【本物と偽物の令嬢+最強の大物+豪邸の寵愛+逆転劇、禁欲系の中京の王子x多重仮面の偽令嬢】 瀬川清美は一夜にして、瀬川家の令嬢から田舎の貧農の娘へと転落した。 偽物の令嬢に悪意をもって陥れられ、婚約者には軽蔑され恥をかかされ、さらには養父母からも家を追い出され……。 誰もが彼女の失敗を笑い、田舎へ戻って畑を耕すしかないと見下していた。だが、彼女は一転して中京市の名門一族の真の令嬢として姿を現す。 それだけではない。 国際的な天才ハッカーは彼女であり、一流のジュエリーデザイナーも彼女、謎めいた人気作家も彼女、さらには医術の達人でもあるのだ……。 養父母は後悔し、育ててやった恩を盾に資産の半分を差し出せと迫る。 瀬川清美は人前でカメラを差し出し、養父母の醜悪な本性を暴き出した。 元婚約者もまた後悔し、復縁を望んでしつこく付きまとう。 瀬川清美は冷たく笑い放ち、「お前ごときが?」と一蹴し、手を振って彼を中京市から追い出す。 彼女はあざとい女を叩き潰し、クズ男を踏みつけ、養父母に身の程を思い知らせる。 さらに家の中には「田舎者のお前なんて嫁ぎ先があるはずない」と嘲る偽善的な女性もいた。 その夜、中京の御曹司が彼女の腰を抱き寄せ、甘く囁く。「嫁がなくていい。俺が自ら婿入りする」
「この恩知らず!うちで二十三年も育ててやったのに、恩を仇で返すなんて!今日からもう出て行け。田舎に帰って、本当の親のところへ行け!」
瀬川清美の前で、金の腕輪と翡翠の腕輪を左右の手に光らせ、艶やかなチャイナドレスを纏った貴婦人が、あからさまな嫌悪の眼差しを向けていた。
その女性こそ、清美が二十三年間『お母さん』と呼んできた瀬川佐喜子だった。そして、その腕の中には、佐喜子にそっくりな少女――瀬川心葉が抱かれていた。
「お母さん、いいのよ。お姉ちゃんだって、きっとわざとじゃないの。私が急に現れて、お父さんとお母さんの愛を全部持っていったみたいで、受け入れられなかっただけ……だから、お願い、お姉ちゃんを責めないでね」
佐喜子は腕の中の娘を慈しむように見つめ、ちらりと清美に視線をやると、嫌悪を隠そうともせず吐き捨てた。「あの子こそ本当の悪い子よ。二十三年間、心葉に注がれるはずの愛を、あの子は独り占めしてきたんだから。 どうしようもない田舎者のくせに、瀬川家で贅沢三昧してきた。それなのに、心葉はどれだけ苦労してきたか……!ほんとに許せない!」
心葉の瞳の奥に、ほんの一瞬、勝ち誇った光が宿る。だがすぐにそれを押し隠し、涙に濡れたような哀れさを浮かべてみせた。
つい先ほど、彼女はわざと階下でコップを落として割り、頬を切り傷つけた。そしてそれをすべて清美の仕業に見せかけたのだ。両親は疑うこともなく彼女を加害者と決めつけ、弁明の機会さえ与えなかった。
――そう、彼女の狙いは清美を瀬川家から追い出すこと。
田舎者のくせに居場所を奪い、しかも気取った顔をしている偽物――瀬川清美など、存在自体が癪に障る。
心葉は目の前の清美の美しさに一瞬たじろぎながらも、なおさら自分のやり方に迷いはないと心に決めた。
瀬川幸正も眉をひそめ、あからさまな嫌悪をにじませた。「まさかここまで性根が腐っているとは……妹の顔まで傷つけようとするなんて許さない!そんな娘にこの新容市にいる資格はない。お前の実の親にはすでに知らせてある。今すぐ荷物をまとめて、霧渓里に帰れ!」
本来なら、幸正は清美を手元に置いておくつもりでいた。二十三年ものあいだ大金をかけて育ててきたのだ。たとえ雲野浩司との縁談が成らなくても、離婚歴のある男とでも結婚させれば、瀬川家にとって新たな取引の足掛かりになり得た。
だが、このところ清美はことごとく心葉を傷つけ、
彼女を連れ立っての縁談の席も台無しにしてきた。結果、一つとしてまとまらなかった。
役に立たなくなった以上、幸正にとって清美を養い続ける理由は、もはやどこにもなかった。
清美は俯いたまま、瞳の奥に冷ややかな嘲笑を浮かべていた。
この数か月で、瀬川家の本性を嫌というほど思い知らされたのだ。
瀬川家は数年前に新容市の名門へと食い込んだ。
二か月前、幸正が重い病に倒れ、清美に輸血を求めたことがあった。そこで初めて、清美の血液型が希少なRH陰性であることが分かり――彼女が瀬川家の実の娘ではないという事実が露わになった。
その途端、瀬川家はありとあらゆる人脈を使って、本当の血を分けた娘である心葉を探し出した。