彼に見捨てられたオメガ:国王との再起

彼に見捨てられたオメガ:国王との再起

中原愛

5.0
コメント
クリック
21

七年間、私はアルファである黒木魁(くろきかい)に拒絶された「運命の番(つがい)」だった。 けれど、彼が私を求めたことは一度もなかった。彼が欲したのは、幼馴染である一条莉央(いちじょうりお)ただ一人。 莉央が高価なネックレスを盗んだと私に濡れ衣を着せた時、魁は一瞬たりともためらわなかった。 「汚らわしいオメガめ」と彼は吐き捨てた。「お前には、彼女の靴の泥を舐める価値すらない」 そして彼は衛兵に命じ、私に銀の手錠をかけさせ、地下牢へと引きずっていった。その間ずっと、莉央は彼の腕の中で嘘泣きを続けていた。 連行される途中、彼が一瞬顔をしかめるのが見えた。断ち切られた絆の痛みが、一瞬だけ彼の顔をよぎったのだ。 だが、彼は何もしなかった。その瞬間、七年間抱き続けた愚かな希望が、ついに完全に死んだ。 翌日、母が私を保釈してくれた後、羽田空港でライバル組織のアルファに声をかけられた。 彼は私に、彼の組織の首席戦略顧問の地位を提示した。目的は一つ、魁の帝国を破壊すること。 私は、一秒も考えずにそれを受け入れた。

彼に見捨てられたオメガ:国王との再起 第1章

七年間、私はアルファである黒木魁(くろきかい)に拒絶された「運命の番(つがい)」だった。

けれど、彼が私を求めたことは一度もなかった。彼が欲したのは、幼馴染である一条莉央(いちじょうりお)ただ一人。

莉央が高価なネックレスを盗んだと私に濡れ衣を着せた時、魁は一瞬たりともためらわなかった。

「汚らわしいオメガめ」と彼は吐き捨てた。「お前には、彼女の靴の泥を舐める価値すらない」

そして彼は衛兵に命じ、私に銀の手錠をかけさせ、地下牢へと引きずっていった。その間ずっと、莉央は彼の腕の中で嘘泣きを続けていた。

連行される途中、彼が一瞬顔をしかめるのが見えた。断ち切られた絆の痛みが、一瞬だけ彼の顔をよぎったのだ。

だが、彼は何もしなかった。その瞬間、七年間抱き続けた愚かな希望が、ついに完全に死んだ。

翌日、母が私を保釈してくれた後、羽田空港でライバル組織のアルファに声をかけられた。

彼は私に、彼の組織の首席戦略顧問の地位を提示した。目的は一つ、魁の帝国を破壊すること。

私は、一秒も考えずにそれを受け入れた。

第1章

紗良(さら)side:

そのメッセージは、冷たく鋭く、私の心に刻み込まれた。声ではない。魂に押された、公式な終焉の烙印のような感覚だった。

「長老会は、月の女神が『番(つがい)』の断絶を見届けたことを、ここに正式に確認する。アルファ黒木魁とオメガ月城紗良との間に設けられた七年間の観察期間は終了した。汝の『ルナ』たる資格は、永久に無効とする」

私は、黒月組(こくげつぐみ)の年次祝賀会が開かれている大広間の片隅、その影の中に立っていた。クリスタルのシャンデリアが放つ光が、まるで私を嘲笑うかのようにきらめいている。私が片付けるべき空のシャンパングラスを乗せたトレイを、指が強く握りしめていた。

部屋の向こうでは、一条莉央が皆の注目の的だった。彼女の笑い声が、ガラスの鈴のように響き渡る。表向きは最近のビジネスでの成功を祝うパーティーだが、本当の祝賀が何なのかは誰もが知っていた。私の、最終的で公式な降格。

「見てよ、あの子」莉央の取り巻きの一人が、嘲るように囁いた。現実世界では囁き声でも、組の共有精神領域(パック・リンク)では叫び声のように響く。「まだ自分がここの一員だと思い込んでる」

莉央の、明るくも残酷な瞳が私を捉えた。彼女はシルクのドレスをまとった捕食者のように、優雅にこちらへ滑るようにやって来た。

「紗良、あなた」と、彼女は猫なで声で言った。その声には偽りの同情が滲んでいる。「まだそんなに一生懸命働いてるのね。疲れたでしょう。でも、あなたみたいな種族には、それがお似合いよ」

彼女は私の質素な使用人の制服を、侮蔑するように目で示した。「本当に残念だわ。あなたのお母様、昔は優秀なヒーラーだったのに…まあ、ご存知の通りだけど」彼女はにやりと笑った。「少なくとも、彼女は組の皆が必要としていることを聞き取れたものね。耳の聞こえないヒーラーなんて。なんて悲劇的な無駄遣い。それに、あの欠陥のある血が、これ以上受け継がれないといいんだけど」

私の胸の奥で、低い唸り声が響いた。何年も出していなかった音。母のことだ。私を侮辱し、貶めるのはいい。だが、母だけは、越えてはならない一線だった。

「やめて」私は言った。使っていなかったせいで、声がかすれていた。「母のことを、そんな風に言わないで」

「言ったらどうなるの?」莉央は笑った。通りかかったトレイから赤ワインのグラスを手に取る。「ちっぽけなオメガが噛み付くのかしら?」

私は彼女を押した。強くはない。ただ、彼女が一歩後ずさる程度に。それは愚かで、衝動的な行為だった。オメガが、地位の高いベータに手を上げるなど、決してあってはならないことだった。

莉央の目は芝居がかった驚きに見開かれ、そして純粋な悪意に細められた。手首を軽く振るうと、彼女はグラスの中身を私に浴びせかけた。

灼熱の激痛が頬を走り、首筋を伝った。ただのワインではない。すぐに匂いでわかった――銀の、鼻をつく焼けるような香り。ほんの数粒。人狼の肌に耐え難い痛みと醜い水ぶくれを作るには十分だが、命を奪うほどではない量。

周りから息を呑む音が響いた。私は顔を押さえた。火傷が、白く燃えるような苦痛となって広がっていく。

「これはどういう意味だ?」

その声は、鞭の一撃のように騒音を切り裂いた。深く、響き渡り、私を含め、その場にいた全ての人狼を凍りつかせる権威に満ちていた。アルファ・コマンド。

アルファ黒木魁がそこに立っていた。その威圧的な体躯は、力と怒りを放っている。嵐の空の色をした彼の瞳が、この光景に釘付けになっていた。

「莉央!」彼が唸った。

莉央の顔は、すぐに崩れた。「魁!彼女が私を押したの!この…このオメガが、私を襲ったのよ!」

「彼女は俺が拒絶した『番』だ」魁の声は、危険なほど低かった。「だが、今も俺の庇護下にある。お前が傷つけることは許さん」

莉央の目に涙が浮かんだ。「あなたの庇護?七年間よ、魁!七年間も、あなたはこの子をここに置いて、あなたの絆を絶えず思い出させてきた。私に嫉妬させて、私が何を失ったか気づかせるためだって、あなたは言ったじゃない!」

魁の顎が引き締まった。彼は一歩前に出て、私の水ぶくれになった肌を一瞥し、再び莉央に視線を戻した。彼の頬の筋肉がぴくりと動く。

「それで、お前はこう思ったのか」彼の声から、突然すべての温かみが消え去った。「俺がお前を、永遠に待っているとでも?」

彼は私の腕を掴んだ。その感触は、お馴染みの、しかし苦痛に満ちた衝撃を私に与えた――私たちの壊れた絆の亡霊。彼は私を呆然と見つめる群衆から引き離し、その固い握力でボールルームから連れ出した。

彼の車の、殺風景な静寂の中、革の匂いと、彼自身の力強いオーラ――雷雨の後の森のような――が私の肺を満たした。彼は車の救急箱から滅菌シートを取り出し、私の頬に当てた。私はびくりと身をすくめた。

「動くな」彼は命じた。声は先ほどより柔らかい。彼は傷の手当てを終えると、その表情は読み取れなかった。

彼はシートを脇に投げ捨て、エンジンをかけた。「莉央のことはすまなかった」彼は私を見ずに言った。「俺が対処しておく」

私は何も言わなかった。

彼は数分間、沈黙の中で車を走らせた。街の灯りが窓の外を流れていく。そして、彼は再び口を開いた。その声には奇妙な響きがあった。「今気づいた…今日は記念日だな」

記念日。私たちが初めて出会った日。私たちの狼がお互いを認識した日。彼が私を嫌悪の目で見つめ、私の世界を粉々にする言葉を口にした日。彼が私を拒絶した日。

「何か買ってやる」彼は言った。まるでそれが全てを解決できるかのように。「埋め合わせだ」

私はようやく彼の方を向いた。私の顔は、感じていない冷静さの仮面をまとっていた。「あの日が、私にとって意味のある日だったことなど、もうありません、アルファ」

驚きか、それとも苛立ちか――何かが彼の顔をよぎった。彼が何かを言う前に、甘ったるくまとわりつくような声が私の心に侵入してきた。それは彼に向けられたもので、私たちの絆の残骸が、まだその反響を感じさせていた。

「魁、お願い、迎えに来て。暗いのが怖いの。知ってるでしょ」

莉央だった。もちろん、彼女だ。

続きを見る

中原愛のその他の作品

もっと見る
アルファに拒絶されたルナ・敵の子を身籠って

アルファに拒絶されたルナ・敵の子を身籠って

人狼

5.0

私の運命の番、アルファの海斗は、私のすべてになるはずだった。 でも、彼の瞳に映っていたのは、私じゃない。 彼の人生に現れたもう一人の女、由良の代用品でしかなかった。 由良が「はぐれ者」に襲われ、忌まわしい子を身ごもったと嘘の主張をしたとき、海斗は選択をした。 彼は私に命じた。 長老会に行って、汚されたのは自分だと告げろ、と。 彼は私に命じた。 由良の子を、自分の子として受け入れろ、と。 そして、私たちが授かった子の妊娠に気づいたとき、彼は最後の命令を下した。 治癒師のところへ行き、その子を始末しろ、と。 私たちの子供は、由良に過度のストレスを与えるだろう、と彼は言った。 彼は、二人だけの思念リンクで彼女に甘い慰めの言葉を送りながら、私には私たちの赤ん坊を殺せと命じた。 私は彼の都合のいい道具。 彼女は守られるべき宝物。 でも、彼の母親が私を銀で裏打ちされた牢に閉じ込め、私が流した血の海の中で私たちの子供を流産させたとき、私の愛の最後の欠片は灰と化した。 心も体も壊れ、空っぽになった私は、最後の力を振り絞り、幼い頃以来使ったことのない遠吠えを放った。 それは、私の家族――白牙一族の王家へ、その姫を迎えに来いと告げる、神聖な呼び声だった。

鳳凰の復讐

鳳凰の復讐

恋愛

5.0

北海道から上京してきた、世間知らずの美大生だった私。東京の不動産王、一条蓮に、身も心も奪われた。 秘密の関係は、火花が散るように激しかった。彼は私のすべてをカメラに収めながら、ささやいた。「俺たちだけのものだ」と。 でも、真実が私の世界を粉々に破壊した。 蓮が、私たちの関係すべてが計算ずくの嘘だったと告白するのを、聞いてしまったのだ。 私を、そしてあの写真を、義理の兄が立ち上げたIT帝国を潰すための「ネタ」として利用する計画だった。 私の信頼を勝ち取るために、自作自演の強盗事件まで仕組んでいたなんて。 優しい仕草も、守ってくれるような素振りも、すべてが残酷な芝居だった。 彼の金色のペントハウスは、いつしか金色の鳥籠に変わっていた。 私を支配するためなら、身体的な危害を加えることさえ厭わない。彼の策略はどんどんエスカレートしていった。 私は、自分が参加していることさえ知らなかったゲームの、ただの駒だった。 どうして、こんなにも盲目だったんだろう? 屈辱が燃え盛る。でも、その炎は氷のような怒りを呼び覚ました。 あのケダモノが私の信頼を食い物にし、私の愛を、たった一人の家族に向ける武器に変えたのだ。 でも、蓮は私を甘く見ていた。 私はもう、ただの被害者じゃない。私は烈火だ。 私は冷静に、全ての証拠を消去し、完璧な逃亡計画を立てた。 彼は日本中を追いかけてきた。壊れた男が、慈悲を乞いながら。 でも、彼が見つけたのは…私だった。 バージンロードを歩く、私。 本当に私を愛してくれる男性のもとへ向かう、私を。 彼の世界が崩れ落ちるのを見届けること。彼の破滅を仕組んだのが私だと知らしめること。 それが、最高の復讐だった。

おすすめ

望まれない番は秘密の白狼

望まれない番は秘密の白狼

桜庭柚希

十年もの間、私は力なきオメガとして生きてきた。唯一の喜びは、聡明な娘、美月の存在だけ。一族の敵から彼女を守るため、私は自身の本当の姿――強大な力を持つ白狼――を封印した。美月が誰もが羨む国際超常存在評議会でのインターンシップを勝ち取った時、私たちの静かな生活はようやく安泰だと思った。 だが、その一週間後。私は学校の片隅で、ぐったりと倒れている娘を見つけた。彼女の肌を焼く銀のロープで、手足を縛られて。彼女の夢は、私たちの一族のアルファの娘、麗奈によって無残に引き裂かれようとしていた。 「この雑魚が、私の席を奪えると思ったわけ?」 麗奈は嘲笑う。 「アルファである父様が、私のために確保してくださったインターンの席をね」 私の世界は、音を立てて崩れ落ちた。そのアルファとは、私の夫、蓮――十年来の運命の番。聖なる絆を通じて彼に助けを求めたが、彼は甘い嘘で私のパニックをあしらった。麗奈たちが私たちの子供を遊び半分に拷問しているのを、ただ見ているというのに。 決定的な裏切りは、彼の愛人、亜矢子が「アルファの番」のカード――蓮が彼女に与えた「私」のカード――を見せびらかした時に訪れた。彼は現れるや否や、皆の前で私のことなど知らないと言い放った。その罪は、私たちの絆を粉々に砕け散らせた。彼は私を侵入者と呼び、配下の戦士たちに罰を与えるよう命じた。彼らが私を膝まずかせ、銀で打ち据える間、彼はただそこに立って見ていた。 だが、彼らは皆、私を侮っていた。私が娘に渡した護り石のことも、そこに秘められた古の力のことも知らなかった。最後の一撃が振り下ろされた時、私は隠された通信経路である名前を囁き、一族が数世代前に交わした誓約を発動させた。数秒後、軍用ヘリが建物を包囲し、最高評議会直属護衛隊が部屋になだれ込み、私に頭を垂れた。 「ルナ・葉月様」 隊長が宣言した。 「最高評議会直属護衛隊、ただいま馳せ参じました」

ベータに振られたので、彼の王を奪い取った。

ベータに振られたので、彼の王を奪い取った。

灰原 燐

私は、番いの儀式の祭壇に立っていた。隣には、この群れのベータである蓮(れん)がいる。そして、絶対的権力者であるアルファの王、大雅(たいが)様が、私たちを見据えている。 しかし、儀式が始まろうとしたその瞬間、蓮は私を祭壇に置き去りにした。彼が保護したという、か弱い野良の女、真理奈(まりな)のために、森へと走り去ってしまったのだ。 私はたった一人、屈辱に耐えるしかなかった。その時、幹部用の公的な思念会話チャンネルを通じて、全ての者の耳にメッセージが届いた。蓮からだった。真理奈が自殺を図り、そばを離れられない、と。 それどころか彼は、この「騒ぎ」について、私の口からアルファの王に謝罪しろと命じてきたのだ。 六年間愛し、昨夜も永遠を誓ってくれた男が、嘘のために私の誇りを売り渡した。大陸中の笑いものにされたのだ。 その夜、すすきののバーで悲しみに溺れていた私は、アルファの王その人と鉢合わせした。ウイスキーと失恋に煽られ、私は無謀な提案をした。 「彼はもう、私をいらないって。……アルファ様、今夜、私が欲しいですか?」 驚いたことに、彼は頷いた。そして彼の腕の中で、私は衝撃的な真実を知る。アルファの王、元婚約者の叔父こそが、私の「運命の番」だったのだ。私の復讐が、今、始まった。

すぐ読みます
本をダウンロード
彼に見捨てられたオメガ:国王との再起 彼に見捨てられたオメガ:国王との再起 中原愛 恋愛
“七年間、私はアルファである黒木魁(くろきかい)に拒絶された「運命の番(つがい)」だった。 けれど、彼が私を求めたことは一度もなかった。彼が欲したのは、幼馴染である一条莉央(いちじょうりお)ただ一人。 莉央が高価なネックレスを盗んだと私に濡れ衣を着せた時、魁は一瞬たりともためらわなかった。 「汚らわしいオメガめ」と彼は吐き捨てた。「お前には、彼女の靴の泥を舐める価値すらない」 そして彼は衛兵に命じ、私に銀の手錠をかけさせ、地下牢へと引きずっていった。その間ずっと、莉央は彼の腕の中で嘘泣きを続けていた。 連行される途中、彼が一瞬顔をしかめるのが見えた。断ち切られた絆の痛みが、一瞬だけ彼の顔をよぎったのだ。 だが、彼は何もしなかった。その瞬間、七年間抱き続けた愚かな希望が、ついに完全に死んだ。 翌日、母が私を保釈してくれた後、羽田空港でライバル組織のアルファに声をかけられた。 彼は私に、彼の組織の首席戦略顧問の地位を提示した。目的は一つ、魁の帝国を破壊すること。 私は、一秒も考えずにそれを受け入れた。”
1

第1章

29/10/2025

2

第2章

29/10/2025

3

第3章

29/10/2025

4

第4章

29/10/2025

5

第5章

29/10/2025

6

第6章

29/10/2025

7

第7章

29/10/2025

8

第8章

29/10/2025

9

第9章

29/10/2025

10

第10章

29/10/2025

11

第11章

29/10/2025

12

第12章

29/10/2025

13

第13章

29/10/2025

14

第14章

29/10/2025

15

第15章

29/10/2025

16

第16章

29/10/2025

17

第17章

29/10/2025

18

第18章

29/10/2025

19

第19章

29/10/2025

20

第20章

29/10/2025

21

第21章

29/10/2025