/0/19031/coverorgin.jpg?v=d4739ef41abb58baa114c66a1e004b54&imageMogr2/format/webp)
ふわりと、甘い香りがする。
軽く波打つ長い黒髪は、さらりと揺れる度に天使の輪を輝かせ、肌は透き通るほどに白い。
猫のような大きな黒い目は、角度によって藍色に輝き、まるで硝子玉で作った玩具の宝石のようだ。
「わたし、恋がしたいのです」
まるで鈴が鳴るような軽やかさで、彼女はそう言った。
絶世の美少女――彼女のことを、僕は幼い頃から知っていた。喋ったことも、遊んだこともあるし、なんなら彼女のちょっとした秘密だって知っている。いわば、幼馴染みという存在だ。
だからこそ、彼女がそんなことを言い出したとき、僕は正直、嫌な予感しかしなかった。
「ねぇ、ミナミ」
甘ったれた声で、彼女が僕の名前を呼ぶ。それを聞いた僕の中で、警報音が鳴り響く。
例えば、僕が大事にとっておいた好物の唐揚げの、それも最後の一個を、気軽にねだってきたときのような。大寒波が押し寄せてきた寒い冬、なけなしの防寒具であった手袋とマフラーを意味もなく奪っていったときのような。
/0/18681/coverorgin.jpg?v=79191f7acaa6b41645a981803e2d63dd&imageMogr2/format/webp)
/0/1054/coverorgin.jpg?v=1b574072f6ce8739baa00207b0a59400&imageMogr2/format/webp)
/0/2677/coverorgin.jpg?v=1d4281b6e98deed164f4316ce785ca5d&imageMogr2/format/webp)
/0/19258/coverorgin.jpg?v=2aed58f8205b885ccfec59058da9a867&imageMogr2/format/webp)