俺のかつて生まれ育った団地だけど、そんな懐かしい雰囲気なんて浸れない。
二十棟もあった集合住宅で、当時はとても活気があった。今ではまさしく廃墟の塊と言っていい。なぜここに、またいるのか。
俺は少年時代、ずっと悪夢に悩まされていた。血が滲んだ包帯を全身に巻いた人のような何かが、十年近くも夢に現れていた。どんな状況下だろうが、不意に現れては必ず俺に襲い掛かっていた。しかもすぐには俺を仕留めにかからない。必ず全身を俺に見せてから、じわじわと迫ってくる。当時臆病だった俺はこれにかなり泣かされていた。幸いだったのは、やはり夢にしか出てこなかった事だろうか。
そんな夢は団地から引っ越してから急に見なくなり、次第にそんな事は忘れていった。