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桐生蒼真は初恋の女とヨリを戻し、二人でホテルへ入っていった。
星野凛音はこの目でしっかりと見た。
その初恋の相手は、凛音と顔がそっくりだった。
10メートルほど離れた場所から、凛音は電話をかけた。『おばあ様が妊活の検査に行けって言ってたでしょ?今から時間ある?』
『今は接待中だ。時間がないからまた今度にしろ』
凛音はすぐに電話を切った。 『わかったわ』
ーー他の女とホテルで接待しておいて、次があると思ってるの?
凛音は二人の後をつけて部屋の前まで行き、中から聞こえる楽しげな笑い声を聞いて、マジで踏み込んで修羅場にしてやろうかと思った。
だが結局、彼女はその場を立ち去った。
最初の怒りよりも呆れと冷めが勝り、凛音は彼を手放すことに決めた。
彼女はすぐに弁護士に連絡して離婚協議書を作成し、自分のサインを書き終えた直後、蒼真の母親である桐生紗枝が訪ねてきた。
二人はカフェで会うことにした。
「凛音、まだ知らないでしょうけど、麻衣が戻ってきたのよ」
麻衣とは蒼真の初恋の相手であり、紗枝は彼女のことをとても気に入っていた。
「条件を言いなさい。どうすればうちの蒼真と別れてくれるの?」
紗枝の語尾は弾んでおり、心から喜んでいるのが伝わってきた。
彼女はずっと凛音が嫁であることを不満に思っていた。凛音の実家は平凡で、息子には桐生グループをさらに発展させられるような、家柄の釣り合う嫁を見つけなければならないと考えていたのだ。
「いいですよ。あなたの名義になっている不動産をすべて私に譲ってくれるなら、大事な息子さんと離婚してあげます」
凛音の声に感情の起伏はなかった。
紗枝は不動産投資が好きで、名義には複数の物件があり、その市場価値は数十億円にも達していた。
「本気なの?」
紗枝は凛音がここまであっさり応じるとは思っていなかった。
彼女と蒼真は5年間極秘結婚をしており、彼女は仕事を辞め、進んで専業主婦となって蒼真の世話をしてきたのだ。
誰もが、凛音は蒼真にゾッコンなのだと思っていた。
「ああ、もう嫌になったし、うんざりしてきた。離婚したいわ」
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