/0/25240/coverorgin.jpg?v=994d970460e18a47efc8c4b91bde8847&imageMogr2/format/webp)
「急げ!血液センターに連絡して、RHマイナスAB型の赤血球製剤を、確保できるだけ回してもらえ!」
手術室のドアがバンッと開き、医師が慌てた様子で飛び出してきた。「患者が大量出血している!今すぐ輸血が必要だ!」
その声に、廊下にいた看護師たちが一斉に駆けだした。
「先生!」
小林凛花は、絶えず血が流れ続ける足を引きずり、激痛をこらえながら医師に駆け寄った。「娘は……うちの娘は、どうなんです!?」
「奥さん、お子さんは出血がひどく、いつ命を落としてもおかしくない状態です……」
医師は凛花の骨が見えるほど深い傷に目を落とした。「あなたの傷もすぐに処置をしないと……ご主人は?」
何度もかけ続けたせいで熱を持つスマホを握りしめ、凛花は絶望を滲ませた。「……連絡が、つきません」
1時間前、娘の藤原莉乃を幼稚園に迎えに行った帰り、凛花は交通事故に遭った。
運転手は即死、後部座席にいた彼女と莉乃も共に重傷を負った。
こんな一刻を争う状況で、夫の藤原雄大とはどうしても連絡が取れなかった。
「あまり思いつめないでください」
彼女の様子を見かねた医師が、声を落として慰めた。「確かにお子さんは珍しい血液型ですが、数日前に市の血液センターへRHマイナスAB型の赤血球製剤がまとまって入ったばかりです。輸血用の在庫は確保できます」
「それに、すでに白川市でトップクラスの専門医たちにも招集をかけています」
「お子さんの輸血が間に合い、先生方が到着すれば……きっと助かります」
凛花は、ようやく安堵のため息をついた。
興奮して医師の手を握る。「ありがとうございます!娘を助けていただけたら、お礼はいくらでも……!夫は、藤原グループの者なんです……」
「大変です!」
先ほどの看護師が血相を変えて戻ってきた。「血液センターからです!市内ですぐ供給できるRHマイナスAB型の赤血球製剤は、藤原グループの系列病院へ回されたそうです!」
「なんでも、社長秘書が貧血で少しめまいがするから、輸血が必要だとか……」
凛花の頭の中で、何かが弾け飛んだ。
事故から今まで、雄大に30回以上電話をかけている。
電話に出る時間はないのに、貧血でふらつく秘書のためなら、娘の命綱となる赤血球製剤まで根こそぎ押さえる時間はあるというのか!
「その藤原社長と連絡を取ってくれ!こっちは命がかかってるんだ!」
「連絡はしましたが……藤原社長は、秘書の命も命だと……」
「構わん、連絡を続けろ!」
医師は悪態をつくと、続けた。「専門医の先生方は?あとどれくらいで着く?」
「その先生方も、藤原社長の指示で足止めされ、秘書の診察に向かわされたと……」
凛花は目の前が真っ暗になるのを感じた。
壁に背を預け、崩れ落ちそうな体を必死で支える。震える手で、雄大の秘書である杉本彩花の番号を探し出し、電話をかけた。
電話の向こうから、杉本彩花の甘ったるい声が聞こえる。「奥様、どうかなさいました?」
電話の向こうからは、はっきりと雄大の声も聞こえてきた――
/0/20684/coverorgin.jpg?v=f97f5e68f064581242865c32f401631d&imageMogr2/format/webp)
/0/23274/coverorgin.jpg?v=30f0dfd987c7ef9817307046093ce4d8&imageMogr2/format/webp)
/0/26157/coverorgin.jpg?v=23719a77e7ae716824051a8255220c86&imageMogr2/format/webp)
/0/21588/coverorgin.jpg?v=631f44eddbc190293871859425770019&imageMogr2/format/webp)
/0/21417/coverorgin.jpg?v=20260106193842&imageMogr2/format/webp)
/0/24543/coverorgin.jpg?v=4dec5e12f56b68e97d9c1a1985384592&imageMogr2/format/webp)
/0/24872/coverorgin.jpg?v=2ea4519d2cf6e23b75eb3cee6f4d5264&imageMogr2/format/webp)
/0/20259/coverorgin.jpg?v=9fdca3313e58fb1b5b38ee8c90b5f012&imageMogr2/format/webp)
/0/21297/coverorgin.jpg?v=a732d88083e0d499ea244746616a7035&imageMogr2/format/webp)
/0/20074/coverorgin.jpg?v=84cb10aa678a44dc196adf5286381105&imageMogr2/format/webp)
/0/26116/coverorgin.jpg?v=f60a24f1973877d32a45ce863e630d62&imageMogr2/format/webp)
/0/19109/coverorgin.jpg?v=1e357871d906b1b58ba395c04aca7fe6&imageMogr2/format/webp)
/0/24129/coverorgin.jpg?v=ab8caf27a291553ec81cffc61211be05&imageMogr2/format/webp)
/0/21593/coverorgin.jpg?v=4c4f2f967bee31a68b0a633fc57ddaea&imageMogr2/format/webp)
/0/20329/coverorgin.jpg?v=8da0e6e7892597f47f30d702bb6ee5ff&imageMogr2/format/webp)
/0/21590/coverorgin.jpg?v=971546b42347298cd8f38fd3e00b7b9a&imageMogr2/format/webp)
/0/20336/coverorgin.jpg?v=c372c22008a52e1d212d29a9870bf7f4&imageMogr2/format/webp)