「代役はもう辞める」~高慢な高遠社長に、妻が宣戦布告~

「代役はもう辞める」~高慢な高遠社長に、妻が宣戦布告~

Rabbit4

5.0
コメント
クリック
1

綾辻澪は世界最大の宝飾品企業の令嬢でありながら、人生の絶頂期に不慮の事故で記憶を失い、海に転落したところを高遠陸に救われた。 彼女は高遠陸に一目惚れし、三年間、妻として尽くした。それでも、彼の心の中にいる「白月光」の代わりにはなれなかった。 誘拐され、命の危機に瀕したその時も、彼は元カノを悼んでいた。——ああ、私はこれほどまでに、憎まれていたのか。 澪の心は、もう微塵も残っていなかった。 「陸、離婚しましょう」 「俺なしで、生きていけるのか」 恋に溺れた自分を捨てた澪は、才能を武器に華麗なる復活を遂げる。瞬く間に、世界が認めるトップデザイナーへと駆け上がったのだ。 彼女は記憶を取り戻して綾辻家に戻り、さらに男女の双子を産んだ。 彼女を取り囲む、色と欲の渦巻く年下男子たち。それを見た瞬間、高遠陸は初めて恐怖を知った。 「澪……俺が間違ってた。頼む、一目でいい、子供たちに会わせてくれ!」

「代役はもう辞める」~高慢な高遠社長に、妻が宣戦布告~ 第1章 ただの身代わり

「この顔とスタイルを見ろよ、まるで妖精みたいじゃねえか!こんな極上品を風俗に流せば、一日200万は固いぜ!」

深見清美は、廃墟となった小さな建物の中で数人の男たちに縛られていた。額からは血が流れ、顔は血のりで汚れている。

彼女の服は乱れ、肩と胸の大部分が露わになっていた。そこには、抵抗した際に蹴られたり殴られたりした傷跡が生々しく残っている。

二日前、突然一本の電話がかかってきた。相手は彼女の生い立ちを知っていると言い、さらに彼女の身体にあるいくつかの秘密の特徴まで言い当てた。

その人物に郊外へと呼び出された清美だったが、まさか命知らずの連中に誘拐されるとは夢にも思わなかった。

「やめて。お金が欲しいなら、払うわ」

清美は手のひらを爪で強く押さえつけ、必死に冷静を保とうとした。唇の端から滲む血が、痛々しく目を引く。「私は高遠陸の妻よ!あなたたちがいくら身代金を要求しても、彼は払えるわ!」

「高遠陸だと !?」

男たちは驚き、戸惑いながら顔を見合わせた。「高遠陸が結婚した? 聞いたことねえぞ」

あの男は、熊北市で誰も逆らえない「御曹司」だ。彼が足を踏み鳴らせば、熊北市全体がひっくり返ると言われるほどの権力者。もし本当にその妻を誘拐したとなれば、陸の権力と情報網をもってすれば、彼らなど簡単に握り潰されてしまうだろう。

男たちの顔に浮かぶ動揺を見て取り、清美は気を取り直して言った。「あなたたちに誘拐されたなんて、絶対に言わないわ。私を解放してくれれば、あなたたちが無事に身代金を手に入れられることを保証する!」

リーダー格の男は、彼女が身につけている高級なオートクチュールのドレスに目をやり、その可憐な顔立ちを見つめた。心が揺らぐ。

この女の服は安物ではない。これほどの美貌なら、高遠陸のような人物が「籠の中の鳥」として娶っても不思議ではない。

仲間と視線を交わした後、彼は冷たく言い放った。「電話番号を教えろ。変な真似はするな。もし騙そうとしたら、お前を最低の風俗に売り飛ばして、客を相手に足が閉まらなくなるまで働かせてやる!」

清美の口の中は血の味が充満していた。かすれた声で、一連の番号を告げる。

男が電話をかけるが、すぐに切れてしまった。

「クソッ、俺をからかってんのか?電話も繋がらねえじゃねえか!」

男は途端に顔色を変え、清美の腰を容赦なく蹴りつけた。

激痛に清美の顔は真っ青になり、声はさらに弱々しくなる。「彼の番号は特殊なの。自分の携帯からかけさせてくれない?」

「金持ちってのは本当にわがままだな!」

男は唾を吐き、一瞬ためらった後、携帯電話を差し出した。「40億要求しろ!さもなきゃ、男に弄ばれて使い捨てにされるのを待つんだな!」

清美は震える指で番号をダイヤルし、鳴り続ける呼び出し音に、心臓が喉元までせり上がるのを感じた。

陸と結婚して三年になるが、彼が自分を愛していないことは清美自身がよく分かっていた。

しかし、彼は金銭面で彼女に惜しみなく与えてくれる。だから……身代金も払ってくれるはずだ。

呼び出し音は長く鳴り続けた。清美の指の骨は、ほとんど白くなるほど強く握りしめられていた。

ようやく、電話の向こうが繋がった。しかし、受話器から聞こえてきたのは、甘ったるい声だった。陸の「初恋の人」の妹であり、人気デザイナーの月城真央の声だ。

『清美お姉さん? 陸お兄さんと私は、お姉さんのお墓参りに来ているの。何か用?』

清美の手が震えた。

彼女が誘拐された日は、二人の結婚三周年の記念日だった。それから丸二日が経ったというのに、陸は彼女が失踪したことに全く気づかず、平然と「初恋の人」の墓参りに行っていたというのか?

胸の奥に、細く鋭い痛みが走る。

清美は分かっていた。陸が自分と結婚してくれたのは、高遠京子が曾孫を望んだからという理由だけではない。三年前、土砂崩れで亡くなった彼の「初恋の人」、月城莉央と九分九厘似た顔をしていたからだ。

しかし、自分が彼の心の中で全く重きをなしていないと気づかされるのは、やはり胸が締め付けられる思いだった。

だが、今はそんなことを気にしている場合ではない。

清美は、込み上げる嗚咽と全身の痛みを必死にこらえた。「月城さん、陸お兄さんに急用があるの。携帯を代わって」

しかし、電話の向こうの真央は、意味ありげに笑った。「清美お姉さん、陸お兄さんの性格はご存知でしょう?今日は私のお姉さんの命日なの。お姉さんの長話に付き合う忍耐力はないと思うわ。何か用なら、私に直接話してくれたらいいじゃない」

清美は歯を食いしばり、苛立ちを募らせる男たちの視線を感じながら、受話器に向かって怒鳴った。「陸に代われって言ってるの!今すぐ!私は彼の妻よ。あなたが口を出す資格はない!」

自分が誘拐されたとは言えなかった。もし男たちが逆上すれば、彼女はここで死ぬしかない。

彼女の声が大きすぎたのだろう。受話器の向こうで、足音が遠くから近づいてくるのが聞こえ、陸が口を開いた。「誰からの電話だ?」

真央はさりげなく受話器を覆い、唇を噛みしめながら、いかにも傷ついたような口調で言った。

「清美お姉さんよ。どうしてもあなたに代わってほしいって。陸お兄さんがお姉さんのお墓参りに来ているって言ったら、すごく怒って、自分があなたの妻だって……」

陸は鼻で笑った。「妻? 彼女にそんな資格があるか? ただの身代わりだ」

「彼女の生死などどうでもいい。切れ。あんな女と長話をして、莉央の安らかな眠りを妨げるな」

受話器から聞こえてくる冷たい通話終了音に、清美の心は奈落の底へと沈んでいった。

続きを見る
すぐ読みます
本をダウンロード
「代役はもう辞める」~高慢な高遠社長に、妻が宣戦布告~ 「代役はもう辞める」~高慢な高遠社長に、妻が宣戦布告~ Rabbit4 都市
“綾辻澪は世界最大の宝飾品企業の令嬢でありながら、人生の絶頂期に不慮の事故で記憶を失い、海に転落したところを高遠陸に救われた。 彼女は高遠陸に一目惚れし、三年間、妻として尽くした。それでも、彼の心の中にいる「白月光」の代わりにはなれなかった。 誘拐され、命の危機に瀕したその時も、彼は元カノを悼んでいた。——ああ、私はこれほどまでに、憎まれていたのか。 澪の心は、もう微塵も残っていなかった。 「陸、離婚しましょう」 「俺なしで、生きていけるのか」 恋に溺れた自分を捨てた澪は、才能を武器に華麗なる復活を遂げる。瞬く間に、世界が認めるトップデザイナーへと駆け上がったのだ。 彼女は記憶を取り戻して綾辻家に戻り、さらに男女の双子を産んだ。 彼女を取り囲む、色と欲の渦巻く年下男子たち。それを見た瞬間、高遠陸は初めて恐怖を知った。 「澪……俺が間違ってた。頼む、一目でいい、子供たちに会わせてくれ!」”
1

第1章 ただの身代わり

06/07/2028