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この世界で生きる人々の安寧を脅かす者たちの襲撃。それを表した警鐘はけたたましい音を掻き鳴らし、村中に避難を伝えていく。
多くの家々は移住を想定した簡易的なテントのようなものであるため、全て置いて逃げたとしてもそれほどの痛手はなかった。そんな状況でもなるべく多くのものを持って逃げようとするのは、人の罪深い欲望からだろうか。
しかし命の危険が迫っているなか、慌てふためき逃げていく者たちとは違い、その襲撃者に対して立ち向かっていく者たちもいた。
物を言わずにただ銃を構え、襲撃者目掛け弾丸を放つ傭兵たち。しかし彼らの弾丸はその乏しい技量が故に命中するものはない。
そんな彼らの中に未だ発砲せず、狙いを定め続ける傭兵が一人。彼の名前は|有馬烏《アリマカラス》。
皆が持っているものと同じ疑似駆動銃を手に、スコープ越しに掃除屋と呼ばれる機械兵器の二輪車型を狙った弾丸は、一直線の華麗な軌道を描く。そして弾丸は掃除屋の核とも言える通信機器を確実に破壊し、掃除屋の数を一つ減らした。
他の傭兵の弾丸が一つとて命中しなかったように、この灰が舞う世界でこれほど確実な射撃を行える兵士は少ない。
カラスは二輪車型の停止を確認した後、もう一度その銃に弾丸を装填し、エアコッキングによる空気の加圧を行った。
そして別の兵士が撃ち漏らした何台かの二輪車型は彼らの間をすり抜けた後、急激な転回を行い、その車体から機関砲を露出させ、兵士たちに狙いを定める。
あと数秒もしないうちにあの機関砲からは鋭い弾丸が無数に放たれる。もちろんまともな防具をつけていない人間がその弾を食らえば、ハンバーグよろしくミンチだ。
自らが弾を外したからだというのに、その事実に気付いた傭兵たちは、その武器を投げ捨て、ここから逃げ出そうとする。
「一、二、三……。流石にこれ以上減らされたら困るか……」
今残っている兵士を数えた後、そう呟いたカラスは疑似駆動銃をその場に置き、背負っていたライフルを構えた。他の疑似駆動銃とは違い、複雑な機構を搭載したそのライフルからは先に針のついた管が伸びている。
カラスはそれを腕に突き刺すことでそのライフルを起動する。カラスの腕からは管を伝い、赤黒い血液がライフルに流れていき、その血液が機関部分に到達すると、内部がじんわりと光始める。組まれたパーツの隙間から漏れる光は鈍い色で、黄色とも赤とも言えないような色をしている。
そしてカラスが呟く。
「駆動装置起動――」『――認証、確認』
瞬間、トリガーを引かずとも銃口から真っ赤な弾丸が飛び出し、こちらへ迫り来るバイクの集団の中心へ着弾した。そこから目を覆いたくなるほどの閃光が放たれ、巨大な爆発が掃除屋たちを呑み込んでいく。
「傭兵さんや。生憎あんたらに渡せるような食料はもう残っとらんのだ。村の女子供に配る分はあれど、男どもの分はもう無くて、傭兵を雇ったものの上げられるようなものは限られておる……」
自らたちを雇った村の村長にそんなことを言われた兵士たちは口々に文句を垂れる。
「俺は食料は要らない」
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