矢野拓也
小説1部発表
矢野拓也の小説・書籍全集
嘘つきと呼ばれた末期の妻
都市 末期の膵臓がんと宣告された. 作曲家としてのキャリアも, 愛する家族も, すべてを夫の成功のために捧げてきた私の人生は, もうすぐ終わる.
しかし, 私の病気を知った家族は, 私を嘲笑った. 嫉妬深い従姉妹・佳織が偽造した診断書を信じ込み, 私の苦しみを「気を引くための嘘」だと断じたのだ.
「お母さんは嘘つき! 」
愛する娘にまで突き放され, 私はたった一人, 北海道の山小屋で静かに死を待つことを決めた.
それなのに, 彼らは私を追い詰める. 佳織は私を「監禁犯」に仕立て上げ, 夫は私を業界のパーティーに引きずり出した.
「まだ使えることを証明しろ」
震える手でピアノの前に座る私に, 彼は冷たく言い放った.
家族という名のハーモニーは, 不協和音に変わり, 私の心は完全に砕け散った. なぜ, 私の真実は誰にも届かないのか.
屈辱と絶望のなかで, 私は息を引き取った. しかし, 私の死は, 終わりではなかった. 私が残した一通の手紙が, 彼らの偽りの世界をすべて破壊し, 本当の地獄を見せることになる.