「妹だ」と言った彼の、今さらの独占欲

「妹だ」と言った彼の、今さらの独占欲

渡辺 知佳

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十七歳のあの年、少女は隣家の年上の兄と禁断の果実を味わい、誰にも知られぬまま密やかな関係を始めた。 その日、彼女は間違えた問題を抱えて、おずおずと彼に教えを請いに行った。 初めて芽生えた恋心はあまりにも熱く、彼はその気持ちをすぐに察し、優しく導いてスカートの裾をそっとめくらせた。 彼は微笑みながら言った。「怖がらなくていい、痛くないよ。」 彼女の不安も戸惑いも、その甘く優しい笑みに溶けていった。 それからというもの、彼女が隣へ訪ねるたび、彼は声に笑みを含ませて言う。 「こんなに一生懸命に問題を解いてあげてるんだ、少しご褒美をくれる?」 彼女は真っ赤になって頷き、彼が情に駆られるたび、額に口づけを落とされる。「本当にいい子だ、大好きだよ。」 彼は約束した。彼女が自分と同じ大学に合格したら、公に付き合おうと。 そして、彼女は合格通知を手に、胸を弾ませて彼の家を訪ねた。だが耳に届いたのは、心ない冷笑の声だった。 「俺が好きなのはあの子だけだ。お隣の子なんて、ただの妹みたいなものさ。」 「ちょうど彼女が交換留学で一年いなかったから、顔立ちが少し似ていたあの子で代わりをしていただけ。実際あんな太った子なんか、本来なら絶対に相手にしなかった。」 「もう本物が戻ってきたんだ。厄介な代用品はここで切り捨てるだけだ。」

第1章彼女は厄介者

十七歳の年、秦煙は隣家の兄である陸知衍と禁断の果実を口にした。誰にも知られることのない、秘密の恋だった。

あの日、彼女は間違えた問題を手に、おずおずと彼に質問をしにいった。

恋を知り始めたばかりの少女の想いはあまりに熱く、彼はその熱情に気づいていた。そして、優しく彼女を導き、自らスカートの裾をたくし上げるように仕向けたのだ。

「怖がらなくていい。痛くしないから」

彼女の不安と拒絶は、彼の優しく蠱惑的な微笑みの前に霧散した。

あの日を境に、秦煙が隣家を訪ねるたび、彼は楽しげな声でこう囁くようになった。

「お兄ちゃんは、こんなに一生懸命君に勉強を教えてあげてるんだ。だから煙煙、ご褒美をくれないかな?」

彼女が頬を染めて頷くと、彼は情が昂ぶるたびにその額に口づけを落とした。「煙煙、本当にいい子だね。君のことが、大好きだよ」

彼と同じ大学に合格したら、二人の関係を公にしよう――彼はそう約束してくれた。

だが、合格通知書を手に、喜び勇んで彼の家を訪れた彼女の耳に飛び込んできたのは、彼の気だるげで、嘲るような声だった。

「俺が好きなのは雪煙だけだ。秦煙は、ただの隣の家の妹だよ」

「雪煙がこの一年、交換留学で海外に行っていなければ。あいつの目元が、雪煙に少し似ていなければ。あんな太った女と、俺が付き合うことなんて万に一つもなかった」

「雪煙が帰ってきたんだ。そろそろ、あの厄介者を切り捨てないと」

……

玄関の外に佇んでいた秦煙は、その場で凍りついた。全身の血液が、まるで氷になったかのように。

「陸さん、いつあいつを振るつもりなんだ? どうせならその前に、俺たちにも味見させてくれよ」

「ぽっちゃりした子って、まだ誰も試したことないんだよな。肉付きが良くて触り心地がいいって言うし、さぞかし絶品だろうぜ」

リビングに、陸知衍の仲間たちの下卑た笑い声が響いた。

秦煙の心は、奈落の底へとどこまでも沈んでいく。不安が胸を締め付けた。

今すぐここを立ち去り、陸知衍の連絡先をすべてブロックするべきだ。頭ではわかっているのに、足が地面に縫い付けられたように、一歩も動けない。

心の片隅に、まだ一縷の望みが残っていた。たとえ自分のことを好きではなかったとしても、彼が、私を友人たちの慰みものにするほど、卑劣な人間ではないはずだ、と。

その言葉に、陸知衍は顔をしかめた。「だめだ。あいつは俺にベタ惚れなんだ。同意するはずがない」

誰かが卑劣な提案をした。

「酒でも飲ませて、目隠ししちまえばいい。酔っ払っちまえば、こっちのもんだろ」

陸知衍は冷たい眼差しで黙り込んだ。

何かを感じ取った仲間の一人が、探るような目で彼を見た。「陸さん、まさか本気であのデブのこと、好きになっちまったとか言わないよな?」

秦煙は息を殺した。心に、ほんのわずかな希望の光が灯る。

だが、その光は次の瞬間、冷水を浴びせられて無残に掻き消された。

陸知衍の、冷酷で、嫌悪に満ちた声が響き渡った。「俺があいつを好きになる?あり得ない」

「成績は悪いし、デブで根暗で、度胸もない。あいつのどこに、俺が好きになる価値があるっていうんだ?」

「お前らがやりたいなら、好きにすればいい。今から電話して、ここに呼び出す」

その言葉の一つひとつが、氷の刃となって容赦なく秦煙の心臓を抉った。

目の前が暗転し、立っていることすらままならない。

十年間も、ずっと焦がれてきた陸知衍。その彼が、自分をこんな風に見ていたなんて……。

つい昨日、腕を引かれキスをされたときには、「本当にいい子だね。素直で聞き分けのいい君が好きだ」と言ってくれたばかりなのに。

それが今では、氷のように冷たく、吐き捨てるような声で、デブで根暗で、臆病で、好きになる価値すらないと断じる。

秦煙のスマートフォンはマナーモードに設定されていた。陸知衍から電話が来ても、ただ液晶画面に表示される彼の名前を、虚ろな目で見つめるだけだった。

部屋の中にいる誰も、彼女がすぐ扉の外に立っていることなど知る由もない。

応答のないままコール音が途切れ、すぐに陸知衍からメッセージが届いた。【煙煙、合格通知書は受け取ったか?】

【受け取ったなら、すぐに家に来い。サプライズを用意してある】

秦煙の手足は氷のように冷え切っていた。大粒の涙が頬を伝い、ぽたり、ぽたりと床に落ちていく。

長い沈黙の後、彼女は乱暴に涙を拭うと、踵を返して自宅に戻った。そして、赤く泣き腫らした目で両親に告げた。

「お父さん、お母さん……私、もうこの国で大学に行くのはやめる。二人と一緒にイギリスへ移住して、向こうで勉強したい」

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