十年愛して、ようやく君の心に触れた
激しく憤慨し、感情的になっ
落ちた瞬間、川上彩乃の胸
、彩乃は思わずドアノブを掴んだ。もう我慢できなかった。
美は震える詩織を引き寄
そんなつもりじゃなかったの。ただ、怒りが抑えられ
垂れ、声もなく
てだった。幼い日から、彼女はこの子を掌中の珠のように慈
室に入るのをやめた。そして一人きりで、寂
乃は荷物をまとめ、再び藤
に煌々と灯る邸宅をじっと見つめた。胸中には、
たが、やがてシートベル
従者二人を連れ、
ございます。お話が
の裏手にある小さな庭園へと向かった。そ
いた。花を育てるのが好きで、盛雄が裏庭に一角を整備し、温室の庭を作っ
いた。彩乃が田中執事と共に庭に入ってくるのを見ると、ふわりと
駆け寄り、「おばあ
り、傍らの椅子を指し
の甲を撫でてくれるのに身を委ねる。お婆様は、目尻に
。もうとっくに帰ってると思ってたのに、
家を出たことをご存知ないようだ。彩乃は平然と微笑み、「急な
きた。「彩乃、あなたと盛雄が結婚してもう二年になるけれ
れは
大切よ。でもね、私はもう年だから……ひ孫をこの手
ながら、うなずいてそ
いながら、盛雄は彩乃に一
で過ごした。お婆様が部屋へと引き上げ
てくれており、寝間着や入浴の支度まで整っていた。
を張ったばかりのバス
みに合わせて、ラベンダーのバスソルトを入れてくれていた。香りがやや強くて
とうとと意識を手放し、そ
も、どうにもならず、水の中でもうすぐ命を落とす――
荒く息をつく彩乃のうなじには、まだ温もりを残した手が触れていた。そし
スタブの中で滑って意識を失いかけ、本当に溺れそう
くれ。」男は低く言い放つと、手を引いて冷たく
た彩乃は、目の前に
雄――彼が彼女の部屋に入ってくること自体が稀で、まして
してこ
放つと、使い終えたタオルを無造作に放り、次いで新しいバス
のか、彩乃には見当もつかなかったが、とにかく彼が浴室を
を吐いていた。バスローブをまとった彩乃がベッドの傍らで濡れた髪
きちんと引き締まり、肌は白くなめらかで、冷たい印象さえ与える透き通るような白肌だった。 このとき、彩乃はちょうど風呂上がりで、化粧もして
見つめるのは久しぶりだった
さを感じて、慌てて火を消した。彼はそのまま部
彩乃の動きが
タンを外すと、上着を脱ぎ捨て、そ
てきて、その体から微かに
何のつ
ど、これまで一度もなかった。い
、まさか……
盛雄はネクタイを引き抜きながら、
し緊張したように答えた
の望んでいること
…