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Yokubo no Yamini Furisosogu eien no Shunkan

その令嬢、多才につき。

その令嬢、多才につき。

炎月 陽向
【離婚後、正体バレ、ざまぁ、溺愛、元夫の後悔】 若い頃、水野海月は瀕死の状態だった水野海月を救った。後年、藤本暁が交通事故で植物状態に陥ると、彼女はその恩を返すため、迷うことなく身代わりとして藤本家に嫁ぎ、その医術で藤本暁を治した。 二年間の結婚生活と献身的な介護は、すべてが恩返しのため、そして彼に少しでも自分という存在を見てほしかったから。 しかし彼女の払ったすべての犠牲は、藤本暁の「本命」が帰国した時、泡と消えてしまう。 藤本暁から無情にも突きつけられた離婚協議書に、彼女は潔く自分の名前を書き入れた。 誰もが彼女を「名家から追い出された妻」と笑いものにしたが、誰も知らなかった。サーキットで他を寄せ付けないレーサー「moon」が彼女であり、国際的に有名なファッションデザイナー「Xi」も彼女、天才ハッカー「M」も彼女、さらには世界に名を馳せる神医までもが、彼女の別の顔だったとは……。 元夫は後悔の念に苛まれ、地面にひざまずいて彼女に復縁を懇願する。 しかし、とある若き総帥が彼女をその腕に抱き寄せ、こう言い放った。「失せろ!こいつは俺の妻だ!」 水野海月:「?」
都市 CEO陰険傲慢/支配復讐離婚
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私は、目の前に座っている女の子を、じっと見つめている。その子もまた、黒い眼鏡越しに、不安そうに私のことを見つめている。 とりあえず、後れ毛をまとめ、唇をぎゅっと噛んだ。

その子も、そうした。

まばたきをしたら、その子も、そうした。

「エミーったら。もうにらめっこは済んだ?」 後ろから声が聞こえて、はっとした。 「いい加減にして! あんた、もう5分もにらめっこしてるのよ! ほんと、気味が悪い!」

鏡越しに、親友をちらっと見た。 私のベットの端に腰を下ろし、腕を組んで、こちらをにらみつけている。

鏡に映る自分に視線を戻すと、 「どうかな、ベス。 彼、この格好気に入ってくれると思う?」

「2時間もかけて、おめかししてから? そうね、気に入ると思うわ。 エミーのこと、拒絶するはずないわ。永遠の愛を告白すればね」ベスの隣で座っている、もう一人の親友、キャシーは請け合った。

拒絶。 何年もの間、悪夢のごとく何度も私を悩ませてきた、この言葉。 今日この日を、6年間ずっと待っていた。 彼がその言葉を告げた日から、 ずっと。

今回も、私のことを拒絶したら…どうすればいいのだろう。

フラッシュバック〜

「エース、私の王子様になってくれませんか?あなたのプリンセスになりたいの」 9歳の誕生日に、兄の親友のエースがシンデレラドレスをプレゼントしてくれたとき、彼にこう聞いた。

すると彼は、ばかげた質問だと笑い、すっかり振られたと思った。 でも、私のがっかりした顔を見ると、かがみこんで、あの冴えた灰色の瞳で、私のターコイズブルーの目を覗き込んだ。 「君は、僕のプリンセスさ」

「ほんとう?」 クリスマスツリーのように、ぱっと気持ちが輝いた。 「それって、私と結婚するということ?」

彼は唇を噛み、楽しげな眼をして答える。 「ごめん、ローズバッド! 結婚はできない」

「どうして?」 ふてくされた顔で、きき返す。

「それはつまり、まだその時じゃないってことさ。 君は若すぎるからね」

「じゃあ、その時って、いつ?」 期待に胸をふくらませて、エースを見つめる。

「バラのつぼみ、ローズバッドが花開くように、君も大人になったらね」

フラッシュバック終わり〜

バラが花開く日を、心待ちにしていた。 でも、その時はいつなのだろう。 忘れないように、彼がくれた言葉を日記に書き留めた。

私たちは、もう大人なんだから恋人くらい作れるわよと、キャシーは言った。 確かにキャシーは、14歳ですでに彼氏がいたし、15歳の今の彼は、もう4人目だ。

私だってわかっている。エースはあの日、9歳の傷つきやすい少女の心を傷つけまいと、取り繕ったに過ぎないということを。 でも、そんなことはどうだっていい。 今日こそ、私の気持ちを告白するの。 今回は、本気なんだから。

「エミー、とても魅力的よ! ウェーブのかかったロングヘアの方が好きだったけど、 こっちの髪型も悪くないわよ」ベスは感想をのべた。

腰まであった髪を肩の長さまでバッサリと切り、ウェーブをストレートに整えた。 テスと瓜二つ。 姉のテスと、兄のトビアスは双子で、 もちろんエースはテスとも、とても仲が良い。 以前エースが、テスの髪型がお気に入りというのを聞いて、 私も、テスそっくりの髪型に変えたってわけ。 テスはブロンドで、私は栗色だけど。

「今はショートヘアが流行りだし、 エースはショートヘアが好きなの」マニキュアを塗ったつめをチェックしながら答えた。 それもテスとそっくりになるように。

エースには、自分の好みがある。 今まで彼が選んだガールフレンドはみな、姉に似ている。 美しくて上品。 そう、私は彼女たちに嫉妬していた。 でも、いつも付き合いは長くは続かなかった。 私たちが一緒になれば、エースの人生には私だけ。

そう思うと、頬が赤くなる。

だから、姉そっくりのガールフレンドになろうと心に決めた。 ところで、エースは私だと気づくかしら?

その証拠に、今日の格好はまさに、 テスの洋服に、テスのスタイル。 テスの部屋に忍び込み、大切にしている香水をくすねることだってした。

「ねえキャシー、このドレス、みじかすぎない?」 テスと同じ服を着たかったが、なんだかどこか物足りない気がする。 テスは、ぴったりとしたミニドレスが、とてもお似合いなの。 体つきも、グラマラスで、スタイル抜群だけど、 私ときたら、痩せこけている。 まあ、まだ15だから仕方がないんだけどね。

「とんでもない! こんな素敵なドレスを着ているのだもの、いちころよ! エースにエミーの魅力を、気がつかせたいんでしょう?」 キャシーは眉をつりあげる。

「そうね!」 私は深く息を吸って、うなずく。 そうこなくっちゃ、エミー! あんたなら、できるわよ!

「よし、じゃあ行こ! 急がないと、お兄さまとお姉さまをお迎えできないわよ」通りを歩きながら、キャシーの甲高い声が響いた。

今日は兄と姉の19歳の誕生日。 ハットン家のパーティは、決まって豪華と評判なので、 皆、この特別なイベントに喜んで参加した。 この町の名だたるファミリーは、だいたい招待されている。

玄関ホールに到着すると、そわそわして、 手汗も出て、ドキドキしてきた。 今夜エースと会うと思うと、緊張する。 それに、このみじかすぎるドレスのせいで、ますます居心地が悪かった。

招待客たちにまぎれたパパとママを見つけた。 いつもと変わらず、二人は寄り添い、 互いの腰をぴったりつけている。 結婚して20年経っても、二人は深く愛し合っている。

その様子を見て、明るい気持ちになった。 私とエースが、いつかそうなったら…

「エミー!」 ママの声でわれに返った。

私はにっこりと笑いながら、ゆっくり近づいた。

「まあ! なんてこと! 私のかわいい赤ちゃんが、すっかり美人になって!」 ママの顔から、まばゆいばかりの笑顔がこぼれる。

「そうよね」 私は、頬を赤らめた。

「もちろんよね! もっと派手にしてもいいくらいだわ!」

パパは何も言わなかった。 娘の今の格好が、あまり好きじゃないみたい。 いつものスタイルじゃないだから。

「お姫様、パパが買ってあげたガウンはお気に召さなかったかな?」 パパは口を開いた。

気に入ったわ。 とっても。 でも、エースの好みじゃないの。

「もちろん、気に入ったわ!パパ。 でも…それに似合うジュエリーが見つからなくて」と嘘をついた。

パパはうなずく。

ママには、お見通しのようだ。 私がアキレス・バレンシアに思いを寄せていることは、ママも、みんなも知っていた。 でも片思い以上だということは、誰も気がづいていない。

私が7歳のとき、兄のトビアスから紹介され、出会ったその日から、アキレスは、私の愛しの王子様になった。 ぼんやりとした記憶の中で、その日のことは今でもはっきりと覚えている。 そして、学校のいじめっ子から助けてくれたときから、私のヒーローとなり、 いつしか、私の心そのものになった。

思わず頬が紅潮して、顔を隠したくなる。

エースは、どこにいるのかしら?

あたりを見回した。 そろそろ着いてもいい頃なのに。 先月、彼とチェスをしたとき、今晩来てくれるって約束してくれたし、 今まで私との約束を破ったことは、一度もなかった。

かつては、毎日のように我が家に遊びに来くれた。 でも、去年あの悲劇が彼の一家を襲ってからというもの、しだいに足が遠のいていって、 エースは変わってしまった。 かつては、おっとりして陽気だったのに、だんだん怒りっぽくなってしまったけれど、 私に対しては、変わらず優しかった。 月に一度は、遊びに来てくれて、 チェスをすることだってある。

テスとトビアスがスポットライトを浴びて、華々しく階段を降りてくると、招待客たちは歓声をあげた。 トビアスは、黒のタキシードがよく似合い、テスは、ピンクのミニ丈の妖精のドレスを身にまとい、さながら本物の妖精のようだ。 友人たちが一斉に拍手し、あちこちで口笛を吹くと、二人はカメラマンと集まった人たちに微笑みかけた。

でも、まだエースの姿は見当たらない。

私は席を外して、あちこちと探し回った。

どこにいるの?

「わっ!」

がっしりした胸にぶつかり、よろめき、 私の腰に両腕が回った。

「す、すみま…」見上げると、喉に息がつかえた。

冴えた灰色の瞳が、私を見おろしている。 濃い無精ひげはきれいに剃られ、くっきりとした顎があらわになっている。 漆黒の髪はバックに整えられ、今日は右眉にリングはなかった。 凛々しい目の下にくまがあり、前よりいくぶん痩せてはいたが、それでもなお、彼は息をのむほどハンサムだった。

「ローズバッドなの?」 私を起こすなり、彼は額にしわを寄せた。 唇を固く閉じて、私の姿をじろじろと見つめている。 「何という服だ?」 ギリシャ語のアクセントがきつくなった。

怒るといつもこうなる。

私は、瞳を大きく見開いた。 この格好、気に入らないのかしら?

「ねえ、どうして? 似合わない?」 私は唇をかんだ。 「気に入ってくれると思ったのに」

私の髪型と濃いめの化粧を一瞥すると、さらに眉をひそめた。 それから、首を横に振り、 「俺がどう思おうと、関係ないよ、エメラルド。 好きな服を着ればいいのさ」 そう言い残すと、立ち去った。

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