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Yokubo no Yamini Furisosogu eien no Shunkan

婚約破棄された没落令嬢、氷の帝王たる冷酷総帥に甘く溺愛される

婚約破棄された没落令嬢、氷の帝王たる冷酷総帥に甘く溺愛される

キャンディ渚
パリのアパートで論文の進捗を確認していた私のスマホに、義妹の玲奈から一枚の写真が送られてきた。 そこには、ホテルのベッドで裸で絡み合う、私の婚約者と玲奈の姿が鮮明に写っていた。 カメラに向けられた玲奈の瞳には、私を見下すような挑発的な笑みが浮かんでいる。 「西園寺家を救ってやった恩を忘れるな」 長年、婚約者の佐藤家から投げつけられてきた侮蔑の言葉が脳内で不快に反響する。 没落した西園寺家にとって、私はただの都合のいい政略結婚の駒でしかなかった。 彼らの敷いたレールの上で、従順で物分かりのいい娘という仮面を被り続ける人生。 体内で燻っていた諦めや無力感は急速に燃え尽き、後には氷のように冷たい怒りだけが残った。 私は来月帰国する予定だったフライトをキャンセルし、最も早い東京行きのチケットを迷わず予約した。 そして、部屋の隅に大切に保管していた高価な婚約記念のドレスを、ゴミ箱に無造作に投げ捨てる。 ただ婚約を破棄するだけじゃない。最高の舞台で、佐藤家を完全に破滅させてやる。
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「青木様、残念ながら着床は確認できませんでした」

白石秋子は検査結果の紙を握りしめた。指先が、ひどく冷たい。

もう何度目なのか、思い出すことさえできない。

結婚して七年。青木家の者は皆、跡継ぎの誕生を待ち望んでいるのに、腹にはなぜか、何の兆しもなかった。

夫婦生活も、民間療法も、体外受精も、手術も……試せることはすべてやり尽くした。

振り返り、主治医のドアをノックしようとした、そのとき——自分のことを話す声が聞こえてきた。

「……あの青木奥様、本当に気の毒よね。子宮内膜があんなに薄くて、体を酷使しすぎじゃない……」

「何が気の毒なの? 旦那様が子どもを望んでないって、知らないの?彼女がどんなに無理したって、ぜんぶ無駄よ……」

秋子は雷に打たれたように立ち尽くし、伸ばした手が宙で固まった。

(――雅人が、子どもを……望んでいない……?)

......

朦朧としたまま帰宅し、ベッドの上で身を縮めた。初夏の陽射しは柔らかいのに、体は震えるほど冷えていた。

マットレスがふいに沈み、強い酒の匂いに松脂の香りが混じって押し寄せた。

雅人が背後から抱き寄せ、熱を帯びた手のひらが慣れた動きでシルクのナイトウェアの中へ滑り込む。

「会いたかった?」

その指先は簡単に体の奥の震えを呼び起こすのに、心だけが、少しずつ冷え切っていった。

(今日、結果を取りに病院へ行ったことを、この男は知っている。それなのに、何も聞こうとしない)

「子どもが……また、駄目だった」掠れた声で、それだけを伝えた。

雅人の手が、はっきりと止まった。

しばしの沈黙のあと、感情の読めない落ち着いた声で言った——

「わかった。お疲れさま」

「これから2か月、出張に出る。体を大事にして、相葉おばさんに、滋養のあるスープでも煮てもらうといい」

そう言うなり、唇が落ちてきた。絡みつくような口づけは、酒に酔った男特有の強引さと熱を帯びている。

秋子は気が進まなかったが、抗うこともできず、なされるがままになるしかなかった。

彼はいつも優しく、彼女を傷つけることはなかった。

終わったあと、彼は彼女を抱いて浴室へ連れて行き、きれいにしてから再びベッドへ戻し、そのまま抱き寄せて眠りにつく。

それは、これまで幾度となく繰り返されてきた夜と何一つ変わらず、親密で、穏やかな温もりに満ちていた。

誰が見ても、この世で一番、仲睦まじい夫婦に見えた。

隣から聞こえる呼吸が次第に規則正しくなる一方で、秋子はまったく眠れなかった。

視線は自然と、ソファに無造作に置かれた雅人のブリーフケースへと吸い寄せられていった。

結婚して七年、一度も彼の持ち物を漁ったことはなかった。それが、青木奥様としての自制だった。

だがこの瞬間、雅人の寝顔を見つめたあと、秋子は静かにベッドを降りた。

数分後。

数通の至急書類の下から、白い錠剤のシートを指先で探り当てた。

それは――避妊薬だった!

秋子は、呆然とそれを見つめた。

妊娠に備えて、彼女自身は一度も口にしたことがなく、友人のもとで偶然見かけたことがあるだけだった。

「あんたたち、仲良しだから、ゴムなんて一生使わないでしょ?」と、そのとき友人にからかわれたものだ。

だが現実は、あまりにも残酷だった。病院で多少の覚悟はしていたはずなのに、胸の奥は風の吹き抜ける壁のように寒々しかった。

子どもを望んでいるはずの男が、なぜ避妊薬を持ち歩くのか?

浮気?

それとも……

秋子は、はたと思い当たった。青木雅人がいつも相葉さんに頼んで作らせていた、“あのスープ”のことに。

その瞬間、全身の血が引くような寒気に襲われた。

震える手のせいで、バッグの内ポケットから一枚の写真が落ちた。

縁が白く色あせ、指の脂で光っている——何度も手に取って撫でられてきた証だ。

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