愛しているから
作者福子
ジャンル恋愛
愛しているから
お母さんがどんな風に、誠君に私のことを説明してくれたのかは、わからない。 でも、お母さんから話を聞いた誠君は何も変わらなかった。
「ヒロ、お腹すかないか?」
「ん…」
「お母さん、帰りは送って行くので、少しヒロといてもいいですか?」
「あら、じゃあお願いしようかしら?浩美、誠君と何か食べてくるなら、晩ご飯は軽めにしとくわね。じゃ、誠君、よろしく」
誠君は、私の右手を取って、3人でよく行ったパーラーへ連れて行ってくれた。
「懐かしいよな、ここ。俺さ、ここのオレンジクレープが食べたくて帰ってきてからよく来てるんだよ」
2人で一つのオレンジクレープを食べる。 優子も大好きだったこの味、また涙が溢れてくる。
「そっかそっか…」
誠君はまた、私の頭を撫でた。 泣いてもいいんだよと言われているようで、とても安心する。あの頃と変わらない懐かしい味に、じんわりと心まで温かくなった。
「そういえば、来月、クラス会やるみたいだけど、連絡きた?」
「ん…」
わからないという意味で首を傾げる。
「幹事はあの溝口なんだってさ。でも、地元にいる人間だけとか言ってたからなぁ。ヒロにはまだ連絡行ってないのかも?」
「…」
「どうする?行ってみる?」
「か…んが…える」
「そっか。じゃ、行きたくなったら俺が送迎するから心配するな」
クラス会。 誰が集まるのかな。 行ってみたい気もするけれど、今の私だとうまく会話にも入れないだろうな。 溝口君か…誠君とは小学生の時からの友達だと言ってた気がする。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
数日後。
クラス会は、誠君が溝口君に話してくれて招待状が届いたけど、やっぱり行けなかった。
「また次やる時は参加してくれって言ってたよ」
「うん…」
誠君は、クラス会の帰りにうちに寄ってくれて、集まった人たちの話を聞かせてくれた。 意外な人たちが夫婦になってたりして、私は驚いたり笑ったりした。
そういえば。
先月、あのデパートで偶然、会ってから、毎日のようにうちに来てくれる。 そして、何気ない話をしてくれる誠君に思い出させてもらった、私は笑ったり驚いたりすることができたんだということを。