
7年間, 私は婚約者の清彦に尽くし, 彼の命を救うために骨髄まで提供した.
しかし彼は, 私の最高傑作であるウェディングケーキのレシピを盗み, 親友の栞代に渡していた.
私を騙して入院させ, 事故に遭った私を置き去りにして, 彼は栞代の元へ駆けつけた.
私の愛も, 才能も, 命さえも, 彼の成功のための道具に過ぎなかったのだ.
絶望の淵にいた私のもとに, 彼の最大のライバルである小田切真也から, 突然の婚約の申し出が届く.
第1章
芦田結菜 POV:
私は病室の白い壁をぼんやりと見ていた. 数日前, 清彦に「少し疲れているようだ. 検査入院した方が安心だ」と言われ, 半ば強引に入院させられたのだ. 彼の提案なら間違いない, と信じていた. だが, その信頼は, 病室のドア越しに聞こえてきた声によって, 粉々に砕け散った.
「清彦, 一体どういうつもりなの? 」姉の裕子の声が響いた. 怒りに震えているようだった.
清彦の声は, いつもの落ち着きを装っていた. 「裕子姉さん, 何のことで? 」彼の声は, 私の心を安堵させるはずだったが, 今はただ, 薄気味悪く聞こえた.
「とぼけないで! 結菜のレシピのことよ! 」裕子は息を荒げた.
私の心臓が冷たい氷の塊になった. レシピ? 私のウェディングケーキのレシピのことだろうか. なぜ裕子姉さんがそれを?
「あのウェディングケーキのレシピ, 栞代に渡したそうじゃない. 結菜から聞いてないわよ! 」裕子の声が続いた.
清彦は沈黙した. その沈黙が, 私にとって何よりも雄弁な答えだった. 胃のあたりが締め付けられるような痛みを感じた.
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