社長の素顔は、私の“夫”でした
浜空
、足元には大きなスーツケ
三十分が経過しているというのに、一年前に電
顔も知らぬその男に対して、
のに、時間も守
女の脳裏には、一年前の慌ただ
島夜斗が突然重い
した夢に、祖父はひとつの願いを口にした
引き取って育ててくれたのは霧島夜斗だった。その
に、顔も知らない男と電撃
なかった。婚姻届すら他人の
と――夢が知っているのも、霧
の妥協は、果たして正
再び時間を確認した。
話をかけようとしたそのとき、背後から耳
女の目の前にさっと滑り込むように
りし、反射的に声を上げた
、彼女の従兄――
ざとらしく目頭を拭うしぐさをしてみせた。「君が帰ってくるなんて一大事じゃ
態度に、夢はもう
めたまま、何
片手を彼女の肩にかけ、もう一方の手でスーツケ
」 夢が立ち止ま
ふと思い出したように目を細めた。「まさか――
たが、その表情がす
た。「忘れたほうがいいよ。君たち、結婚しても
言葉を失い、ただ沈黙
に来てくれるなんて期待してるのか?」
さな声で反論した。「でも、祖父が言
が反故にするなんてこと、ないは
ように肩をすくめた。「待つにしても、
――人混みの向こうから、すらりとした大柄な
、通話しながら足を止めない。「…もう空港
聞こえてきた。「ちゃんと覚えてる?夢ちゃんは今日は赤いワン
……」そう答えかけた瞬間、
髪。黒のスーツケース。―
男に肩を抱かれながら、車
が、急に冷
もう切
た笑みが浮かび、深い瞳には
しまうと、きびすを返
先――そこには、さきほどのスポーツカーの中
蒼からは、女の正面の顔までは見えなかった。
る見るうちに
かに、乾いた笑
最初から予想でき
汐見浜に現れず――別の相手を見つ
マートフォンを取り出すと、
、アクセルを踏み込んで
—
のシンプルで上品なビジネススーツ
大企業だ。その本社に入れるのは
擢され――そのポジションは、なんと宮崎
が、夢を伴って宮崎蒼
上司――宮崎蒼こそが、自分の電撃婚の相
公にしている名前ではなく、本来の本名である「蒼穹空」の名を使っていた。この事