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ブラッディ・ソムリエ

もう戻らない――あなたの妻には

もう戻らない――あなたの妻には

四季 香織
昼は優しく、夜は情熱的。それが、陸名悠弥の時水恋に対する評価だった。 しかし、浅井静が余命半年だと告げると、陸名悠弥は時水恋にためらいもなく離婚を切り出す。 「彼女を安心させるためだ。半年後にまた復縁すればいい」 彼は時水恋がずっとその場で待っていると信じていたが、彼女はもう目が覚めていた。 涙は枯れ果て、時水恋の心も死んだ。 こうして偽りの離婚は、本当の別れとなった。 子を堕ろし、人生を再出発させる。 時水恋は去り、二度と振り返らなかった。 だが、陸名悠弥は――狂ってしまった。 ――後に、噂が流れた。かつて傲岸不遜を極めたあの陸名家の御曹司が、血走った目でマイバッハを飛ばし、狂ったように彼女を追い続けた、と。ただ、憐れみの一瞥を乞うためだけに……。
都市 CEO裏切り離婚甘美
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「離婚しよう」

そのたった一言で、織田七海は名家から見捨てられた妻となってしまった。

三年間、西永良陽に尽くしてきた結果が、この胸を抉るような痛みだった。

今日は二人の三回目の結婚記念日だった。七海は良陽をデートに誘おうと、弾む心で彼のオフィスを訪れた。しかし、目に飛び込んできたのは、デスクの上に置かれた高価な宝石のネックレスだった。

てっきり自分への贈り物だと思ったのだが。

デスク上のネックレスに注がれる彼女の視線に気づいた良陽は、さっとその美しいケースの蓋を閉じた。

「深悠が戻ってきたんだ。これは彼女への贈り物だ」 その言葉は、余計な期待はするなという、冷たい警告のようだった。

そういうことだったのか。

七海はうつむいた。厚い黒縁メガネが、その表情に浮かんだ苦渋と寂寥感を覆い隠す。

彼が天にも昇るほど寵愛した、忘れがたい女性が帰ってきたのだ。

一方、自分はと言えば、三年経っても彼の心に入ることも、その体に触れることさえ許されなかった、ただの「置物」だ。そして今、その置物は用済みとばかりに、ゴミ箱に捨てられようとしている。

うつむいて黙り込む七海の姿に、良陽は少し苛立った。

「慰謝料は払う。だから、さっさと離婚に応じろ。いつまでも君のいるべきではない場所に居座ろうなんて思うな」 良陽の声には、警告の色が滲んでいた。

正直なところ、織田七海という女性は、容姿もスタイルも、家事の能力も申し分なかった。ただ、あまりにも地味で面白みに欠ける。

言うなれば鶏肋のようなもの。食べるほどの味はないが、捨てるには惜しい。

彼女は完璧な主婦ではあったが、彼の妻にはふさわしくなかった。

それでもなお黙り込んでいる彼女に、良陽は眉をひそめて冷たく言い放つ。「考える時間を三日やる。だが俺の忍耐にも限界がある。あまり待たせるな……」

「必要ないわ。サインする」 七海はペンを取ると、一切の躊躇なく離婚協議書にその名を記した。

二人は市役所へ向かい、ほどなくして離婚届は受理された。

離婚という文字がやけに目に刺さる。胸は痛んだが、同時に安堵も感じていた。

いつか西永良陽の心を溶かせるかもしれない――そんな淡い期待を抱きながら、結婚生活を送る必要はもうないのだ。

希望と絶望の間を繰り返し、自分を追い詰める日々は終わった。

じわじわと痛めつけられるより、一度で終わらせる方がいい。これで、すべてが終わったのだ。

その時、良陽の携帯が鳴り、七海の思索は中断された。

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