こころのけしき
電車の中で一人の青年が、気難しそうな顔をして静かに座っていた。ゆ
の人混みはどうもない。小さく体を畳んで
し揺れると、青年の方に中年小太
すいません」と頭を下
ムに吸い込まれていく。電車が止まり、アナウンスが流れるとドアが開
。青年はすこし歩くと立ち止まって一旦息を吐い
はあるまいが、実家に全く頼らず生きてきた。もっと言えば、母からの心配の連絡も一切取らず
か。それは、仕事仲間のパートのおばさんに「たまには帰って顔でも見
れない、には
い頃からしつこく「跡を継ぐんだ」と言ってきた。そして、息子に出来るだけいい状態でバトンを渡せるように、それ
とに決めたのである。父はこれに反対し、ついに折り合いつかず激しい口論と
取り付けてある椅子にゆっくりと腰を下ろす。少し前かがみになって、少
。乗っていく。電車ががたんと一息吐いて発車する。また下を向く。そんなことを繰り返し見て、す
続く道を登ったり降りたりもしながら少し歩く。我々にとっては、何の変哲もない、住宅街の一画でも、坂の多い面倒な道路でも、青年にと
歩調もぎこちなくなる。綺麗にカットした短い髪の毛を
。こじんまりとした家だ。兄弟も居ないので、これくらいの家が丁度い
ドアの前で突っ立っていると、玄関に誰
…あんた何
、白髪混じりの髪にパーマをかけ、小太
……なん
べてるのかい。そうだ、さっき夕飯の
そうな顔をしたが、一転、笑顔になっ
ばって、身じろぎした。しかし、そ
部の禿げ上がった痩せ男が姿を見せる。緩めた足は硬直する
ら、お
っくら出
、気をつ
飛んだやり取りは青
青年の父は青年の横をすり抜け
そうだっ
と上がんなさいと言っ
いる。それにしても、夕飯の準備が終わっているはずなのに遅いと感じる。退屈そうにテレビ
と待たせち
や、あり
分の料理を見て、残し
年の右隣
いえ、心配してたのよ。お父さんもああしてるけど、心配で時々寝
へえ
て笑った。肉じゃがに手をつける。温かく、舌にあたり、喉を通って、腹の奥底から熱が伝わるよう
を事細かに次々と聞いたり話したりする母に
たわ、食べ終わったら食器持ってきて
て、台所へ
時に1滴の透明な液体が、
下に出た時、物音を立てないように静かに帰ってきた風の父と遭遇
はあまりいい所
もないよ。悪いと
……そ
、父はそそくさと寝
されていくように都会の緊張は蔭を潜めた。南には山が見える。山の稜線を眩く彩る、早朝の太陽光が
が様々な情景と共に思い返されているよ
行っちゃ
言う。うん、と
よ、体に気をつけなさいよ
れも
母より下がったところの男は、意を決した
…しっ
後ろに隠してい
、と青年は躊躇したが、顎で
う、と父に
中を見ると、立派な黒の箱に包まれた
「あの時はすまんかった。達者で。また
か、腹の底からのうめき声と泣きじゃくる自