捨てられ主婦、正体は世界的カリスマ

捨てられ主婦、正体は世界的カリスマ

木村 美咲

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織田七海は3年間、専業主婦として家を支え続けたが、その努力の末に待っていたのは元夫の冷酷な裏切りだった。 元夫は本命のために彼女を捨て、全都市中の笑いものにしたのだ。 しかし、元夫と別れてからの織田七海の人生は一変。隠していた正体が次々と明らかになり、その才能と魅力で世界中を驚かせる存在となる。 やがて、彼女が万能の大物であると気づいた元夫は後悔に駆られ、必死に追いかけ始める。ついにはダイヤの指輪を手に、片膝をついて彼女の前で懇願した。「七海、やり直そう!」 織田七海:「ふざけんな!!!」 高田宗紀は愛する妻をしっかりと抱き寄せ、冷ややかに告げる。「人違いだ、これが俺の妻だ。 それとお前は……誰か!そいつを外へ!川に放り込んで魚の餌にしろ!」

チャプター 1 見捨てられた妻

「離婚しよう」

そのたった一言で、織田七海は名家から見捨てられた妻となってしまった。

三年間、西永良陽に尽くしてきた結果が、この胸を抉るような痛みだった。

今日は二人の三回目の結婚記念日だった。七海は良陽をデートに誘おうと、弾む心で彼のオフィスを訪れた。しかし、目に飛び込んできたのは、デスクの上に置かれた高価な宝石のネックレスだった。

てっきり自分への贈り物だと思ったのだが。

デスク上のネックレスに注がれる彼女の視線に気づいた良陽は、さっとその美しいケースの蓋を閉じた。

「深悠が戻ってきたんだ。これは彼女への贈り物だ」 その言葉は、余計な期待はするなという、冷たい警告のようだった。

そういうことだったのか。

七海はうつむいた。厚い黒縁メガネが、その表情に浮かんだ苦渋と寂寥感を覆い隠す。

彼が天にも昇るほど寵愛した、忘れがたい女性が帰ってきたのだ。

一方、自分はと言えば、三年経っても彼の心に入ることも、その体に触れることさえ許されなかった、ただの「置物」だ。そして今、その置物は用済みとばかりに、ゴミ箱に捨てられようとしている。

うつむいて黙り込む七海の姿に、良陽は少し苛立った。

「慰謝料は払う。だから、さっさと離婚に応じろ。いつまでも君のいるべきではない場所に居座ろうなんて思うな」 良陽の声には、警告の色が滲んでいた。

正直なところ、織田七海という女性は、容姿もスタイルも、家事の能力も申し分なかった。ただ、あまりにも地味で面白みに欠ける。

言うなれば鶏肋のようなもの。食べるほどの味はないが、捨てるには惜しい。

彼女は完璧な主婦ではあったが、彼の妻にはふさわしくなかった。

それでもなお黙り込んでいる彼女に、良陽は眉をひそめて冷たく言い放つ。「考える時間を三日やる。だが俺の忍耐にも限界がある。あまり待たせるな……」

「必要ないわ。サインする」 七海はペンを取ると、一切の躊躇なく離婚協議書にその名を記した。

二人は市役所へ向かい、ほどなくして離婚届は受理された。

離婚という文字がやけに目に刺さる。胸は痛んだが、同時に安堵も感じていた。

いつか西永良陽の心を溶かせるかもしれない――そんな淡い期待を抱きながら、結婚生活を送る必要はもうないのだ。

希望と絶望の間を繰り返し、自分を追い詰める日々は終わった。

じわじわと痛めつけられるより、一度で終わらせる方がいい。これで、すべてが終わったのだ。

その時、良陽の携帯が鳴り、七海の思索は中断された。

彼は焦った様子で電話に出る。「何だって?深悠が病院に? すぐ行く!」

電話を切るやいなや、西永良陽は車に乗り込み、走り去って行った。こちらを一瞥することもなく、ましてや家まで送る気など毛頭ないようだった。

北村深悠のこととなると、彼はいつもそうだ。あの女性のことしか目に入らなくなる。

良陽が去った後、一台の黒と赤のブガッティが七海の前に滑るように停車した。

運転席から現れたのは、親友の古市愛理だった。クールな黒のセットアップに身を包み、彼女は笑みを浮かべて七海を出迎えた。「女王、地獄からの脱出おめでとう」

愛理は七海に車のキーを投げ渡すと、挑発的に眉を上げる。「景気づけに、ひとっ走りどう?」

「乗って」 七海は迷わずアクセルを踏み込み、市役所を後にした。

ブガッティ・ヴェイロンは浜松道を、速く、そして安定した走りで駆け抜けていく。

「これはバーでお祝いしなきゃでしょ? あんたが止めなきゃ、さっきあのクズ男の前でシャンパン開けてやったのに!」と愛理が不満げに言う。

「任せるわ。 でもその前に、美容院に寄りたい」 七海に異論はなかった。確かに、少しアルコールが必要な気分だった。

愛理はさらに尋ねる。「あんたが表舞台から消えて三年。多くの人が血眼になって探してる。いつ復帰して、医学界を震撼させるつもり?」

「今のところ、その気はないわ」 七海は淡々と答えた。

「ふん」と愛理は鼻を鳴らす。「あんたの元夫も、愛する女を治すために必死で探してるって聞いたわ。笑える! まさか自分が捨てた妻こそが、あの神医『キン』だなんて、死んでも気づかないでしょうね」

七海は何も答えなかった。

……

その頃。

病院へ急ぐ車内で、良陽は秘書に苛立ちをぶつけていた。「まだ『キン』の情報はないのか!」

『キン』は世界的に有名な神医だが、この三年間、忽然と姿を消し、誰もその行方を掴めていなかった。

これまで、神医『キン』の素顔を見た者は一人もいない。 男か女かさえも分かっていない、謎に包まれた人物だ。

「松井会長、あらゆる手を尽くしましたが、依然として『キン』の消息は……」

「続けろ!地球の裏側まで探してでも見つけ出せ!」

「はっ!」

良陽は焦燥に駆られながら病院の駐車場に車を滑り込ませ、ドアを開けるのももどかしく病棟へ駆け出した。

どんな代償を払ってでも、神医『キン』を見つけなければならない。北村深悠の体は、もう限界に近づいていた。

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捨てられ主婦、正体は世界的カリスマ
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