私の吐息を奪って
作者雪田 結梨
ジャンル恋愛
私の吐息を奪って
イヤホンのスイッチを切ると、エメットは真剣な口調で「申し訳ありません、ミさん。 これは フオ旦那様の個人的な事です。 私が話すことではありません。 もし聞きたいのなら、フオ旦那様に 自分でお尋ねください」と答えた。
フオ旦那様に ? そのようなことを聞く度胸がある訳が無い。 「そう。 わかったわ」とオルガは、冷たい口調で言った。 「覚えておくわ」 苦笑いしながら車の窓を見ていたが、明らかにエメットの反応と態度に激怒していた。 仮に彼女が尋ねる度胸があるとしても、男の妻のことを尋ねるのは馬鹿げているとしか思えない。 しかも、それはただの男ではなく フオ旦那なのだ。
次の日、エメットはチャールズのオフィスに数枚の紙を持ってやってきた。その中にはデビーの大学願書と簡単なプロフィールが入っていた。
そのプロフィールには、年齢、大学、趣味などの基本的な情報が書かれていた。 それをチャールズの机に置き、エメットは数歩下がってボスの返事を待った。
机から書類を拾い上げ、チャールズはそれに目を通すと、突然それを空中に放り投げ、エメットを驚かせた。 彼は不満そうにエメットを見て、彼の声がオフィス中に響き渡った。 「これがお前ができることすべてか? 最近、お前を甘やかしすぎたか?」
その不機嫌な口調に、エメットの心臓は激しく鼓動した。 エメットは冷静さと落ち着きを保ちながら、身をかがめて紙を拾い深呼吸をした。 すると、彼は「フオ旦那様、 この少女は謎に包まれています。 私が収集できた情報はこれがすべてです」 エメットは嘘をついた。 実際には、残りの書類をシュレッダーにかけて処分していた。
「失せろ!」 チャールズはそう命じた。 「今すぐにだ!」