婚約破棄された私とIT社長の愛

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ふわ森りんご

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入籍当日, 市役所で待つ私に届いたのは「妹が寂しがっているから行けない」という婚約者からの連絡だった. 私が心血を注いでリノベした新居のタワマンは, 「ストーカー被害」を自作自演する義妹に奪われ, 抗議すれば「たかがマンションだろ」と冷笑された. 都合のいい女扱いに見切りをつけた私は, 即座に彼を捨て, 私を長年想い続けてくれたIT社長の幼馴染と結婚することにした. 元婚約者が「やっぱりお前しかいない」と泣きついてきたのは, 義妹の嘘がバレて一文無しになり, 事故で右腕を失った後のことだった. 「今さら何を言っているの? 私の夫は, 私のために命がけで薬を探してくれるような人よ」 私は愛する夫と双子の子供たちに囲まれ, 廃人のように崩れ落ちる彼を冷ややかに見下ろした.

婚約破棄された私とIT社長の愛 第1章

入籍当日, 市役所で待つ私に届いたのは「妹が寂しがっているから行けない」という婚約者からの連絡だった.

私が心血を注いでリノベした新居のタワマンは, 「ストーカー被害」を自作自演する義妹に奪われ, 抗議すれば「たかがマンションだろ」と冷笑された.

都合のいい女扱いに見切りをつけた私は, 即座に彼を捨て, 私を長年想い続けてくれたIT社長の幼馴染と結婚することにした.

元婚約者が「やっぱりお前しかいない」と泣きついてきたのは, 義妹の嘘がバレて一文無しになり, 事故で右腕を失った後のことだった.

「今さら何を言っているの? 私の夫は, 私のために命がけで薬を探してくれるような人よ」

私は愛する夫と双子の子供たちに囲まれ, 廃人のように崩れ落ちる彼を冷ややかに見下ろした.

第1章

藤巻光恵 POV:

入籍予定だったあの日に, 正弘は私の前から消えた. 萌葉が「寂しいから」と泣きついた, そのたった一言のために.

市役所の前で, 私は正弘を待っていた. 白いワンピースを着て, 指輪をはめた左手を何度も確かめる. 今日は, 私たちの新しい人生が始まる日だった. 長年付き合って, 婚約もして, ようやくこの日を迎える. 胸が高鳴っていた.

その時, スマホが震えた. 正弘からだ.

「ごめん, みっちゃん. 今, 萌葉が大変なんだ. ちょっとトラブルがあって, すぐに行かないと」

私の心臓が, きゅっと締め付けられた.

萌葉の「些細なトラブル」という言葉に, 私はすぐにピンときた. これまでも何度かあった. 正弘はいつも, 萌葉を優先した. 最初は, 優しい人だと思っていた. 家族を大事にする人だと. でも, それが私を傷つけるようになったのはいつからだっただろう.

私がこの日のためにどれだけの準備をしてきたか, 彼は知っていたはずだ. ウェディングプランナーの仕事の合間を縫って, 新しいマンションのリノベーションに心血を注いだ. 壁の色, キッチンの配置, 寝室の照明. 一つ一つ, 正弘と私の未来を想像しながら選んだ. 二人で住む, 夢の城だった.

もう, うんざりだった.

私の努力も, 感情も, 彼の優先順位にはかすりもしない.

いつも萌葉の「寂しい」という言葉一つで, 私の全てが吹き飛ばされる.

私は, 息を深く吸い込んだ. 決意が, 胸の奥で固まっていくのを感じる.

今日, ここで, 私は終わらせる.

「正弘, 待って. 今, どこにいるの? 」

私の声は, 驚くほど冷静だった.

「萌葉のマンションだよ. なんか, ストーカーがどうとかで. みっちゃん, ごめん. 入籍はまた今度じゃダメかな? 」

私の脳裏に, 萌葉の顔が浮かんだ. 「ストーカー被害」なんて, どうせ嘘だろう. 彼女の常套手段だ.

「そう」

私は短く答えた.

「みっちゃん, 怒ってる? 」

正弘の声に, 困惑の色が浮かぶ.

「怒ってない. 分かったわ. 萌葉ちゃんを優先してあげて」

私は, 自分でも信じられないほど優しい声を出すことができた.

正弘は安堵したようだった.

「ありがとう, みっちゃん. やっぱりみっちゃんは優しいね. 落ち着いたら, また連絡するから」

そう言って, 彼は電話を切った.

電話口から聞こえる萌葉の甘えた声が, 私の耳にまとわりつく.

彼の背中が, 遠ざかっていく.

頼りになると信じていたその背中が, 今ではただの幻のように見えた.

私たちが大学時代から培ってきた愛は, 私にとっては人生そのものだった. 彼の夢を応援し, 彼の家族とも良好な関係を築こうと努力した. 彼が「家族が大事だから」と言えば, 私はいつでも理解を示した.

だが, 彼はどうだ?

「光恵なら許してくれる」

彼はいつもそう思っていた. 私の愛情にあぐらをかいていた.

周りの友人たちは, 萌葉との関係に眉をひそめていた. 「正弘くん, 萌葉ちゃんに甘やかしすぎじゃない? 」「光恵ちゃんが可哀想だよ」そんな言葉を聞くたびに, 私は「家族だから」と笑ってごまかしてきた.

心の中では, いつも胃がキリキリと痛んだ.

まるで, 私の感情が, 内臓を蝕んでいるかのように.

彼の言葉一つ, 萌葉の行動一つで, 私の胃は波打つ.

身体が正直に, 私の心の悲鳴を上げているようだった.

タクシーの窓から, 市役所の建物が小さくなっていくのを見た.

その日, 私は初めて, 自分の涙が枯れ果てたことを知った.

涙腺は完全に閉じた.

私の心は, 凍り付いた湖のようだった.

表面は静かで, 何もかもを映し出すが, その奥には, 氷の底知れない深さがある.

私は, もう「都合のいい女」でいるのはやめる.

今日, この瞬間から, 私は私自身の人生を生きる.

彼の, そして萌葉の影から, 完全に脱却するのだ.

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