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「——安達くん、ちょっと車に戻って、赤い工具箱取って来てくれるか?」
作業中、田中さんはそう声を掛けて来た。
先月、得意先の工場に納入した工作機の調子が悪く、診断と修理を兼ねて、おれと田中さんは朝から出張って来ていた。
おれは「はいよー、他の工具はまだいいっすか?」と返答した。
田中さんは俺の師匠とも呼べる大先輩で、現代の匠的なお方だ。
年齢は二回りくらい上だと思う。
まだ現場に到着して間もなくだが、工作機を少し診断しただけで何処を調整するべきか、ある程度の当たりを付けたのだろう。
「ああ、まだいらねえなあ。とりあえず、赤い工具箱があれば何とかなると思うから。ダメなら、またその時考えようや。今日は仕事詰まってねえからよ」
師匠の言葉を受け、俺は足早に車へと向かった。
田中さんは基本的に温厚で優しい人だが、同じ間違いや失敗を繰り返したり、単純作業をだらだらとしたり、歩くのと食事が遅い男を毛嫌いする傾向があった。
同じ職場内でも田中さんからNGを出されてる若者は結構いる。
おれはこうして田中さんから指名を受けて仕事に来てるくらいだから、そこそこ好かれてる方なのだろう。
現場から建物の外へと出て、小走りで駐車場へと向かった。
朝、通勤時は空に薄雲が広がっていたが、今は快晴の兆しがあった。
桜が散り、大型連休に入る前の週。気候は穏やかで、頬を撫でる風が心地よい。
仕事が早く終わったら、田中さんを酒に誘おうかな、と思えるくらい素晴らしい陽気だった。
車へと戻り、バックドアを開け赤い工具箱へと手を伸ばす。