ゴミ扱いされた私が、実は世界的権力者だなんて言えない

ゴミ扱いされた私が、実は世界的権力者だなんて言えない

Rabbit4

都市 | 2  チャプター/日
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幼くして捨てられ、母を奪われた――。池田新奈は誓う。私に属するすべてのものを、この手で奪い返すと。 上京市への帰還。しかし世間の目は冷ややかだ。「無能な落ちこぼれ」「奔放な不良娘」……それが、彼女に貼られたレッテルだった。 誰もが口を揃えて嘲笑う。「あの池田新奈を見初めるなんて、横山宴之介はどうかしているのではないか」と。 だが、横山宴之介だけは知っていたのだ。掌中の珠のように溺愛する彼女が、実は数多の「裏の顔」を持ち、たった一人で上京市全土を震撼させるほどの実力者であることを。 伝説の医師「神の手」、世界一のハッカー、そして王室すら賓客として敬う天才調香師——。その正体はすべて、彼女だったのだ。 周囲は呆れて悲鳴を上げる。「横山様、奥様への溺愛ぶりにも限度というものがありませんか!? どうして会議中まで、彼女を膝に抱いたままなのですか!」 横山宴之介は涼しい顔でこう答えた。「妻を愛し抜いてこそ、男は成功するのだよ」 やがて、愛されし彼女の「最強の正体」が次々と露見したとき、かつての嘲笑は熱狂的な崇拝へと変わっていく……!

ゴミ扱いされた私が、実は世界的権力者だなんて言えない チャプター 1 あなたのその命、結構高くついたわよ

夜の上京市、郊外。

「ドボン!」

暗闇の中、重い水音が響き、静寂を破った。

川辺で休んでいた池田新奈は、その水しぶきを全身に浴びた。

ふと、鼻をついたのは鉄錆の匂い。

彼女にとって、それは嗅ぎ慣れた匂い。

血の匂い。

(水に落ちたのは人間。しかも、傷を負ってる)

その推察を裏付けるかように、ほど近い茂みから、押し殺したようなの声が聞こえてきた。

「続けろ!」

「どんな些細な手がかりも見逃すな!」

「生かして帰すな!」

ほどなくして、複数の乱れた足音が耳に迫ってきた。

新奈は咄嗟に身を起こし、その場を離れようとしたが、何かに足首を強く掴まれた。

「助けてくれ……何でも言うことを聞く……」男の声は弱々しく、今にも消え入りそうだ。

その直後、足首を掴む力はふっと抜け落ち、男は動かなくなった。

どうやら、気を失ったらしい。

医者として、目の前の命を見捨てるわけにはいかない。

(これも何かの縁。ならば、救っておくか)

新奈はそう思案しながら、静かに手を動かした。

ウエストポーチから小瓶を取り出し、暗闇の中、指先の感触を頼りに薬を一粒、男の口へと押し込んだ。

足音がじりじりと近づき、揺れる微かな光がこちらを窺い始めた。

彼女は息を殺し、水へと身を沈めた。そして、男の体も水中に押し込み、気配を絶った。

ほどなくして数人の黒服の男たちが現れたが、川面はすでに静まり返っていた。

一行はあたりをしばらく探していたものの、手がかりを得られず、そのまま足早に立ち去った。

人影が完全に遠のいたのを確認すると、彼女は水面から姿を現し、男の身体を引きずって岸へと上げた。

夜の川の水は骨身に染みるほど冷たく、思わず小さなくしゃみが漏れた。

一息つく間もなく、彼女は素早く男の状態を確かめる。

まだ息があるのを確かめると、間髪入れずに心肺蘇生を施した。

どれほどの時間が経っただろうか。男は突然激しく咳き込み、大量の水を吐き出した。

新奈は男の鼻先に手をかざし、かすかな呼吸を感じ取ると、ようやく安堵の息を漏らした。

雲間から月が顔を出し、柔らかな光が辺りを照らし出す。

新奈の目に、男の彫りの深い顔立ちが映った。

なんて綺麗な人。

その時、横たわっていた男の身体がわずかに動いた。

男はかすかに瞼を持ち上げると、ぼやけた視界に少女の姿を捉えた。

月明かりに照らされた、少女の鎖骨。その上に浮かぶ黒い三日月のタトゥーが、鮮烈に目に焼き付いた……。

横山宴之介は視線を上へと滑らせ、少女の顔を確かめようとしたが、瞼は鉛のように重い。

意識は遠のき、再び深い闇へと沈んでいった。

彼女はその様子を見届けると、さらに一粒の薬を男の口に含ませた。

月明かりを頼りに濡れた身体を調べると、腰のあたりに傷が見つかった。

傷口は深く、今なおじわりと血を滲ませている。

だが、幸い急所は外れおり、過度な失血が意識を奪ったのだろう。

彼女は男の服を引き裂いて傷口を洗い、手早く止血の薬を塗り込んだ。

手当てを終えると、彼女は悪戯心に、男の整った顔をつまんだ。

「命拾いの薬、一気に二粒も飲ませたんだから。あなたのその命、結構高くついたわよ」

ひとまず命を救い出すと、新奈は自身の持ち物を確認し、その場を後にしようとした。

だがその時、男の言葉が脳裏をよぎり、彼女は思わず足を止めて男の全身を観察し始めた。

やがて彼女の視線は、首元で揺れる宝石のペンダントに吸い寄せられた。

全体が透き通るような赤色を帯びたそれは、月光を浴びて、息を呑むほどに妖艶な美しさを放っていた。

「求めることは特にない。でも、こういう珍しい物は好きなのよ」

そう呟くと、彼女は身を屈め、そのペンダントをさっと抜き取った。

「命を助けた代わりに、このペンダントはもらっていくわよ。これでチャラね」

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