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家族で共有しているiPadに表示された、いかがわしいLINEメッセージ。それが、私の完璧な人生に最初の亀裂を入れた。
最初は、高校生の息子がトラブルに巻き込まれたのだと思った。でも、匿名掲示板のユーザーたちが、身の毛もよだつような真実を指摘した。メッセージは息子宛てじゃない。結婚して20年になる夫、彰人(あきと)宛てだったのだと。
裏切りは、二人の会話を盗み聞きしたことで、共謀へと変わった。息子が「イケてる」と褒めていた学校のスクールカウンセラーと、夫が不倫していることを笑い合っていたのだ。
「だってさ、母さんって…マジで退屈じゃん」と息子は言った。「もう別れて、あの人と一緒になればいいのに」
息子はただ知っていただけじゃない。私の代わりになる女を応援していたのだ。私の完璧な家族は嘘だった。そして私は、その笑い者だった。
その時、掲示板で弁護士を名乗る人物から届いたメッセージが、焼け野原になった私の心に火を灯した。「証拠を集めろ。そして、奴の世界を灰になるまで燃やし尽くせ」
私は震えることのない指で、返信を打ち込んだ。
「方法を教えて」
第1章
藤崎(ふじさき) 亜希子(あきこ) POV:
私の完璧な、世田谷の穏やかな日常が、緻密に構築された嘘だったと気づく最初のきっかけは、口紅の跡でも、知らない香水の匂いでもなかった。家族で共有しているiPadに、無邪気に光る一件のLINEメッセージだった。
夕食の後片付けを終えたばかりで、まだレモンの洗剤の匂いがツンと鼻をつく。有名な建築家である夫の彰人は、大阪へ出張中。高校二年生の息子、蓮(れん)は、二階の自室で大学受験の勉強をしているはずだった。家は静まり返り、食洗機の低い唸りだけが響いていた。
朝のジョギングのために天気予報をチェックしようと、キッチンカウンターに置いてあったiPadを手に取った。しかし、画面にはすでに通知バナーが表示されていた。そのメッセージのプレビューを見た瞬間、肺の中の空気が氷に変わった。
知らない番号からだった。「昨日の夜はヤバかったね。あのホテルの部屋のこと、ずっと考えちゃう。次はあなたの番だよ…近いうちにね」。その後に続くのは、ウインクする顔、水しぶき、そしてナスの絵文字。
心臓が肋骨に激しく打ち付けられる。まるで檻に閉じ込められた鳥のように、狂ったように暴れていた。
最初に浮かんだのは、母親としての本能。蓮のことだった。私の可愛い、時に不機嫌になるけれど、根はいい子。あの子が…誰かと?それも年上の?その考えは、頭から冷たいヘドロをぶちまけられたような衝撃だった。ホテルの部屋という言葉が、あまりに大人びていて、あまりに汚らわしい。
私はカウンターのスツールに崩れ落ちた。急に足の力が抜けてしまった。蓮はいい子だ。でも、16歳だ。16歳の男の子は、ホルモンに突き動かされて馬鹿な間違いを犯す。頭の中では、息子がバイトしている書店にいる、捕食者のような年上の女の姿が駆け巡っていた。
誰かに相談したかった。でも、友人には話せない。恥ずかしすぎて、とてもじゃないが無理だ。まるで自分の失敗をさらけ出すようなものだったから。だから私は、21世紀の絶望した人間が誰でもするように、匿名掲示板に助けを求めた。
時々、思春期の子供との接し方についてアドバイスを求めて覗いていた、非公開の育児掲示板を見つけた。使い捨てのアカウントで、震える指で状況を打ち明けた。詳細はぼかした。
「共有のタブレットで、いかがわしいメッセージを見つけました。高校生の息子(16歳)が、年上の誰かと不適切な関係にあるようです。メッセージには『ホテルの部屋』という言葉がありました。どう対処すればいいのかわからず、怖くてたまりません。何かアドバイスをいただけないでしょうか?」
すぐに返信がつき始めた。ほとんどが同情的なものだった。息子を問い詰めずに話を聞き出す方法など、育児掲示板らしい、ありきたりなアドバイスばかり。
その中で、一つのコメントが私の胃の腑に石のように沈んだ。
User4815162342:「待って。それ、本当に息子さんだと確信してる?」
私は画面を瞬きした。どういう意味?もちろん、息子に決まっている。他に誰がいるというの?
私はカッとなって、反論を打ち込んだ。「はい。他に誰がいるんですか?」
SuburbanGothMomと名乗る別のユーザーが割って入った。「もう一度メッセージをよく読んでみて。言葉遣いを。『次はあなたの番だよ』って。これ、10代の言葉遣いに聞こえる?それとも、もっと主導権を握ることに慣れた大人の言い方に聞こえない?」
部屋が急に冷え込んだ気がした。私は自分の投稿までスクロールして戻り、打ち込んだ言葉を読み返した。「次はあなたの番だよ…」
Redditor_JaneDoe:「それに、ホテルの部屋。ほとんどのホテルはチェックインにクレジットカードと20歳以上の身分証明書が必要よ。書店のバイト代で、16歳の子が情事のためにホテルの部屋なんて取れるかしら?」
息が詰まった。無理だ。絶対に無理。蓮のデビットカードは、私が設定した一日五千円の上限がある。彼はいつもそのことで文句を言っていた。映画館でジュースを買うのさえ、いちいちお説教されるのに、ホテルの部屋なんて夢のまた夢だ。
私の心は否定の霧に包まれていた。馬鹿げている。インターネット上の見ず知らずの他人が、勝手な妄想を膨らませているだけだ。
しかし、疑いの種は蒔かれてしまった。それは小さく、毒のある種だったが、すでに芽吹き始めていた。コメントは次々と寄せられ、冷たく厳しい論理の滝が、私が丹念に築き上げてきた現実を少しずつ削り取っていく。
「主さん、家に他に男性はいないの?」
その質問が、画面上で非難がましく、卑猥にぶら下がっていた。私の指はキーボードの上を彷徨った。
彰人。
私の、彰人。毎朝ベッドにコーヒーを持ってきてくれる人。雑誌で理想の夫、理想の父親として称賛され、息子のサッカーの試合にも時間を割く、先見の明のある建築家。私が20年間愛してきた人。
その考えはあまりに馬鹿げていて、思わず笑いそうになった。乾いた、空虚な笑いが。
しかし、掲示板のスレッドは、もはや私のものではなくなっていた。コメント主たちは探偵のように、私が存在すら知らなかったパズルのピースを組み立てていた。
そして、私の足元から床が抜け落ちるような、決定的なコメントが投稿された。
LegalEagle88:「主さん、ナスの絵文字はどう?あれはただの暗示じゃない。特定の…男性向けの精力増強剤、特にあの青い小さな錠剤と一緒に使われることが多いんだ。16歳の少年には全く必要ない。でも、40代の男が若い相手についていこうと必死になっているなら…」
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