過去の旅人
小説1部発表
過去の旅人の小説・書籍全集
出来損ないの娘が死んだ日
都市 ゴミの山で発見された腐乱死体.
それを前にして, 刑事の父と監察医の母は「汚らわしい」と顔をしかめた.
彼らは気づいていなかった.
その無惨な遺体が, 自分たちが「出来損ない」と蔑み続けた実の娘, 私であることに.
母は私の指から, かつて私が誕生日に贈った手作りの指輪を無造作に引き抜いた.
「こんな安っぽい指輪... 被害者は貧しい生活をしていたのでしょうね」
彼らは私の体を解剖しながら, 養女である妹・萌のピアノコンクールの話題で盛り上がっていた.
「萌は私たちの誇りだ. この死体のようなゴミとは違う」
魂となった私は, その光景を絶望の中で見つめていた.
死んでなお, 私は彼らにとってただの「処理すべき案件」でしかなかったのだ.
しかし, 胃の内容物から発見された一枚のレシートが, 残酷な真実を突きつける.
「おい, 嘘だろ... 」
鑑識の結果を見た父の顔色が, 一瞬にして土気色に変わった.
「DNAが一致しました. 被害者は... 梅田栞さんです」
その瞬間, 母の悲鳴が解剖室に響き渡った.
あのゴミの山の中で両親が私を見つけた時, 彼らは私の体を汚らわしいものだと吐き捨てた. それが, 私と彼らの最後の出会いだった. あなたの傾向から
潔癖症の嘘、裏切りのキス
紅蓮 カイン 10年間付き合った婚約者の和也は, 「潔癖症だから」と言って, 私とのキスをいつも避けていた.
しかしある夜, 私は見てしまった. 彼が兄の元婚約者である幸世と, 公園の隅で情熱的なキスを交わしている姿を.
私が高熱で倒れた日, 彼は「会議中だ」と電話を切り, 幸世と旅行先で食事を楽しんでいた. それだけではない. 彼は私を無情にも解雇し, 私の秘書の席を幸世に与えたのだ.
「瑞実のことは大切にしたいから, ゆっくりと関係を深めていきたい」彼の優しい言葉はすべて嘘だった. 私はただ, 幸世の「代役」に過ぎなかったのだ.
10年間の献身と愛情が踏みにじられた絶望の底で, 私の心に冷たい復讐の炎が灯った.
結婚式当日, 私は姿を消した. そして, 披露宴のスクリーンに, あの夜のキス動画を流すよう手配した. 「和也, あなたの人生は, 今日で終わりよ」