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青紫色の火の光が照らすその部屋で少年と青年が対峙している。
そんな今まさに戦いが始まろうとしているその部屋は少年にとっては異端であった。
冷たい黒のタイルが床に敷き詰められたその部屋全体には、巨大な魔法陣が張り巡らされ、その魔法陣の中心には闇を凝縮したような紫色に近い宝玉がはまっている。
天窓から差し込む光は無く、外の空は紫、真紅、橙色……そんな色をごっちゃ混ぜにしたような気味の悪い色で、黒髪の少年が生まれ育った世界の青い澄み切った空とはあまりにもかけ離れていたからである。
少年は声を絞るように、数段床から高く作られた多彩な彫刻が施された玉座の前に立っている紫と濃い赤が混ざったような色の髪の青年に言った。
「魔王ルシファー! お前さえ……お前さえ倒せば、元の世界に帰れるんだ!」
「……和解は無理か。やはり奴が言った通りの結果(うんめい)になったか。我としては……宇美矢 晴兎(うみや はると)、貴様とは友好関係をも築ける方針へと説得したかったがしょうがない」
青年ーー魔王ルシファーは言葉を並べるが無駄だと悟り、かつてあったかもしれない友情を諦めた。
ーーやがて表情は決意の籠った表情へと変わった。
「ーー貴様を殺す」
その瞬間、魔王ルシファーが強力な殺気と威圧を少年ーー宇美矢晴兎へと向けた。
「ーーッ!」
宇美矢 晴兎(彼)はそれだけで一瞬怯んだが、自身が所持する唯一の武器である鉄で作られた安物の剣を両手で構えて魔王ルシファーに思いっきり斬りかかった。
「…………」
魔王ルシファーは何かの想いを断ち切るように抵抗も一切せずにその攻撃を受けた。
しかし魔王ルシファーにとっては貧弱な一撃であり、かつてあったかもしれない友情を結んだその者との一撃とはあまりにもーーそれは貧弱で魔王ルシファーの僅かな想いを断ち切るには十分だった。
魔王ルシファーは邪魔な鉄の剣をどかして宇美矢晴兎の腹部を全力で殴った。
それを反応出来ずに受けた宇美矢晴兎は手から剣を落として数メートル後ろへ吹き飛びんだ。
「ーーがぁっ!?」
今の一撃で腹部や口からは血が出ている。
今、彼は声も出せない程の激痛を感じていることだろう。
「さらばだ、宇美矢晴兎」
魔王ルシファーは宇美矢晴兎に近づいて至近距離で魔法を放とうとしたーーその時だった。
「ーー何!?」
宇美矢晴兎の周囲を囲む様に
『殺意』
『絶望』
『憎悪』
『憤怒』
その四つの文字が禍々しい形で無数の数程浮かび上がる。
魔王ルシファーはどの状況にも無い得体の知れない状況を前に、咄嗟に宇美矢晴兎から距離を取った。
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