愛のない結婚を捨てて、私は新しい夢へ羽ばたく

愛のない結婚を捨てて、私は新しい夢へ羽ばたく

月城ルーナ

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五年前、私は車から夫の浩一を庇って跳ねられ、ダンサーの夢を絶たれた。彼は責任を取ると言って私と結婚した。 しかし結婚五周年の夜、彼が初恋の女を家に連れ込み、浮気しているのを知ってしまった。 さらに後日、彼の友人たちとの会食の席で、私の足の障害が下品に嘲笑されているのを障子越しに聞いてしまう。 「結局なんで結婚したわけ?愛とかじゃないんだろ?」 「借りがあるんだよ、結局。あいつには」 五年間の結婚生活は、彼にとってただの負債の返済に過ぎなかったのだ。 私が捧げてきた愛は一体何だったのだろう。彼にとって、私はただの疎ましい重荷でしかなかったのか。 私は過去の幻想を捨て去り、自分の人生を取り戻す決意をした。密かに海外大学院への留学準備を進め、彼に離婚協議書を突きつけた。

愛のない結婚を捨てて、私は新しい夢へ羽ばたく 第1章 婚約記念日の鎮魂歌

「お帰りなさい、浩一さん。お食事……」

「いらない。外で済ませてきた」

泉美の言葉は無情に遮られた。夫の岩根浩一は彼女の横を通り過ぎ、クローゼットから着替えを取り出すと、そのままバスルームへと向かった。まるで泉美など、初めからそこに存在しないかのように。

五年前の今日。事故で足に後遺症を負った自分に、浩一が「責任を取る」と言ってくれた日。それが、彼からのプロポーズだった。

時刻は午後11時50分。記念日が終わるまで、あと10分。

テーブルの上には、泉美が腕によりをかけて作った料理が、まるで彼女を嘲笑うかのように、ほとんど手つかずのまま残されていた。

「疲れた。お前も早く休め」

浩一の声が、彼女の思考を引き戻した。バスルームのドアが閉まる直前、泉美は見てしまった。彼のシャツの襟元に、見覚えのない口紅がかすかに付着しているのを。

心臓が氷水に浸されたように冷たくなる。

震える手でドアノブに触れようとして、寸前で止めた。何を言えるというのだろう。この五年間、一度も夫婦の営みはなかったのだ。

力なくその場に崩れ落ちそうになり、壁に手をついて身体を支える。左足の古傷が、ずきりと痛んだ。

バスルームの中からシャワーの音が聞こえてくる。泉美はただ、その音を茫然と聞いていた。

やがてシャワーの音が止み、静寂が訪れる。泉美が寝室に戻ろうとした、その時だった。

ドアの隙間から、押し殺したような男の吐息と喘ぎ声が漏れ聞こえてきた。

泉美の足が床に縫い付けられる。

それは間違いなく、浩一の声だった。しかしその声には、泉美が一度も向けられたことのない熱がこもっていた。

(疲れたと言ったのに、なぜ浴室でそんなことを?)

心臓が嫌な音を立てて脈打つ。聞きたくない。でも、耳を塞ぐことができない。

そして、決定的な一言が彼女の耳を貫いた。

「春美……ああ、春美……」

有馬春美。浩一の初恋の相手。彼の心の中にずっと棲み続けている女。

泉美の世界が、音を立てて崩れ落ちていく。足元から力が抜け、彼女は廊下に座り込んだ。涙は出なかった。あまりの絶望に、感情さえも麻痺していた。

どれほどの時間が流れただろうか。バスルームのドアが開き、バスローブ姿の浩一が出てきた。

彼は廊下に座り込んでいる泉美を見下ろし、眉をひそめた。

「何をしている。気味が悪い」

浩一は泉美を助け起こそうともせず、彼女をまたいで寝室へと入っていく。

ベッドに入った浩一は、何事もなかったかのようにすぐに寝息を立て始めた。

泉美はゆっくりと立ち上がり、彼の寝顔を見下ろした。この5年間、自分が捧げてきたものは一体何だったのだろうか。

彼女は静かに寝室を出て、ゲストルームへと向かった。

夜が明ける頃、浩一がゲストルームのドアを開けた。

「いつまで拗ねているんだ」

不機嫌そうな声だった。彼はベッドに近づき、泉美の身体に手を伸ばす。その手つきには、義務感だけが滲んでいた。

泉美は氷のように冷たい声で言った。

「触らないで」

浩一の手が驚きに固まる。泉美が彼を拒絶したのは、これが初めてだった。

泉美はゆっくりと身体を起こし、感情の抜け落ちた瞳で浩一を見つめ返した。

「汚らわしい」

浩一の顔が屈辱に歪む。

「泉美、お前……」

泉美は彼から視線を外し、窓の外に広がる朝焼けに目を向けた。彼女の心の中で、何かが決定的に終わりを告げていた。

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愛のない結婚を捨てて、私は新しい夢へ羽ばたく 愛のない結婚を捨てて、私は新しい夢へ羽ばたく 月城ルーナ 都市
“五年前、私は車から夫の浩一を庇って跳ねられ、ダンサーの夢を絶たれた。彼は責任を取ると言って私と結婚した。 しかし結婚五周年の夜、彼が初恋の女を家に連れ込み、浮気しているのを知ってしまった。 さらに後日、彼の友人たちとの会食の席で、私の足の障害が下品に嘲笑されているのを障子越しに聞いてしまう。 「結局なんで結婚したわけ?愛とかじゃないんだろ?」 「借りがあるんだよ、結局。あいつには」 五年間の結婚生活は、彼にとってただの負債の返済に過ぎなかったのだ。 私が捧げてきた愛は一体何だったのだろう。彼にとって、私はただの疎ましい重荷でしかなかったのか。 私は過去の幻想を捨て去り、自分の人生を取り戻す決意をした。密かに海外大学院への留学準備を進め、彼に離婚協議書を突きつけた。”
1

第1章 婚約記念日の鎮魂歌

今日18:17

2

第2章 過去の傷と未来への切符

今日18:16

3

第3章 色褪せた献身と新たな誓い

今日18:16

4

第4章 嘲笑のシンフォニー

今日18:16

5

第5章 偽りの仮面と氷の微笑

今日18:16

6

第6章 最後の庇護と決別の夜

今日18:16

7

第7章 分かたれた道と再生の誓い

今日18:16

8

第8章 足枷と翼

今日18:16

9

第9章 希望の光と迫りくる影

今日18:16

10

第10章 さようなら私の愛した人

今日18:16