。 「彼の会社の住所を送ってくれない?」
エメットを巻き込まないように、デビーは自分でチャールズと真剣に話をすることにした。