離婚届と黒いグローブ
“結婚七年目の記念日.私は子どもを望まない主義のことで陸原湊と喧嘩し,そのまま気まずく別れた. その夜,彼の"幼なじみ"がSNSにこう投稿していた. 「あなたがサーキットに立ったあの日から,今や名声を手にするまで,ずっと私だけがあなたのそばにいたの」 笑顔で見つめ合う彼女と陸原湊. 周囲の仲間たちは,からかうような視線を向けていた.まるで恋人同士のように. でもこの七年間,陸原湊は一度も私をレース場へ連れて行ってくれなかった. 「300キロで走るマシンばかりなんだ.君が怪我したら,俺が一番苦しいよ.」 そう言っていた彼の声は,いつからか面倒そうに変わっていた. ずっと大切だったのは--最初から彼女だったのだ. 私は静かに指輪を外し,メッセージを送った.[陸原湊,離婚しましょう] そのあと,ガラスケースにしまっていた黒のグローブを手に取る. --300キロが"危険"?それを決めるのは,私の方よ.”