冷遇令嬢、才能で輝き家族をざまぁする

冷遇令嬢、才能で輝き家族をざまぁする

渡辺 知佳

都市 | 3  チャプター/日
5.0
コメント
クリック
103

【甘々溺愛×妹追悔の業火×絶対に許さない×ざまぁ痛快】葉月綾歌は、やっとのことで葉月家に見つかった本物の令嬢。しかし、葉月家の誰一人として彼女を好まなかった。兄たちは何かにつけて責め立て、罵り、偽物の令嬢ばかりを天にも昇るほどに寵愛した。 葉月綾歌はきっぱりと奉仕をやめ、葉月家との縁を断ち切る。 家を出たその日、彼女はある神秘的な大物と電撃婚し、結婚証を手にした。 偽物の令嬢に譲歩?兄たちに卑屈に? ――今度こそ、絶対にありえない!ダンス界の新星、レーシングの神、天才作曲家、文化物修復師…… 次々と“隠された顔”が明らかになるたびに、葉月家の人間はようやく偽令嬢の正体を見抜き、後悔することになる。 実の父は夜を徹して海外から駆け戻り――「綾ちゃん、父さんが間違っていた……人を見る目がなかった……」 実の母は涙に濡れた顔で――「綾ちゃん、あなたを見つけてから、まだ一度も抱きしめてあげられていないの……」 5人の兄は雨の中、号泣しながらひざまずき、葉月綾歌に帰ってくるよう懇願する。 だが葉月綾歌は、艶やかに紅い唇をほころばせ、妖しい笑みを浮かべた。――この一度だけは、絶対に許さない!星々の光の下、あの大物が彼女を抱き寄せる。掠れた声で情深く囁き、愛おしさに満ちた眼差しを向けた。「妻よ、一緒に帰ろう」

チャプター 1 ボイスレコーダーが証明する潔白

「綾歌、おまえは跪け!菜々に土下座して謝れ!」

男の冷たく突き放すような声が、広いリビングに響き渡る。

葉月綾歌はリビングの中央に立ち、すらりと長い睫毛を伏せ、ポケットに忍ばせたボイスレコーダーを握りしめた。ソファーに座って命令を下す男を見る。それは、彼女の三番目の兄、葉月陽介だ。

陽介の隣に座っているのは、葉月家の名ばかりのお嬢様、葉月菜々。彼女とは血縁関係が一切ない。

その今、彼女の実の兄が、菜々に土下座しろと言ってきたのだ。

「葉月綾歌!おまえがわざと菜々を階段から突き落としたのか? なんて悪辣な心根だ!人間以下だ!」

「俺にはおまえみたいな妹はいない!」

人間以下?

綾歌は睫毛を震わせ、胸の奥の窒息するような痛みを押し殺した。「私、は……」

しかし、たった二文字口にしたところで、陽介はそばにあったグラスを掴み、綾歌に投げつけた!

「まだ言い訳するつもりか!」

ガチャン!

グラスは綾歌の足の甲に当たり、粉々に砕け散った。

彼女の細く白い足の甲はたちまち赤く腫れあがる。

ガラスの破片が皮膚に突き刺さり、細く雪のように白い脚に傷をつけて、透き通るような白い肌から鮮やかな血が滲み出していた。

あまりにも痛ましく、目がくらむほどだ。

しかし、綾歌は痛みをまるで感じないかのように、微動だにせず立ち尽くしている。

実の兄からこんなふうに罵倒され、殴られるのは、これが初めてではない。

「お兄ちゃん、もうお姉ちゃんを叩かないで!」隣にいた菜々が、慌てて口を開いてかばう。「お姉ちゃんがわざと私を階段から突き落としたわけじゃないんです……本当に、お姉ちゃんとは関係ないの。これ以上お姉ちゃんを責めないであげて。全部、私が不注意だっただけだから……」

陽介はたちまち心を痛めた。「菜々、どうしておまえはまだあいつをかばうんだ? なんてお人好しなんだ。女の子が階段から突き落とされて、傷痕が残ったらどれほど大変か、考えもしないのか!」

「でも、お兄ちゃん……」

「もういい、菜々。おまえはわかってる子だ。あいつの言い訳をするな!さあ、お兄ちゃんに怪我がないか見せてごらん?」

「私、平気だから、お兄ちゃん心配しないで……」

目の前で繰り広げられる、兄と妹の情愛にあふれた光景を見て、綾歌は突然ひどく疲労を覚えた。

陽介は、菜々の体が傷つけば女の子として大変だと心を痛める。

だが、ついさっきは?

彼は微塵も顧みず、グラスを掴んで彼女に投げつけたではないか!

彼女の脚は破片でたくさんの傷がつき、今も血が流れている。彼女には傷痕が残らないというのか?

彼女も女の子であり、しかも彼の本当の妹ではないか!

綾歌は幼い頃に家を離れ、孤児院で育った。その後、祖父母に引き取られ、一緒に生活してきた。

そして、祖父母にかわいがられながら育ったのだ。

これまで、こんなふうに扱われたことなど一度もなかった!

陽介は菜々の心配を終え、ふと見ると、綾歌の整った顔に薄っすらと嘲りの表情が浮かんでいることに気づき、不機嫌になった。「その表情は何だ!」

「葉月綾歌、二年前におまえを葉月家に迎えたとき、俺たちは言ったはずだ。『菜々は小さい頃からここで育った。たとえ血がつながっていなくても、本当の妹だと思え』とな!」

「お姉ちゃんなんだから、譲ってあげて、甘やかして、守ってあげなきゃならない!」

「だが、おまえはどうだった? この二年、どうやってきたんだ!」

綾歌はそれを聞くと、桜色の唇に苦笑を広げた。

二年前、葉月家の人々が彼女を見つけた頃、彼女の祖父母はすでに亡くなっていた。家族ができたのだから、もう独りぼっちで生きていかなくていいと思った彼女は、祖父の生前の友人だった藤原雄彦からの誘いを断り、葉月家に来たのだった。

この二年、彼女はどこへ行くにも注意深く、我慢し続けてきた。

どんなものでも、一番良いものは菜々に譲った。

そして自分は、菜々がいらなくなったものを、みじめなまでに拾い集めてきたのだ。

こうすれば、少しずつこの家族に溶け込み、両親と五人の兄たちに受け入れられ、本当の家族だと思ってもらえると信じていた。

しかし、結局彼らは、ひたすら菜々だけを甘やかし、実の娘である彼女に対しては、数えきれないほどの非難と罵倒を浴びせるばかりだった!

綾歌はかつて、彼らが悪意に満ちた、忌々しげな言葉をこっそり聞かされたことがある。 「葉月綾歌がもし外で死んでいればよかったのに。そうすれば、わたしたち家族は円満だったのに」

『もし葉月綾歌が……外で死んでいればよかったのに……』

この言葉を聞いたとき、綾歌は胸を締めつけられ、まるで心臓を大きな手にぎゅっと掴まれたかのように、息もできないほど苦しかった!

彼女は自分が何をしてしまったのか、わからなかった。

なぜ自分の家族はこんなにも自分を憎むのか?

彼女が外で死ぬことを望むほどに!

それなら、なぜ二年も前に彼女を葉月家に迎え入れたのか!?

綾歌は瞼を閉じ、心が死んだように、かつてないほど穏やかになった。

もういい。

このままでいい。

この家は、もういらない。

この家族も、全員いらない。

陽介は、なぜか綾歌が何かを手放したかのように、その表情がとても晴れやかで、まるで蛹から蝶に生まれ変わったようだったことに、 わけもなく一瞬ひるんだ。

彼はそばにあった戒尺を手に取り、綾歌に振り下ろした。「今すぐ菜々に土下座して謝らないなら、家法でみっちりしつけてやる!」

しかし次の瞬間、彼の手首は、一本の細い手にしっかりと止められた。

葉月綾歌だった!

彼女が……彼を止めたのだ!

「葉月綾歌、おまえ!」

陽介はたちまち不満を感じた。この二年、綾歌はいつもおどおどと、彼らの言うことに唯々諾々と従い、罵られても殴られても口答えひとつしなかったのに、今になって反抗するのか?

驚愕した陽介の顔を見て、綾歌はあざ笑うように鼻を鳴らした。その表情は鮮やかに輝いている。

「言ったはずよ。私は彼女を突き飛ばしてなんかいない」

陽介はまったく信じない。「まだ言い訳するつもりか? 叩かれれば目が覚めるんだろ!」

「葉月陽介」綾歌の眼差しには、もはや一片の感情もこもっていなかった。「もし、私に人を突き飛ばしていないと証明する証拠があるとしたら――」

「あなたと葉月菜々が、私に跪いて土下座して謝罪するのよ!」

「何だと !?」

陽介は自分の聞き間違いかと思い、怒りと焦りで声を荒げた。

「俺に土下座しろだと? おまえ……おまえは人でなしだ!」

こんな畜生を妹だとは絶対に認めない!

ソファーで成り行きを面白そうに見ていた菜々は、綾歌が叩かれるのを期待していたのに、彼女の反撃の言葉を聞き、目に疑惑の色を浮かべた。

証拠?

彼女にどんな証拠があるというの!

菜々は心の中で冷笑し、立ち上がると、思いやりがあるふりをしてなだめた。「お兄ちゃん、もうやめようよ。お姉ちゃんとこれ以上争わないで」

「菜々、あいつの味方をするな!」陽介は怒り狂って叫び、額に青筋が浮き上がっている。「いいだろう、どんな証拠を見せるか見てやる!」

綾歌は、涼しげな目で、ポケットからある物を取り出した。

菜々が顔を下げて、それが何かを確かめると、顔色が一瞬で真っ青になった。

ボイ……ボイスレコーダー?!

どうして!

綾歌がボイスレコーダーを隠し持っていたなんて?!

綾歌はボイスレコーダーを取り出すと、無表情なまま再生ボタンを押した。

しばらくのノイズの後、ボイスレコーダーからか細い女の声が聞こえてきた。「お姉ちゃん、この場所はどう?」

陽介はすぐに気づいた。これは菜々の声だ。

続いて、清らかな泉のせせらぎのような女の声が響いた。「菜々、階段で何をしているの?」

陽介はやはりすぐに気づいた。これは綾歌の声だ!

次の瞬間、陽介は、菜々がそのか細い声で、悪辣極まりない言葉を口にするのを聞いた。 「お姉ちゃん、もしお姉ちゃんが私を突き落としたって言ったら、お兄ちゃんはどんなふうにお姉ちゃんを罰して、罵るのかしら?」

続きを見る

渡辺 知佳のその他の作品

もっと見る
「妹だ」と言った彼の、今さらの独占欲

「妹だ」と言った彼の、今さらの独占欲

短編

5.0

十七歳のあの年、少女は隣家の年上の兄と禁断の果実を味わい、誰にも知られぬまま密やかな関係を始めた。 その日、彼女は間違えた問題を抱えて、おずおずと彼に教えを請いに行った。 初めて芽生えた恋心はあまりにも熱く、彼はその気持ちをすぐに察し、優しく導いてスカートの裾をそっとめくらせた。 彼は微笑みながら言った。「怖がらなくていい、痛くないよ。」 彼女の不安も戸惑いも、その甘く優しい笑みに溶けていった。 それからというもの、彼女が隣へ訪ねるたび、彼は声に笑みを含ませて言う。 「こんなに一生懸命に問題を解いてあげてるんだ、少しご褒美をくれる?」 彼女は真っ赤になって頷き、彼が情に駆られるたび、額に口づけを落とされる。「本当にいい子だ、大好きだよ。」 彼は約束した。彼女が自分と同じ大学に合格したら、公に付き合おうと。 そして、彼女は合格通知を手に、胸を弾ませて彼の家を訪ねた。だが耳に届いたのは、心ない冷笑の声だった。 「俺が好きなのはあの子だけだ。お隣の子なんて、ただの妹みたいなものさ。」 「ちょうど彼女が交換留学で一年いなかったから、顔立ちが少し似ていたあの子で代わりをしていただけ。実際あんな太った子なんか、本来なら絶対に相手にしなかった。」 「もう本物が戻ってきたんだ。厄介な代用品はここで切り捨てるだけだ。」

おすすめ

冷遇令嬢、実は天才。婚約破棄した彼らにざまぁ!

冷遇令嬢、実は天才。婚約破棄した彼らにざまぁ!

田中 翔太
5.0

桜井陽葵は家族から愛されない「無能で醜い女」とされていた。一方、継母の娘である山口莉子は才色兼備で、間もなく名門一族の後継者・高木峻一と結婚することになり、栄華を極めていた。 人々は皆、強い者に媚びへつらい、弱い者を踏みつけた。山口莉子は特に傲慢で、「桜井陽葵、あなたは永遠に犬のように私の足元に踏みつけられるのよ!」と高らかに言い放った。 しかし、結婚式当日。人々が目にしたのは、豪華なウェディングドレスを纏い、高木家に嫁いだ桜井陽葵の姿だった。逆に山口莉子は笑いものにされる。 街中が唖然とした。なぜ!? 誰もが信じなかった。栄光の申し子・高木峻一が、無能で醜いと蔑まれた女を愛するはずがない。人々は桜井陽葵がすぐに追い出されるのを待ち続けた。 だが待てども待てども、その日が来ることはなかった。現れたのは、眩い光を放つ桜井陽葵の真の姿だった。 医薬界の女王、金融界の大物、鑑定の天才、AI界の教父――次々と明かされる正体の数々が、嘲笑していた者たちの目を眩ませた。 汐風市は騒然となった! 山口家は深く後悔し、幼なじみは態度を翻して彼女に媚びようとする。しかし桜井陽葵が返事をする前に――。 トップ財閥の後継者・高木峻一が発表したのは、桜井陽葵の美しい素顔を捉えた一枚の写真。瞬く間に彼女はSNSのトレンドを席巻したのだった!

すぐ読みます
本をダウンロード
冷遇令嬢、才能で輝き家族をざまぁする
1

チャプター 1 ボイスレコーダーが証明する潔白

04/09/2025

2

チャプター 2 あの男

12/09/2025

3

チャプター 3 婚約者

12/09/2025

4

チャプター 4 今日、婚姻届を出そう

12/09/2025

5

チャプター 5 彼が嫉妬した

12/09/2025

6

チャプター 6 長兄、葉月和弥 (パート1)

12/09/2025

7

チャプター 7 長兄、葉月和弥 (パート2)

12/09/2025

8

チャプター 8 誰のために? (パート1)

12/09/2025

9

チャプター 9 誰のために? (パート2)

12/09/2025

10

チャプター 10 驚愕のパフォーマンス (パート1)

12/09/2025

11

チャプター 11 驚愕のパフォーマンス (パート2)

12/09/2025

12

チャプター 12 誰が一番? (パート1)

12/09/2025

13

チャプター 13 誰が一番? (パート2)

12/09/2025

14

チャプター 14 藤原社長からの祝福 (パート1)

12/09/2025

15

チャプター 15 藤原社長からの祝福 (パート2)

12/09/2025

16

チャプター 16 葉月綾歌は俺の妻だ (パート1)

12/09/2025

17

チャプター 17 葉月綾歌は俺の妻だ (パート2)

12/09/2025

18

チャプター 18 妻と寝室で?

12/09/2025

19

チャプター 19 葉月家当主を論破す! (パート1)

12/09/2025

20

チャプター 20 葉月家当主を論破す! (パート2)

12/09/2025

21

チャプター 21 葉月家当主を論破す! (パート3)

12/09/2025

22

チャプター 22 葉月菜々を撃沈!妻を守る夫、登場 (パート1)

12/09/2025

23

チャプター 23 葉月菜々を撃沈!妻を守る夫、登場 (パート2)

12/09/2025

24

チャプター 24 葉月菜々を撃沈!妻を守る夫、登場 (パート3)

12/09/2025

25

チャプター 25 葉月陽介に恥をかかせる! (パート1)

12/09/2025

26

チャプター 26 葉月陽介に恥をかかせる! (パート2)

12/09/2025

27

チャプター 27 立て続けに平手打ち、絵画鑑定の達人 (パート1)

12/09/2025

28

チャプター 28 立て続けに平手打ち、絵画鑑定の達人 (パート2)

12/09/2025

29

チャプター 29 新たな顔 (パート1)

12/09/2025

30

チャプター 30 新たな顔 (パート2)

12/09/2025

31

チャプター 31 新たな顔 (パート3)

12/09/2025

32

チャプター 32 葉月和弥の面目丸つぶれ (パート1)

12/09/2025

33

チャプター 33 葉月和弥の面目丸つぶれ (パート2)

12/09/2025

34

チャプター 34 葉月綾歌へ (パート1)

12/09/2025

35

チャプター 35 葉月綾歌へ (パート2)

12/09/2025

36

チャプター 36 当時の真相 (パート1)

12/09/2025

37

チャプター 37 当時の真相 (パート2)

12/09/2025

38

チャプター 38 当時の真相 (パート3)

12/09/2025

39

チャプター 39 お姫様抱っこ (パート1)

12/09/2025

40

チャプター 40 お姫様抱っこ (パート2)

12/09/2025