紫苑寺鈴
小説2部発表
紫苑寺鈴の小説・書籍全集
亡き恋人の器と復讐
都市 夫は私が彼を愛していると信じているが, 彼は亡き恋人の「器」に過ぎない.
息子が誘拐された時, 彼は電話の向こうで冷酷に笑った.
「俺の種じゃないガキを助ける義理はない」
貧しいヴァイオリニストだった彼を, 私は財力で「天才」に仕立て上げた.
彼はそれを自分の実力だと過信し, 若い女と浮気をして私を裏切っていた.
だが, 彼が亡き恋人の形見である「青いダイヤ」を売りに出した瞬間, 五年前の事故死の真相を悟った.
彼ら親子が, 私の最愛の人を殺したのだ.
息子を見殺しにし, 勝ち誇る彼に, 私は静かに微笑んで最後の罠を仕掛けた.
「ねえ, 知ってる? 」
「あなたが殺そうとしたその子は, あなたが一生勝てない『本物』の息子よ」
全てを奪い尽くす, 私の復讐が始まる. 夫の裏切り、妻の決断
都市 結婚記念日, 夫の藤代秀一は私に「ANJU」と名付けられた宝石を贈った. それは彼の会社が開発した画期的なAIアプリと同じ名前. 彼は私への永遠の愛を世界に誓い, 世間は私たちを「世紀の恋」と羨んだ.
しかしその夜, 彼の首筋には生々しいキスマークが刻まれていた. 彼は別の女のベッドから直行してきたのだ.
昼は完璧な夫を演じ, 夜は愛人・松崎花純と甘い時を過ごす. 花純は妊娠を盾にSNSで私を挑発し, 秀一が買い与えた豪邸や大金を自慢した. 遊園地でのデート中も, 彼はこっそり花純のライブ配信に巨額の投げ銭をしていた. 「もちろん, 俺の方が梓を愛している」と. 私を「梓」と呼んだことは一度もないのに.
ゆっくりと温められた愛も, 結局は簡単に冷めてしまう. 彼の裏切りを知った三ヶ月, 私の心は凍てついていた.
だから私は, 離婚届を豪華な箱に入れ, 彼への「結婚記念日のプレゼント」として手渡した. 「半月後に開けてね」と微笑みながら. これは, 私の復讐の始まり. すべての個人情報を削除し, 異国行きの航空券を予約した私は, 彼が箱を開ける「サプライズ」を冷ややかに待っていた.