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ブラッディ・ソムリエ

あの人の未来に、私はいない

あの人の未来に、私はいない

藤姫あやね
神崎夕凪が布川グループの跡継ぎと結婚したその日、布川家から祝福の言葉をかけに来た者は一人もいなかった。ただ一人、布川家の老婦人だけが、電話をかけてきただけだった。 「賭けをしないか?」 「もし三年経っても、君たちが相変わらず仲睦まじいのなら、布川家の人間を説得して、君を受け入れさせてみせる」 「逆に、そうでなければ――君には和馬を去ってもらう。そのときは、彼にふさわしい家柄の女性を、私が改めて選ぶわ」 神崎夕凪は顔を上げて、はっきりと頷いた。 布川和馬が命を賭してまで愛してくれた。家族との縁を断ってまで選んでくれた人を、三年すら支えきれないはずがなかった。 けれど、まさか結婚三年目にして、布川和馬が裏切った。
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清水瑠衣は、手術の麻酔が抜けていく感覚の中で、重たい瞼をなんとか持ち上げた。

視界がぼやける中、少し離れた場所に置かれたテレビでは、野生動物写真コンテストの受賞結果がちょうど流れていた。

何度も死にかけながら、それでも諦めずに追い続けてきた末の吉報――本来なら胸が弾むはずだった。

だが、その喜びは一瞬で凍りついた。

受賞作の署名に映し出されたのは、陸奥陽菜の名前だった。立川蒼空が心の底から愛し続けている、あの女の名だ。

瑠衣の胸に、信じたくないという思いだけが広がっていった。

ふと、必死に撮影を続けたこの2ヶ月の間、送っても返事が一度も来なかったメッセージや、蒼空の絶えないゴシップ記事が脳裏をよぎった。

混乱するより早く、枕元のスマホが甲高く鳴り響いた。

画面には「旦那」の文字が何度も点滅している。

高熱で倒れる直前まで何度もかけ続けたのに、繋がることはなかったあの番号だ。

瑠衣は震える指で通話ボタンを押し、かすれた声を絞り出した。

『どうして……私の作品が、陸奥陽菜の名前になっているの?』

通話口の向こうからは、主と同じく凍りつくような冷たい声が響いた。蒼空の黒い瞳には、いつだって温度というものが存在しない。

『これは、君の代わりに陽菜へ償うための判断だ』

その言葉で、瑠衣の胸に抑えきれない怒りが一気にせり上がった。『何度も説明したわよ。あの時あなたを救ったのは、私だって』

『俺は、自分の目で見たものしか信じない』

蒼空の声は穏やかなのに、底が凍りついていた。

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君を奪う計画は、3年前から始まっていた

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