Login to 蒼海本棚
icon 0
icon チャージ
rightIcon
icon 閲覧履歴
rightIcon
icon ログアウトします
rightIcon
icon 検索
rightIcon
ゲームのような新世界~王道の通り冒険者で食っていこう~

ゲームのような新世界~王道の通り冒険者で食っていこう~

てんねんはまち

5.0
コメント
97
クリック
22

アルファテスターを募集していたゲームに当選。 驚くようなテクスチャやリアリティに圧倒されるも、いつまで経ってもベータテストの情報も出ず、スレッドも大して盛り上がらないという違和感に包まれていた。 そんなアルファテストから1年、物語は動き始める―― 小説家になろう、カクヨム、ノベルアップでも掲載しています。

チャプター 1 第1話

「マジか……」

 パソコンの前で俺はそうポツりと呟き、しばらく画面の前で硬直していた。

 画面に表示されているのは一通のメール。

 今回は"new world"クローズドアルファテストに応募していただきありがとうございます。

 この度、当選いたしましたので参加する際に必要なプロダクトキーを添付いたします。期限内にご入力いただけなかった場合、無効となりますのでご注意ください。

 VRMMOゲームのテスター当選のメールだ。

 アルファテストという事もあり、バグもかなり多いと思われるが、公開されている動画からテクスチャの品質や操作性をはじめとするゲームの基礎的な部分で期待できそうな作品だ。

 それ故にアルファテスト希望者は非常に多かったらしく、正直通るとは思っていなかったところだ。

 早速キーを入力してゴーグルをつける。

 ゲームを起動すると、まず現れたのはキャラクリエイトの画面だ。

 様々な派閥があるが、俺は自キャラの性別は男にするタイプだ。せめてゲームの中でくらいはイケメンでいたいという悲しい理由ではあるが、ゲームが楽しければ何でもいいという考えだ。

 とは言っても、デフォルトのプリセットから少しだけいじる程度のものだ。

 髪を黒色にし、瞳の色を青色へと変更する。体つきは筋肉質にし、だからと言って外見は普通な程度に調整する。

 基本的に俺のキャラクリはこの程度だ。

 そして、キャラの名前を設定する。

「ん……?」

 ゲームスタートのタイミングで何か違和感を感じたが、アルファテスト特有のバグか何かだろう。

 読み込みが終わり、不意に目の前が眩しく照らされる。

 目の前に広がるのは平原。まるで実写のように草1本1本が揺らめいており、実際に風を浴びているかのように思えるリアリティのあるサウンドに圧倒される。

「他のプレイヤーは……見た感じいないか」

 見回してみるとすぐ近くに塀のようなものが見え、その長さから村ではないかと推測できた。

「やあやあ! 君がだね?」

「うおっ!?」

 俺の目の前を高速で光の玉が横切ったかと思うと、どこからともなく活発そうな女の子の声が聞こえてきた。

「君のガイドを務めさせてもらうアテナちゃんだよ!」

「アテナって……あのギリシャ神話の?」

「そうそう! よく知ってるね!」

 アテナを自称する光の玉は、まるで喜んでいるかのようにブンブンと上下に揺れている。

 どうやらテンション高めの子らしく、俺が口を挟む間もなく言葉を繋げる。

「チュートリアルを説明するね! まず装備だけど最低限のものだけはもう自宅のチェストに入ってるから、まずは自宅に行こう!」

「マップの開き方とかは――」

 そこまで口にして違和感に気付く。

 まるで俺がこの世界で今まで生きてきたかのごとく、この辺りの地理が理解できている。あの柵の向こうには村があり、門から入って少ししたところに自宅がある。その周辺には雑貨屋や鍛冶屋もある非常に便利な立地の家だ。

 さらにもう一つ違和感がある。このアテナという玉は恐らくNPCであるはずだ。

 それなのに、マイク機能がデフォルトでオンになっているのはまだしも、選択肢によるものでもなく、ここまで自然に会話できているというのは革新的すぎるという事だ。

「ポーチの中にマップが入っているだろうから、それを見れば大丈夫だよ――おーい?」

「ああ……いや、何でもない」

 今俺が使っているVRの環境は最新鋭の物だ。体を固定し、専用の靴を使う事で非常に滑る床の上を歩いて移動することが出来る。さらにコントローラーはグローブ状のもので、物を持つとロックがかかり、実際に持っているような抵抗を感じることが出来るという優れものだ。

 しかし、頭の中に直接情報を送るような機能はなかったはずだ。

「行こー!」

「まあ……いいか」

 恐らくこれはデジャヴと呼ばれるものだろう。まるで過去に同じような事があったように感じる現象のことだ。

「今から行くよ」

 それにしてもよく出来たゲームだ、アルファテストとは思えないほど動作は安定しており、それでいてテクスチャが抜けているというようなこともない。

 衛兵が立つ門を抜け、村の中へと入ろうとしたその時だ。

「――――?」

「……なんて?」

 衛兵が何か話したようだが、その言語は少なくとも日本語ではないように思えた。

「――――」

「ま……いいか」

 適当に笑って返しつつ、何語なのかを推測してみる。

 ネットでよく耳にするのは中国語、韓国語、英語の3つが多い。しかし、先ほど耳にした言葉はそのどれとも違うような発音だったように感じる。

「なあアテナ、あれって何語だ?」

「んー、新世界語?」

「もう少し捻った答えが欲しかった」

「あはは、まだアルファテストだし、翻訳が間に合ってないんだよね」

 少し沈み込み、いかにもしゅんとしている。

 こういう時に何と声をかけるのがいいか、引きこもりがちな俺には分からない。NPCとは言えここまで普通に会話出来てしまうと申し訳なさを感じてしまう。

 そんな流れを変えるためにも俺は急ぎ足で自宅へと入り、中を見回してみると中々立派な一軒家だ。

 エアコンやパソコンは無いものの、落ち着いた木目に冬用の暖炉がいかにもな雰囲気を醸し出している。

「さて……ここが我が家か」

「そうそう! アイテムボックスはこっちね!」

 アテナは元気を取り戻したようで、アイテムボックスのある方へとスイスイと進んでいく。

アイテムボックスに入っていたのは申し訳程度の防御力のあるレザーアーマーに、剣や斧、槍や弓といったオーソドックスなものから銃というファンタジーには似つかわしくないものまで入っていた。

「銃か……」

「この世界の銃はどっちかというと魔法武器だね。装薬が魔力で計算されるイメージかな!」

「随分とメタい事言うヤツだなあ」

「ま……世界観的にも俺は剣で行ってみるさ」

「何本か持って行って試すのもありだよ、まあ戦闘なんかしなくてもいい世界だし、好きにしてみるのがいいさ!」

 ポーチにはとても槍や斧といった物は入りそうではなかったが、重さのステータスが武器を含めたアイテムに割り振られており、ポーチの容量が満杯になるまではサイズ不問で押し込めるようだ。

 とりあえず剣と刀とダガー、そして銃をポーチにしまい、一度ログアウトすることにした。

続きを見る

おすすめ

新しい始まり

新しい始まり

恋愛

5.0

エデン・マクブライドは、いつも規則ばかり守ってきた。しかし、結婚式の1ヶ月前に婚約者に裏切られたことを機に、エデンはルールに従うことをやめた。傷ついた彼女に、セラピストはリバウンドとして、新しい恋を始めることをすすめた。そしてそれが今の彼女にとって必要なことだとか。ロックユニオンで最大の物流会社の後継者であるリアム・アンダーソンは、まさに完璧なリバウンド相手である。同じ女性と3ヶ月以上付き合ったことがないことから、大衆紙に「3ヶ月王子」と呼ばれているリアムは、エデンとワンナイトラブを経験しても、彼女が自分にとってセフレ以上の存在になるとは思っていなかった。しかし目覚めたとき、お気に入りのデニムシャツと一緒に彼女がいなくなっているのを見て、リアムは苛立ちを感じながらも、妙に興味をそそられた。喜んで彼のベッドを離れた女性も、彼から何かを盗んだ女性も、今の今までいやしなかった。だがエデンはその両方をしたのだ。彼は彼女を見つけ出し、必ずその説明をさせると心に決めた。しかし、500万人以上の人口を抱えるこの街で、一人の人間を見つけることは、宝くじに当たるのと同じくらい不可能なことだった。しかし二年後、やっと運命の再会が迎えられたとき、エデンはもはやリアムのベッドに飛び込んだときのような純真な少女ではなく、今では何としても守らなければならない秘密もできていたようだ。一方、リアムはエデンが自分から盗んだものーーもちろん、デニムシャツだけではないーーをすべて取り戻そうと決意した。

舞台の女神さま!

舞台の女神さま!

恋愛

5.0

主人公の松本梓〈高校1年〉は出来たばかりの演劇部に所属しており主役をこなしていたため常に生徒からの憧れ的な存在だった。 そんなさいたま学院で毎月自主公演を行うたびにファンクラブができるほどのスター的な存在だ。 だがそんな彼女にも大きな悩みがあった。それは過去に壮絶ないじめを受けて男性に触ることもできない恐怖症と同性愛だ。過去のトラウマから誰にも相談できずに一人で悩み苦しんでいた そんな梓の事を独占しようとするさいたま学院の生徒会長、城ケ崎茜〈高校2年〉に目を付けられ、禁断の関係を求められる。 しかし茜の父親は大手銀行の社長で学院に多額の融資をしており、更に梓の父親は銀行の営業部長でもある。弱みを握られている梓は茜には逆らえず、演劇部の活動の為にいつも気持ちを殺して〈偽りの愛〉を受け入れていた。 そんな中、10月に行われる全国高等学校演劇大会の地区予選の案内が発表された。 かつて梓が小学4年の時にいじめ問題を解決するために奮闘した、小学校時代の恩師でもあり、恋心を抱いていた青井春香先生はさいたま学院演劇部のエースで全国制覇を有望視されていたほどだった。 梓が所属するさいたま学院演劇部は1年前に設立された部だが、かつて全国大会に出場するほどの強豪校だった。だがある一人の部員が起こしてしまった傷害事件のせいで全国大会辞退を迫られた過去がある。 更によき理解者の春香先生は梓をイジメていた生徒へ手をあげてしまったせいでPTAや学校から精神的に追い込まれて自殺をしてしまった。 遂に地区大会へ始動しようと動き出す弱小演劇部だったが肝心の脚本を書く人材がいなかった。 そんなある日、同じクラスに春香先生に似ている女子生徒でラノベコンテストの新人賞を受賞した妹の〈青井美咲〉が転校をしてきたため運命的な出会いを果たす事が出来、皆が全国大会出場を目標に動き出そうとした時に茜率いる生徒会による陰謀が動き出したのだった。

すぐ読みます
本をダウンロード