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桜井結衣は、幼い頃から神崎涼真に思いを寄せていた。 結婚の約束から、3年もの月日が流れた。 しかし、いざ結婚の時期が近づいた時、彼はかつての想い人を連れ帰ってくる。 結衣は、すべてが終わったことを悟った。 時が経てば愛情が深まることも、互いに敬い合うこともない。すべてはただの作り事に過ぎなかったのだ。 彼女は彼を手放し、自分自身をも解放することを決意する。 しかし、彼女が一枚の離婚協議書を差し出すと、 彼は取り乱した。 「桜井結衣、おとなしく俺の妻でい続けろ。離婚など考えるな!」 結衣は笑って答える。 「神崎涼真、私はもう何もいらない。あなたのことも」
「おめでとうございます、妊娠していますよ。赤ちゃんもとても元気です」
医師は検査結果の用紙を桜井結衣に手渡した。
結衣はあまりの驚きに呆然としたまま、信じられない様子でもう一度尋ねた。「先生、本当ですか?」
医師は力強く頷いた。「間違いありませんよ。もうすぐ3週目に入ります」
病院を出るまで、結衣はその検査結果をきつく握りしめていた。驚きが少しずつおさまり、やがてじわじわと喜びが胸に広がっていく。
結婚した当初、神崎涼真は彼女に「子供は作らない」とはっきり告げていた。
2人がベッドを共にする時は、毎回必ず避妊していた。
だが先月、どうしてもひ孫の顔が見たい祖父が、2人を寝室に閉じ込めたのだ。
あの夜、涼真は朝が来るまで彼女を離さず、ありとあらゆる体位を試してきた。
結衣は思わずにはいられなかった。3年という月日が経ち、彼も考えを変えたのかもしれない、と。
スマホを手に持ち、妊娠したことを今すぐ涼真に伝えるべきか迷っていた。
その時、ふいにスマホが鳴り、1通のメッセージがポップアップした。
「俺のオフィスに来い」
結衣は少し驚いた。彼の方から会社に来るよう呼んだことなど、これまで1度もなかったからだ。
***
すでに社員たちは退社している時間だった。結衣はエレベーターで神崎グループ本社の最上階へ直行し、涼真のオフィスへと向かった。
道中、彼女の胸はずっと高鳴っていた。妊娠を知って驚き、喜ぶ彼の姿を想像していたのだ。
きっと彼も喜んでくれるはず。ーー私と同じように。
しかし、オフィスのドアを開けた瞬間、結衣は頭が真っ白になった。顔からさっと血の気が引いていく。
床には女性の服が散乱しており、ピンク色のハイヒールまで転がっていた。
隣のシャワールームからは、ザーザーと水の流れる音が聞こえてくる。
結衣は胸をナイフで深くえぐられたようなショックを受け、一瞬で呼吸が苦しくなった。
(私を呼んだのは、これを見せつけるためだったの!)
背後から、氷のように冷酷な声が響いた。 「何しに来た」
結衣が振り返ると、ドアの前に涼真が立っており、不機嫌そうな目でこちらを睨んでいた。
彼はシャツ姿で、首元のボタンを2つ外していた。その首筋には、生々しい赤いキスマークが残っている……。
結衣は無理やり視線を逸らすと、激しく胸を上下させ、床の服を指差して問い詰めた。「これ、どういうこと?」
涼真が眉をひそめ、口を開きかけたその時。シャワールームのドアが開き、彼のオーバーサイズのシャツを着た1人の女が出てきた。
胸元のボタンが2つだけ留められており、胸の谷間と、すらりと伸びた2本の脚が露わになっていた。
女が甘い声を出した。「涼真、シャワー終わったよ……」
だが、顔を上げて結衣の姿に気づくと、女は言葉を詰まらせ、オロオロとした視線を向けた。
その整った顔立ちには、見覚えがあった。結衣は彼女をじっと見つめ、少しの間を置いた後、ふいに自嘲するような笑みをこぼした。
どうりで。彼が自分のオフィスに他の女を入れるわけだ。
相手が白石莉子だったのだから。
涼真がずっと忘れられずにいた初恋の女が、ついに帰ってきたのだ。
結衣と涼真の結婚は、親族からのプレッシャーによる政略結婚に過ぎず、結婚式すら挙げていなかった。
彼女が涼真の妻であることを知る者など、世間にはほとんどいない。
彼が自分を愛していないことくらい、結衣は最初から分かっていた。
なのに、彼が自分たちの子供を愛してくれるなどと、どうしてそんな甘い夢を見てしまったのだろう?
莉子が帰ってきた今、彼は一刻も早く自分を神崎家から追い出し、「神崎夫人」の座を彼女に返してやりたいと思っているに違いない。
結衣は、これ以上ピエロのように惨めな姿を晒したくなかった。彼女は踵を返し、逃げるようにその場を去った。
涼真は彼女を引き止めることもなく、弁解の言葉1つすら口にしなかった。
結衣の姿が完全に見えなくなってから、莉子はわざとらしく申し訳なさそうな顔を作り、おずおずと口を開いた。
「涼真、ごめんなさい。結衣が外にいるなんて知らなくて。私から彼女に説明しに行こうか?」
空港から出たところでちょうど雨に降られ、涼真のオフィスでシャワーを借りたいと提案したのは莉子の方だった。
彼女は涼真が席を外した隙を狙い、結衣にメッセージを送りつけ、その直後にすぐ送信履歴を削除していたのだ。
涼真の視線は結衣が消えた方向を見据えたままだった。そのゴツゴツとした指は、力強く握り込まれていた。
彼は険しい顔つきのまま吐き捨てた。「必要ない」
莉子の瞳の奥で、勝ち誇ったような光が怪しく煌めいた。
元カノとヨリを戻した夫が、毎晩私の足元で泣いて離婚してくれません
Rabbit4
都市
チャプター 1 彼のオフィスでシャワーを浴びる
22/04/2026
第2章 あいつに、結婚式をしてやる義理がある
23/04/2026
第3章 もうあんたなんていらない
24/04/2026
第4章 早く行って、 あなたの 莉子を待たせないで
25/04/2026
第5章 だったら死ねばいいじゃない
26/04/2026
第6章 代わりの花嫁
27/04/2026
第7章 じゃあ、花嫁を変えればいいじゃない
28/04/2026
第8章 どうやら彼の愛情に自信がないみたいね
28/04/2026
第9章 満たされない底なし沼
28/04/2026
第10章 あんたなんか相手にするわけない
28/04/2026
チャプター 11 墓穴を掘る
28/04/2026
チャプター 12 お前はバカか
28/04/2026
チャプター 13 一体どっちが隠したがっているのか
28/04/2026
チャプター 14 もう待てない
28/04/2026
第15章 怖いのか?
29/04/2026
第16章 離婚できる
30/04/2026
チャプター 17 彼女は狂ったのか
30/04/2026
チャプター 18 我慢する必要なんてない
30/04/2026
チャプター 19 私も結衣も子供は好きじゃない
30/04/2026
チャプター 20 彼女は彼に影響を与えるのか
30/04/2026
チャプター 21 叔父さんは本当に可哀想、3億6000万円も出せないなんて
30/04/2026
チャプター 22 何度言ったらわかるんだ、まったく言うことを聞かないな
30/04/2026
チャプター 23 元妻の写真を残しておくのはどうなの?
30/04/2026
チャプター 24 もう少しこのままで
30/04/2026
チャプター 25 全身くまなく見たことあるくせに
30/04/2026
チャプター 26 彼の婚約者
30/04/2026
チャプター 27 服を脱げ
30/04/2026
チャプター 28 一流の演技
30/04/2026
チャプター 29 意図的な挑発
30/04/2026
チャプター 30 男は見栄を張るもの
30/04/2026
チャプター 31 担架で運ばれていたかもしれない
30/04/2026
チャプター 32 もう別れた
30/04/2026
チャプター 33 ほかに好きな人でもできたんじゃない?
30/04/2026
チャプター 34 まだ好きな人にドキドキをバレたくない
30/04/2026
チャプター 35 男なんて誰も当てにならない
30/04/2026
チャプター 36 大変だ!誰かが崖から落ちたぞ!
30/04/2026
チャプター 37 欲張るのはよくない
30/04/2026
チャプター 38 私のcure! (パート1)
30/04/2026
第39章 私のcure! (パート2)
01/05/2026
第40章 これがお前の選択だ
02/05/2026