「マジか……」
パソコンの前で俺はそうポツりと呟き、しばらく画面の前で硬直していた。
画面に表示されているのは一通のメール。
今回は"new world"クローズドアルファテストに応募していただきありがとうございます。
この度、当選いたしましたので参加する際に必要なプロダクトキーを添付いたします。期限内にご入力いただけなかった場合、無効となりますのでご注意ください。
VRMMOゲームのテスター当選のメールだ。
アルファテストという事もあり、バグもかなり多いと思われるが、公開されている動画からテクスチャの品質や操作性をはじめとするゲームの基礎的な部分で期待できそうな作品だ。
それ故にアルファテスト希望者は非常に多かったらしく、正直通るとは思っていなかったところだ。
早速キーを入力してゴーグルをつける。
ゲームを起動すると、まず現れたのはキャラクリエイトの画面だ。
様々な派閥があるが、俺は自キャラの性別は男にするタイプだ。せめてゲームの中でくらいはイケメンでいたいという悲しい理由ではあるが、ゲームが楽しければ何でもいいという考えだ。
とは言っても、デフォルトのプリセットから少しだけいじる程度のものだ。
髪を黒色にし、瞳の色を青色へと変更する。体つきは筋肉質にし、だからと言って外見は普通な程度に調整する。
基本的に俺のキャラクリはこの程度だ。
そして、キャラの名前を設定する。
「ん……?」
ゲームスタートのタイミングで何か違和感を感じたが、アルファテスト特有のバグか何かだろう。
読み込みが終わり、不意に目の前が眩しく照らされる。
目の前に広がるのは平原。まるで実写のように草1本1本が揺らめいており、実際に風を浴びているかのように思えるリアリティのあるサウンドに圧倒される。
「他のプレイヤーは……見た感じいないか」
見回してみるとすぐ近くに塀のようなものが見え、その長さから村ではないかと推測できた。
「やあやあ! 君がだね?」
「うおっ!?」
俺の目の前を高速で光の玉が横切ったかと思うと、どこからともなく活発そうな女の子の声が聞こえてきた。
「君のガイドを務めさせてもらうアテナちゃんだよ!」
「アテナって……あのギリシャ神話の?」
「そうそう! よく知ってるね!」
アテナを自称する光の玉は、まるで喜んでいるかのようにブンブンと上下に揺れている。
どうやらテンション高めの子らしく、俺が口を挟む間もなく言葉を繋げる。
「チュートリアルを説明するね! まず装備だけど最低限のものだけはもう自宅のチェストに入ってるから、まずは自宅に行こう!」
「マップの開き方とかは――」
そこまで口にして違和感に気付く。
まるで俺がこの世界で今まで生きてきたかのごとく、この辺りの地理が理解できている。あの柵の向こうには村があり、門から入って少ししたところに自宅がある。その周辺には雑貨屋や鍛冶屋もある非常に便利な立地の家だ。
さらにもう一つ違和感がある。このアテナという玉は恐らくNPCであるはずだ。
それなのに、マイク機能がデフォルトでオンになっているのはまだしも、選択肢によるものでもなく、ここまで自然に会話できているというのは革新的すぎるという事だ。
「ポーチの中にマップが入っているだろうから、それを見れば大丈夫だよ――おーい?」
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