凍てつく地下室の妻

凍てつく地下室の妻

出合 則幸

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幼馴染の美緒の言葉を信じ, 僕は傲慢にも妻の翔子をワイナリーの地下セラーに閉じ込めた. ただ謝罪させる, それだけのつもりだった. しかし数日後, 僕が発見したのは, 壁に血の爪痕を残し, 絶望の中で凍え死んだ翔子の亡骸だった. 世間は僕を「愛人のために妻を殺した鬼畜」と罵り, 僕は殺人犯の烙印を押される. 隣で涙を流す美緒を慰めながら, 僕は罪悪感に苛まれた. だが, 突きつけられたのは, 翔子が僕の子を妊娠していたという司法解剖の結果. そして, 冷却装置を起動させた真犯人が, 美緒だったという衝撃の事実だった. 僕は自分の手で, 妻とまだ見ぬ我が子を殺したのだ. 翔子の墓前で, 僕は冷たく誓う. これは贖罪ではない. 美緒に百倍の苦しみを与える, 復讐の始まりだ.

第1章

幼馴染の美緒の言葉を信じ, 僕は傲慢にも妻の翔子をワイナリーの地下セラーに閉じ込めた.

ただ謝罪させる, それだけのつもりだった.

しかし数日後, 僕が発見したのは, 壁に血の爪痕を残し, 絶望の中で凍え死んだ翔子の亡骸だった.

世間は僕を「愛人のために妻を殺した鬼畜」と罵り, 僕は殺人犯の烙印を押される. 隣で涙を流す美緒を慰めながら, 僕は罪悪感に苛まれた.

だが, 突きつけられたのは, 翔子が僕の子を妊娠していたという司法解剖の結果. そして, 冷却装置を起動させた真犯人が, 美緒だったという衝撃の事実だった.

僕は自分の手で, 妻とまだ見ぬ我が子を殺したのだ.

翔子の墓前で, 僕は冷たく誓う.

これは贖罪ではない.

美緒に百倍の苦しみを与える, 復讐の始まりだ.

第1章

玉木玄 POV:

玄は忙しいオフィスの中で, 腕時計をちらりと見た. 会議はもうすぐ始まる. だが, 彼の思考はまだ, ワイナリーの地下室に閉じ込めた女のことに囚われていた.

「まだ謝罪しないのか? 翔子, お前は本当に僕の言葉を理解していないのか? 」

彼は苛立ちを覚えた.

彼女の頑なな態度に, 玄の眉間に深い皺が刻まれる. 今回の件は, 彼女が素直に非を認めれば, すぐにでも終わるはずだった. それなのに.

その時, 柔らかな香りが彼の鼻をくすぐり, 視界の端に白い影が滑り込んできた. 玉木玄の幼馴染である高沢美緒が, 温かいハーブティーを持って現れたのだ.

「玄, どうしたの? また眉間に皺が寄ってるわ」

美緒は心配そうに玄の顔を覗き込み, 手にしたカップをそっと差し出した.

玄は, 美緒の優しい声に少しだけ表情を緩めた.

「ああ, 美緒か. いや, 少しね. 翔子のことだよ」

美緒は, 玄の言葉に小さく息をのんだ. そして, すぐに柔らかな笑顔を浮かべた.

「翔子さん... 彼女もきっと, 悪気があったわけじゃないと思うの. ただ, 少し不器用なだけだから」

美緒は, いつもそうだった.

誰に対しても優しく, 玄が怒りを感じている時でさえ, 相手を庇おうとする. その純粋さに, 玄の心はいつも和まされる.

「でも, もうずいぶん経つわよ? きっと, 反省しているはずよ」

美緒は, 玄の腕にそっと触れた. その言葉は, 玄の中で膨れ上がっていた怒りの感情を, 少しずつ溶かしていくようだった.

玄は, 美緒の慈愛に満ちた眼差しに, 自分の心が揺らぐのを感じた.

「美緒は本当に優しいな. だから僕は... 」

彼は言葉を詰まらせた. 翔子と美緒. その二人の間には, あまりにも大きな違いがあった.

「翔子があんたみたいに優しければ, こんなことにはならなかっただろうに」

玄の口から, 無意識にそんな言葉が漏れた. 美緒は, 玄の言葉に少しだけ顔色を変えたが, すぐに微笑みを湛えた.

「翔子さんは, 玄のことを本当に大切に思っているわ. だからこそ, きっとああいう行動に出たんだと思うの. でも, もう許してあげてほしいな」

美緒の言葉は, まるで魔法のように玄の心を動かした. 彼は深く息を吐き, デスクの上の電話に手を伸ばした.

「久保田. 翔子から謝罪があったか? 」

玄は, 秘書の久保田智也に尋ねた.

電話の向こうから, 久保田の落ち着いた声が聞こえてくる.

「いえ, 社長. 笹木様からは, 未だ連絡はございません」

玄は, 苛立ちを募らせた. 美緒の言葉で一度は揺らいだ心が, 再び冷え固まっていく.

久保田は, 少し躊躇うように言葉を続けた.

「ですが, そろそろ... 」

「だが, 何だ? 」

玄は, 冷たく言い放った.

「彼女は, 自分の過ちを認めるまで, そこから出すつもりはない. それが僕の決めたことだ. 謝罪がない限り, 決して扉を開けるな. いいな? 」

玄は, 一方的に電話を切った.

彼の表情は, 再び氷のように冷たくなった.

その隣で, 美緒の口元に, 一瞬だけ, 誰にも気づかれないような薄い笑みが浮かんだ.

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